やっちゃんと状態異常
やっちゃんとレイに子供が出来て、2人は仲良く同じ部屋で母乳を上げている。
「ねぇ・・・やっちゃん・・・。メグミと2人で妊娠期間を過ごしてどうだった??」
「え?とっても楽しかったわよ。まぁ二人っきりってことはなかったけど・・・。レイも一緒でしょ?管理している人がずっと一緒だったでしょ??」
「うん、そうだよ。でもシャロンって結構空気読んでふたりきりにしてくれるじゃない?」
「そう??私の時はそう感じなかったけど・・・。」
「あとさ・・・聞きたいことがあるんだけど・・・いい??」
レイがヘラヘラ笑いながらやっちゃんに何か聞こうとしている。
「え??何??そんなに気になることがあるの??」
「うん、えっとね・・・えっと・・・やっちゃん・・・それ・・・どうするの??」
「え??」
レイがやっちゃんの体を指さしている。
「どうするの??向こうに帰れないと思うんだけど・・・。」
「え?」
「え??じゃないって。どうするの??さすがに寝て起きたらそれってどうかと思うんだけど・・・。別人扱いされるよ・・・。誤魔化しきれないよ。」
「へ??」
やっちゃんが自分の体を見ている。
「レイ・・・何の話??何を言ってるの??」
もの凄く顔色が悪い。ただ、本気でやっちゃんはわかっていない。多分・・・ズバリ言わないと理解できないだろう。
「メグミ・・・黙ってないで何とか言ってあげなよ・・・。そこでずっと沈黙しているのもどうかと思うよ。」
レイが俺に非難の目を向けてくる。
「・・・えっと・・・俺からは言いにくいじゃない。原因の一端は俺にあるわけだし・・・。」
「ある日突然、朝起きたら娘が超デブになっていたらおばさん泣くと思うよ。」
「ちょ!!!超デブ!!???」
レイの発言に、ものすごいショックを受けるやっちゃん。
「恵くん!!どういうこと??」
俺に涙目で聞いてくるけど・・・。妊娠して太っちゃったんだから仕方ないよね・・・。
「ねぇ!!恵くん!!黙ってないで何とか言ってよ!!」
襟を掴んでブンブン俺を振る。
「えっと・・・やっちゃん・・・鏡見た??出産後、誰かとあった??」
「え??え??誰ともあっていなけど・・・。あ!ハウンにあったわ。なんで??」
「ハウン・・・何か言ってた??」
「え??私に体大丈夫??って言ってたけど・・・。」
「くく・・・それ・・・出産後の大丈夫なのか・・・太りすぎ大丈夫なのか・・・ゴメン・・・笑いがこらえれない・・・。」
爆笑し始めるレイ。その声にマッキーが驚いて走ってくる。
「なんだ??大きな声で笑い出して!!びっくりしたぞ!!っておい!!あんた誰だ!?・・・え??やっちゃん??」
一見してマッキーはやっちゃんとわからなかったようだ。そして
「ちょっと!!やっちゃん!!真の勇者は状態異常にならないんだよな!!肥満はある種の病気だぞ!!健康でもそこから体が悪くなっていくぞ!!痩せるべきだって!!私も手伝うからがんばろうよ!!」
肩を掴んで熱い目線で語り出すマッキー。
その言葉を聞いて
「マッキー・・・あなたいい子ね・・・。やっぱり親友だわ!!私頑張る!!」
「じゃぁまず走ろうぜぃ!!さぁ!!行こう!!」
「ウン!!」
ものすごい笑顔で走っていくやっちゃんとマッキー。
かれこれ3時間は外で走っていたと思われる。
ゼェゼェ言いながら腹を出してひっくり返るやっちゃんの横で『ファイトファイト』言っているマッキー。
何やってんだ??
ハウンがものすごい哀れな目をやっちゃんに向ける。
「ねぇ?ハウン・・・やっちゃんに言った体大丈夫??は何に向けて??」
レイが小さい声でハウンに聞き始める。
「見ればわかるでしょ?言わせないで・・・。」
ハウンも太りすぎと言いたかったようだがやっちゃんには全く伝わっていなかった。
「もうダメ・・・腹筋出来ない・・・。ちょっと休憩・・・」
転がって汗まみれのやっちゃん。
ゆっくり起き上がってジュースを飲み始める。
「ちょっと!!やっちゃん!!そんなもん飲んだらダメじゃない!!飲むならこれにしなさい!!」
マッキーが白いドロドロした液体を持ってくる。
「なにそれ??」
「はい〜??運動の後はプロテインだろ??当分の滅茶苦茶入っているジュースなんか飲んじゃダメだろ?」
ぎゃぁぎゃぁ言いながら色々教わるやっちゃん。そして熱血指導し続けるマッキー。
マッキーは女の子の悩みの類に対して曖昧な態度を取らない。もう、熱血以外ないのだ。
そういうところに人気があると何かで聞いたな・・・。
チャラチャラした発言もするけど女の子の悩みには真摯に取り組む。そういうところに人気が出たらしい。
寝る時間が来る。向こうに行かなくてはダメな時間だ。
「一日じゃ無理〜〜!!シャロン!!ちょっとの間、向こうに戻らないようにして!!」
やっちゃんがシャロンに駄々をこね始める。
「弥生様はアホだな・・・。」
ものすごい冷たい目でやっちゃんを見るダリア。
「はぁ??ダリア!!今なんて!?」
やっちゃんが怒って立ち上がりダリアの前で仁王立ちになる。
やっちゃんの体で俺からは全くダリアが見えない。
「弥生様はアホだなって言ったんです!!」
「ダリア!!私の切実な悩みをアホで片付けるつもり??」
「いや、アホでしょ??」
ダリアに殴りかかりそうなやっちゃんをハウンが羽交い締めして止めている。
「ダリア!!ちょっと言いすぎよ!!やっちゃんに謝りなさい!!」
ハウンがやっちゃんを押さえ込みながらダリアに怒っている。
「アホにアホと言って怒られるなんておかしいです〜〜!!」
「なにを〜〜!!」
じたばたするやっちゃん。
「弥生様はアホです!!そんなの恵様に頼めば一発解決でしょ??元のナイススタイルの体に戻してくださいって頼めばいいだけ!!焦って頭回らなくなるなんて!!アホ以外無いでしょ??あほあほあほ!!」
舌を出しながらアホを連呼し続けるダリア。
その言葉を聞いてぴくりとも動かなくなるやっちゃん。
「恵くん・・・お願いできる??ダリアの言ったことお願いできる??」
涙を流しながら俺に願う。
「それより先にダリアに謝って。謝ったら聞くから・・・。努力も大事だけど、そういうのはね?俺に頼めばすぐ終わるじゃない??」
「・・・ダリア・・・ごめんなさい。」
ガッツポーズするダリア。
「初めて弥生様に勝ちました〜〜!!」
眼を輝かせて飛び上がるダリア。それを悔しそうな顔で見ているやっちゃん。
『デュラン・・・そういうことでお願い。』
『最近願いが雑だな・・・。』