ゆっくりと
「メグミ・・・私・・・あなたを尊敬するわ・・・。」
俺の目の前にお馬鹿三人娘が立っている。
「・・・」
今、俺は頭を抱えて3人の前でベッドの上に座っている。
「アレだけイヤイヤ言っておきながらアレだけの行為を行うんだから・・・さすがとしか言いようがないわ。」
やっちゃんがものすごい呆れた顔をして俺を見下ろしている。
「恵様・・・熱意を感じました。素晴らしいと思います。」
ハウンが・・・。
顔を見る気にもなれない・・・。どう聞いてもこの3人は俺を馬鹿にしている。
「聞きたいんだけど・・・なんで君たちがこの部屋に?ずっと見てたってこと??」
3人が顔を見合って真っ赤な顔をしている。
「はぁ。」
ため息しか出ない。
「そんなに落ち込まなくても・・・。あんな美女と結ばれるなんてなかなかないんだよ!!ここはむしろ喜ぶべきよ!!さぁ!バンザイしてみて。」
レイがニヤニヤしながら俺の両手を引っ張り上げる。
「じゃぁ君たちは俺の影武者とやっておけばいい。」
俺はゆっくりベッドから立ち上がり3人を横目で見る。
「ちょっと!!そんなの嫌に決まってるじゃない!!なんでそんなこと言うの?」
やっちゃんが噛み付いてくる。
「見た目よければいいんでしょ?影武者は見た目俺だよ。ならそれでいいんでしょ?それじゃ・・・」
俺は手を振って部屋を出る。
扉の向こうから喧嘩する声が少し聞こえる。いつもそうだよね・・・レイがアホなこと言って3人で喧嘩する・・・。そのお約束のパターン何とかしたほうがいいよ。
「恵。おつかれ。ごめんな、無茶言って。それとありがとう。ケイが喜んでいたぞ。これで私は正真正銘の女だって!!」
「マッキーの頼みだからね・・・。それに俺の拒否権なかったでしょ?」
「・・・ごめん」
ものすごい反省した顔を見せるマッキー。
「じゃぁ・・・お口直しに私でも抱くか??」
「・・・うん」
俺の返事に飛び上がって喜ぶマッキー。
俺はマッキーとの時間を終えて一人皇帝の間の俺の椅子の上に座っている。
誰も居ないだだっ広い部屋。
多分、旅人であるレイややっちゃん、ハウン、マッキーは今頃向こうに行っているだろう。
俺はボ〜〜っと天井を見ている。
「あ・・・あの・・・」
俺の前にいつの間にかクロエが居る。
「ん?クロエ?どうしたの??俺、呼んだっけ??」
俺は無意識で呼んだのか??
そう思っていると
「いえ、呼ばれていません。ただ、なんかずっと天井を見ていたので。」
暗くてよくわからないがクロエはじっと俺を見ているように感じる。
「俺だけ座って話をするのも何だから、食堂にでも行こうか?あそこならお互い座ってお話出来そうだし。」
俺が椅子から立ち上がると
「あの・・・恵様・・・。」
「ん?なに??」
二人しかいないこの部屋はものすごい静かだ。
俺もクロエも声を出さないでいると静寂だけがここにある。
「あの・・・以前恵様は私にお相手ができたら教えてくれと言っていましたよね?」
「ああ!!うん、言ったよ!できたんだね?」
「あ・・・はい・・・。あの・・・えっと・・・お相手なんですけど・・・」
クロエが名前を出すのに躊躇している。きっと俺の知っている人なんだろう。
「言いにくいの?」
「えっと・・・そんなことはありません。ただ・・・その人の身分的なこともありまして・・・。」
「高貴な人なの??」
「いえ、そんな貴族とかそういう身分ではありません。ただ・・・えっと・・・」
下を向くクロエ。なにかものすごく困っているようだ。
「その・・・彼はある会の主要メンバーでして・・・私とお付き合いしているのがバレるとその会を退会させられるかもしれないんです。彼は・・・その会のためにものすごく頑張っている人なんです。あちこち飛び回って支部を作って盛り上げているんです。それなのに・・・私と結婚したいって言ってくれて・・・。」
クロエが泣きそうになっているのが伝わってくる。
「その会って、そんなに大きいの??」
「はい・・・会員数は半端なく多く、その幹部にはそれなりの名誉もあります。それを失ってもいいから私と一緒になりたいって・・・。あの・・・どうしたらいいですか??」
「クロエはその人のことが大事なの??」
「ハイ・・・。大事ですし、彼も私を大事に思ってくれています。でも、結婚したら彼は自分の今まで頑張ってきたことを失ってしまうんです。」
「そんなに大事なら一緒になったほうがいいよ。それで彼がその立場を失ったとしても彼は後悔しないんだろう?」
俺がクロエに近づくと
「彼はそう言っていますが、彼の最近の仕事はそればかりだったので・・・。それを失ってしまって後悔しないわけがないと思うんです。」
俺はクロエの前に座って話す。
「俺も、自分の大事な人を幸せにできるならそれ以外のことはどうでもいいと思うけどね。彼にとってクロエが大事だと言ってくれているならそれを信じて一緒になるべきだよ。」
涙を拭いながら頷くクロエ。
「相手は誰なの??クロエを大事に思ってくれている人の名前を聞かせてほしい。」
「はい・・・私のお相手は・・・ジルさんです。」
クロエが少し笑って俺に教えてくれる。
「ジル??あの?え??お付き合いしてたの??」
ジルとはレイファンクラブのメンバーでNo.1の称号を持つ大男。
レイの父親の下で精力的にファンクラブを拡大している。
初対面の時に俺を足蹴にしてレイに痛めつけられたこともあるが今では気のいいおっさんとかしている。
俺とは無茶苦茶な修行をさせられた仲で、レイが接しても嫌がる素振りを見せない数少ない男だ。
今は・・・そういやマッキーが探してたけど、結末聞いてなかったな・・・。
「恵様のお知り合いというのは知っています。仲がいいともマッキー様から聞いています。それで、するのであれば結婚の許可をいただけないかと・・・。」
ん?マッキーから聞いている??なんでそこでマッキー伝手なんだ?まぁその辺りは後で聞こう。
「許すも何も!!そんなの許可いらないよ!!そうだ!!結婚するならここで盛大にやろうよ!!皆も絶対喜ぶからさ!!」
俺が嬉しそうに笑ってクロエに提案すると
「ええええ・・・そんな・・・そんなことまでしていただけるんですか??」
「何言ってんだよ!!クロエはこの屋敷の召使長なんだよ!!お祝いしないなんてありえないって!!」
「ええ・・・え??」
「明日ジルも連れてきてよ!!皆に伝えようよ!!こんないいニュースがあれば皆うれしいって!!」
「あ・・・ハイ・・・えっと・・・ありがとうございます。・・・てっきり反対されるかと・・・。」
「なんで?俺めちゃくちゃ嬉しいんだけど!!」
俺が喜ぶ姿を見てクロエがその場に座り込む。
「・・・よかった・・・」
俺はクロエにジルをこの館に連れてくるように行って自室に帰る。
「クロエとジルがか・・・びっくりしたな・・・。みんなどんな顔をするんだろうか・・・ふふふふ」
俺はあまりの嬉しさになかなか寝付けないでいる。
向こうで口を滑らさないように気をつけねば・・・。