俺のスゴロク、変な方向へ進む
「ここじゃ何だし・・・、街にでも行って話するかな??」
俺が放った一言に
「街はダメだぞ。あんなところに行けば俺は捕まって性的な奴隷にされてしまう。だから却下。ここでいいだろう??話しくらいさ!!」
顔を引き攣らせてハハハ・・・と笑いながらケイが反論する。
確かにこいつの強さだと捕まってしまうか殺されるか、最悪ずっと飼われることになるだろう。
「俺がいるから大丈夫だろ?何なら街を整地してから話をするか??」
「待て待て!!街を整地してしまうくらいならここを整地すればいいだろう??それから話をすればいい。」
なんせこいつは何があっても街には行きたくないということだな?
なにか怖い思いでもしたんだろう。仕方ない
俺は椅子とテーブル、そして、マッキーから預かっていた手作りの料理をケイの目の前に出す。
「うわ・・・久しぶるに見る・・・食事だ・・・。ここでは死なないから食事すら必要ないからな・・・。」
目が輝きまくっている。
「これはマッキーがあんたにと言って作った料理だ。見つけたら食わせてやってくれって。それと、反省していなくても食わせてやってくれって。そしてそれから置き去りにしてくれって言ってたぞ。泣きながら。」
その話を聞いてものすごい顔色を暗くするケイ。
箸で料理を食べながら涙を流している。
「俺・・・傲慢だったんだな。マッキーと触れ合って思ったんだ。温かいなって・・・。俺もあんな優しい人になれるのかな??」
涙をボロボロと膝の上に落としながら食事を続けるケイ。
「まぁそうだね。自分がやられて嫌なことを人にはやらないということから初めてみれば?あんたは今までいろんな世界を放棄してきたわけだろ?滅ぼすように持っていったわけだろ?それを自分がやられたら嫌じゃない??」
「・・・嫌だな。」
「だから自分がやられて嫌なことは悪、自分がされて嬉しかったことは善でいいんじゃない??そのへんも人それぞれかも知れないけど、理不尽なことをされるのは誰だって嫌だろう??」
「・・・うん」
「考え改めれそうか?」
「頑張る。」
「そうだな。マッキーのためにも頑張ってくれ。俺はあの子が泣いている姿をあまり見たくないんだよ。」
「おまえ・・・優しいんだな。」
「俺は仲間が大事なんだよ。それに一時はあんたも含まれていたんだぞ?聞かなくちゃわからないこともあるけど、アレだけのことを誇らしげに話されてもね・・・。」
「・・・」
食べる手を止めて何も言わなくなるケイ。
「ごめん・・・」
「その言葉をみんなに聞かせてあげてほしい。」
「ミシュラたちにか?」
「最古の神々たちにだ。」
「わかった。謝る・・・。」
ケイが涙をふいて俺をまっすぐ見る。きっとこの目は信じていい目だ。
「じゃぁ帰ろうか?」
「うん。ありがとう。」
俺を見る顔が少しおかしい・・・。なぜお前が顔を赤らめる??
俺はものすごい悪寒に襲われる。なぜかはわからない。だがものすごい鳥肌とともに背筋に冷たいものが走った。
俺達は俺の屋敷の皇帝の間の真ん中に姿を表す。
「お帰り。向こうでの生活はどうだった??ケイ・・・」
マッキーがケイの帰りを待って、一人ぽつんとその場にいる。他のものは誰ひとり居ない。
「恵・・・皆には無理言ってこの場から離れてもらっている。勝手なことをしてゴメンな。」
俺に謝るマッキー。
「俺は自分の部屋に居るよ。マッキーはケイとお話があるんでしょ?」
頷くマッキー。そしてケイに抱きつく。
「お帰り・・・ケイ・・・」
抱きついたまま話をし始めるマッキー。俺はゆっくりその場を離れる。
数日後。
マッキーと和解したケイはみんなを前にして謝ることから始める。
最古の神々たちも渋々ではあるがその謝罪を受けて和解へ進む。
マッキーケイと一緒にみんなに頭を下げて回っていた。
「恵・・・実は・・・ものすごいお前に言いにくいことがあるんだけど・・・。」
マッキーの顔色が悪い。なんで?
「俺に??言い難い??なに??」
俺にはこれからどんな話が始まるか全く想像もつかない。
ふと遠くに居るミシュラに目をやると何故か顔を背けて口を押さえる。
これは・・・俺に何か起こるんだな・・・。俺が困ることが・・・。それを未来予知で見ているミシュラが笑いを堪えている訳だな・・・。
『落ち着け・・・俺・・・。きっとこれからトンデモナイことを言われる。覚悟しろ!!俺!!』
俺は今ものすごい気合を入れてマッキーの爆弾発言を受け止める準備をしている。
さぁこい!!どんなことでも華麗にかっこ良く、受け止めてみせる!そして切り返してみせる!!
「あのさ・・・ケイの頼みなんだけど・・・。」
「ケイの頼み??マッキーじゃなくて??」
「おう・・・昨日、そのことでずっと相談を受けていてな・・・。私はいいんだけど・・・多分・・・恵は許さないと思うんだな・・・。でもそれでもどうか聞いて欲しいんだな。」
マッキーが頭をポリポリ掻きながら俺に頼み事をしようとしている。
厳密にはマッキーの頼み事ではなく、ケイの頼み事だけど。
『はは〜〜ん、読めたぞ・・・。これは俺の勝ちだな・・・。男に戻してマッキーと結婚させろとか言うやつだな?それくらいのことならマッキーがいいというなら別に俺は止めたりしないけどね・・・。ふふふふふ』
俺は心の中で安堵している。この程度の事なら俺は動揺して『はわわわわ』となったりしない。
たしかに俺の最愛の人でもあったまっきーを妻にしたいというのは言い難いだろう。だが、それはマッキーの気持ち次第ではないか??俺はマッキーを愛してはいるけど拘束したりはするつもり無い。自由でいいんだな。それくらいのこと。
「あのさ・・・ケイを・・・抱いてやってくれない?」
「・・・」
「え?」
ものすごい沈黙の時間を挟んでしまう。俺の反応に全員が固唾を呑んでこっちを見ている。
レイも、シャロンも、やっちゃん、ハウン、魔物っ娘達、それにリユやこの場にいる神々たちも・・・。
「え?」
俺は今、なんにも頭の中に浮かんでこない。どうすればいいのかもわからない。
「え?」
頭の中が真っ白になっている。
その姿を見て笑い始めるミシュラ。それにつられて全員が口を押さえてお腹に手を当てて俺から目をそらして震えている。
「恵のその反応もわかるぞ。私もケイにそのことを相談された時は同じようになったんだ。でも、私は女の子の相談には全力投球だろ?だから私は今ここにいる。恵を説得するためにここに居るんだな!!」
ものすごい熱い視線で話をし続けるマッキー。
「え・・・えっと・・・ケイって・・・男だったはずだよね?」
「元だろ??今は女の子だぞ??しかももう何千年と女の子をやっているんだぞ?あっちの世界で長い時間女の子で過ごしたから身も心も女の子で定着しているんだぞ??だからな!!ほら!!ものすごい美人だろ??スタイルも抜群だろ??なぁなぁなぁ??」
俺の両肩を掴んでグイングイン俺を揺さぶるマッキー。
俺の後ろに現れるミシュラ。さっきまで爆笑していたのに・・・。何そのシリアスな顔・・・。
「恵さん・・・女であれば抱いてさし上げるべきですわ〜。求める女性が居れば答えて差し上げないと・・・。」
「俺の頭の中にあの汚いおっさんがいるんですけど・・・それをどうすればいいですか??」
「それは・・・『デュラン』でね・・・?」
『流石に・・・主殿の記憶の改ざんは出来ないぞ?そんなことをすれば魔人が主を操ることも可能になるだろう??だからダメだぞ。』
「デュランもそう言ってるけど??」
「じゃぁ・・・これかしら?」
拳を強く握るミシュラ・・・。殴るの??それで殴るんですね・・・。
「お母様!!さすがにそれはダメですよ!!恵はそれで記憶を失ったりしません!!すぐに力技に出ないでください!!」
ミシュラを羽交い締めするレイ。その後から全員がミシュラを抑えこんで俺のところから引き離す。
「あぁァァ冗談ょ〜〜」
そのまま退場させられるミシュラ。
「あの・・・覚悟は出来ましたか??」
モジモジしながら顔を赤らめるケイ。
俺の拒否権はどうやら無いようだ・・・。