小さく可憐な花を
レイとの間に子供ができる。
また双子かと思ったら、男の子が一人。まぁ普通なんだけどね・・・。
そういや、ジュディ老師の子供にも名前を付けないとと思っていたら
「忘れているなんてひどいですね・・・。さっさと考えてください。恵様の酷さに少し怒っていますから。」
「デキノワルイデシノコ(出来の悪い弟子の子)でいいんじゃない??」
懐かしいセリフではあるが、やっちゃんがものすごいひどい発言をする。それを聞いて
「おま!!ひっど!!」
やっちゃんとジュディ老師が取っ組み合いをし始めたのでレイのことも考えて訓練部屋に放り込んでおく。
「メグミ・・・ジュディ老師の赤ちゃんに名前を付けてあげて。そうしないとこの子には名前を付けれないから。お姉さんに名前がまだなのに弟に先に付けるなんてダメだからね。」
笑顔で赤ちゃんに乳を与えながら話すレイ。
「名前か・・・ミルコ・・・ミルコでどうだろう??」
「ジュディ老師に伝えてあげて。戻ってきたら一緒にこの子の名前を考えようね。」
手を振って俺を訓練室に行けというレイ。
「うん、行ってくるよ。レイはゆっくりしておいてね。」
「どう??仲直り出来た??」
訓練部屋にいくと、ものすごいぎゃぁぎゃぁ言い合いをしている2人がいる。
「恵くん!!ジュディ老師が冗談もわからないって!!」
「お前な!!名前がなくて泣きそうになっていた私の気持ちがわかるか??恵様が名前をつけると言ってからかなり長いこと放置してたんだぞ??どれだけ泣きそうだったか!!」
「まぁそれは謝るけど、ジュディ老師も俺に悪態着いて距離おかれてたじゃない?」
胸を押さえてダメージを受けているジュディ老師。
「老師言うな!!ジュディって呼んでって言ってるでしょ!!」
「ジュディ、あの子の名前はミルコって決まったけどいい??」
「ミルコ??ミルコっていうのね!!いいと思うわ!!ふふふふふ」
ものすごい笑顔になるジュディ老師。
「で、弥生の付けたデキノワルイデシノコって何よ??」
笑顔が急に消えてやっちゃんを睨むジュディ老師。
「あなた覚えていないの??あの言葉はあなたが恵くんに吐いた言葉よ。そんな悪態をついておきながらよく恵くんにそんな態度でいるわよね?」
「そんなこと言った覚えは・・・あ・・・」
どうやら思い出したようだ。
「あの時のね・・・恵様・・・ごめんなさい。」
ジュディ老師が下を向いて落ち込んで俺に謝ってくる。
「私にもなにか言いなさいよ!あなた、自分のやったことを忘れて平気で人を非難していたのよ?私が出さなかったらあなたずっと恵くんに謝る機会を失っていたんだからね!!」
やっちゃんはジュディ老師の弟子なのにものすごい剣幕でジュディ老師に怒っている。
どんどん落ち込んでいくジュディ老師。どんどん小さくなっていっている。
「弥生・・・ゴメン。」
「よし!!許す!!」
ジュディ老師の頭を撫でながら偉そうに胸を張っているやっちゃん。
「おま!!弟子のくせに!!」
「きゃははははは!!」
ジュディ老師のパンチを躱して逃げるやっちゃん。
「仲直りしたなら宴会に戻るよ。」
「で、あなた、レイはどうしたの??」
やっちゃんが俺に少し怒っている顔を向ける。
「え?いや、あの・・・ジュディ老師の子供に早く名前を付けてあげてって言うから。名前を考えてすぐに知らせに行けって。だからここにいるんだけど・・・。」
「じゃぁ、次はレイの子供に名前を付けるのね。で、何にするの??考えてるの??」
「いや・・・名前って凄い難しいよ。変な名前を付けれないじゃない??」
「でもあなた、植物とか生物の学名モジッて付けるでしょ?」
「え?そんなことないよ。もしかしハーベルとチアのこと言ってる??」
「ええ、あれ・・・花の名前でしょ?」
「うん、可愛い花なんだよ。美しい紫の。」
「そういうセンスはいいのね。あの名前・・・とってもいいと思うもん。」
羨ましそうに言うやっちゃん。
「でも、よく気づいたね。チリアヤメの花なんてあまり有名じゃないでしょ?」
「ふふ、昔、私にくれた球根でしょ?忘れるわけないじゃない?毎年花を咲かせてくれるわよ。凄くうれしくて色々調べたのよ。学名とか、和名、そして育て方。あなたがくれたから大事にしようと思って・・・。」
「そうなんだ・・・ありがとう。」
俺が照れながらお礼を言うと
「こちらこそ・・・あなたのくれたあの花の花言葉知ってる?」
「あ・・・うん・・・花言葉は『神秘的な人』・・・。やっちゃんにぴったりな言葉だと思って・・・。」
真っ赤になるやっちゃん・・・そして俺・・・。俺は昔の感情を思い出す。やっちゃんに思いを募らせ続けていたことを。
「あの・・・あの花をくれたのって・・・小4くらいの時よね??あの時には私のこと・・・」
俺は頷くしか出来ない。俺の手を震えながら両手で包み込むように握るやっちゃん。
すると
ぱぁぁぁ
「あぁ・・・これ?これがそうなの??」
やっちゃんの体が光る。
俺は頷き、やっちゃんをお姫様抱っこで俺の部屋に連れて行こうとする。
「待て!!私を放置してどんどんいい雰囲気になるんじゃない!!横で見ている身にもなってくれ!!!」
ジュディ老師の存在を忘れていた俺達。
真っ赤になって
「「ゴメン・・・」」
2人で一言残してダッシュで逃げるしか出来なかった。