あっけなく
「デュオール・・・まさかその男に捕らえられているのか???」
フレインが悲しそうな顔を見せる。
「いえ、私は自由よ。何の不自由もなく暮らしているわ。ジーニスも、子どもたちも元気にしているわ。」
デュオーンの言葉に目を見開くフレイン。
「馬鹿な!!3人は私がしっかり保存している!!デュオールが戻ってきた時のために・・・生き返らせる手段も用意している!!そんなはずはない!!」
「亡骸がなかったのはあなただったの・・・。あいつらは嘘を言っているわけじゃなかったのね。なぁどちらにしろ、みんな元気に、恵様のもとで生活しているわ。あなたは・・・あなたはどうするの??」
デュオーンが泣きそうな顔をしている。
「私は・・・私は・・・もう普通の生活には戻るつもりもない。世界を滅ぼして善人のみが生活をする世界を作る。そして・・・デュオール・・・あなたが幸せになるようにやっていくつもりだ。」
今までやり直した時には見せたことがない顔をしている。悲しいのか、嬉しいのか、苦しいのか、楽しいのかも顔で判断できない。
「フレイ・・・今の私は幸せよ。だから世界を作りなおす必要なんかないの!!だからやめて!皆が悲しむわ!!」
デュオールの言葉を聞いてフレインが震えだす。
「皆??皆って誰だ??私はあなたと、幸せに暮らすんだ!!他の誰でもない!!2人でだ!!」
何で火が着いたかわからないが、ものすごい形相をしている。
「ジーニス??子どもたち??他の皆??幸せ??私には関係ない!!私はあなたと!!あなただけと・・・」
形相だけではなく姿形も変わり始める。
どうやら説得できなかったようだ。
俺はデュオーンに賭けていた。戦闘せずに済む結末という俺の仲間が一番嫌がっていた終わり方にしたかった。それももう叶いそうにない。
「私がリセットする。この世界をリセットする。神なんぞ関係ない。私がやり直すんだ。そしてあの幸せな時間を永久に過ごすんだ・・・。」
どんどん姿が変わるフレイン。自分を改造しまくった禍々しい姿になる。
「私だけがほしいのね・・・。あなたにとって私がそれほど大事なのね・・・。」
涙を流しながら歯を食いしばるデュオーン。
「この世界を滅ぼして新しい世界を作る。あなたと私がずっと幸せに生きる世界。」
ミシュラの全力よりも強い、そんな雰囲気を垂れ流しながら俺達の前に立つフレイン。
もう、人型ですら無い。
「デュオーン姉・・・こいつ・・・デュオーン姉の家族も殺す気だよ。泣いてる場合じゃないよ。ほら・・・こいつより家族が大事だろ??さっさと殺ろうぜぃ。」
デュオーンの手を引っ張るマッキー。
「ええ、そうね。説得できなかったわ。私のせいでフレイはおかしくなってしまったんだから。私の手で・・・」
「多尾獣族・・・対策をしていないと思ってか??この世界にはうじゃうじゃいるんだよ・・・。あれがいてはリセットできない・・・。だからね・・・取り込んでいたんよ・・・。ほらこんなものを・・・」
胸のところから誰かの顔が出てくる。そしてその顔の横から腕が4本生えてくる。それぞれの腕に剣を携えて。
「ふはははははは。多尾獣族の苦手な真の勇者様だ・・・。これがあれば、攻撃できまい・・・。お前
たちの策もこれで潰えただろう??2匹いても3匹いてもこれには敵うまい・・・」
見た目がものすごい気持ち悪い・・・。
「あぁ、フレイは・・・下衆だったのね・・・。じゃぁ遠慮無く滅ぼせるわ・・・。あなたに失望したわ。心の醜さが外見にまで及んでいるなんて・・・。さっさと殺しておくべきだったかしら??」
デュオーンの顔がフレインを軽蔑している。
「おのれ・・・おのれ・・・殺してやる・・・。あの男・・・許さん・・・俺様を・・・殺しやがって・・・こんな姿にしやがって・・・許さん・・・。」
胸から出てきた顔が俺を指さしてブツブツなにか言っている。
「おう、恵・・・あれ・・・恵が殺したやつじゃない??あの死体どうした??なぁなぁ。」
「あ・・・えっと・・・いつの話??何の話??」
俺には皆目記憶がない。
「ひっどいヤツだな。ほら!!前のこの国であった武道会だよ!!予選で勇者殺しただろ?」
俺は顎に手を当てて考える・・・。もの凄く考える。思い出そうと頑張ってみるが全く覚えていない。
「ゴメン・・・わからない。これ・・・俺のせい??もしかして・・・。」
「いえ、恵様のせいではありません。全てフレイ・・・いえ、フレインという神々のせいです。」
「ほいほ〜〜い、今いいところ??強そうなのは全部始末したよ。あとは、魔物っ娘やレベル有りで何とかなりそうだよ。で、この気持ち悪いのがラスボスなの??スマートさのない格好悪いラスボスだね。」
レイとやっちゃんが戦闘に参加する。
俺がレイに話そうと目を向けた瞬間に
ドゴ〜〜〜〜〜ン!!
フレインの巨体が結構な距離飛んでいく。
「ほほほほほ、油断しているのかしら??直撃を食らうなんて。久しぶりに顔を見てやろうかと思ったら・・・顔がわかりませんわ〜〜〜。」
ミシュラが現れる。屋敷はどうしたの??
「屋敷の方はクルクが守っていますわ〜。あの子で十分ですよ〜。」
「よっこいしょ。この気持ち悪いの・・・早く何とかしてください。囲っているだけで不快です。」
シャロンが別空間に閉じ込めた胸の部分にあった顔と腕を封印して持ってくる。
「はいはい、こうするとね・・・」
空間に手の平を添えるジュディ老師。
バシュ!!
四角い空間が血で満たされる。そしてぐるぐるミキサーの中のように回転し始める。
「気の送り方で肉体が破裂して木っ端微塵になるのよ。どんな堅い装甲をしていても、どんなものでもね・・・。」
ものすごい怖い顔をするジュディ老師。コレを俺達に使わなかったのは優しさだな・・・。
「もしかして・・・ジュディ老師はコレをどこからでもできるのか?」
マッキーが震えながら聞く。
「ええ。私の体に触れたらこうなるわよ。やってみる??」
ブルブル顔を横に振るマッキー。
「うわ・・・ジュディ老師って強いんだ・・・ちょっと最近ナメてたわ・・・。」
シャロンが小声でマッキーに言っている。
マッキーも顔色を悪くして頷きまくっている。
「はぁ、弟子に馬鹿にされていたんだ・・・ちょっとショックかも・・・。」
ジュディ老師が落ち込んでしまう。それをポンポンと肩をたたいて慰めるレイ。
ズズズズズズズ〜〜〜〜〜〜ン・・・
ものすごい発光とともに爆音が響き渡る。地面が揺れるほど・・・。
「よいしょ。もう始めってるのよね??デッカイ化物が転がってたからとりあえずぶち込んでおいたけど・・・よかったわよね?」
ハウンが俺の横に着地する。
「じゃぁマッキー、デュオーン・・・とどめを刺してきて。もうアイツには用事がないから。まだなにか隠しているかも知れないから油断はしないでね。」
「おう」
「かしこまりました。身内のしでかしたことですから・・・。私がキッチリ始末してきます。」
漆黒の霧が2つ。回転して混じりながらでかい巨体のもとに飛んでいく。
そしてすぐに帰ってくる。
「はい!!完了!!ゴミの清掃は終わりました!!」
「・・・フレイは始末しました。」
「ありがとう。これで済んだのかな?デュラン・・・どう??」
「どう?と言われてもな・・・。一応調べては見たが・・・イケるんじゃないか?一応元に戻らないように願っといてくれ。」
「そうするよ。デュラン!!フレインが二度とこの世界に干渉できないように封印してくれ!!」
「その願い叶えてやろう。」
俺の目の前に黒い玉が転がる。それをデュオーンに渡してみんなに向かって言う。
「お疲れ様。これで終わったと思う。後は・・・変な方向に分岐しないかしっかり観察しないとね。なんせ・・・時期がずれているから。」
俺が顔を曇らせて言うと
「そうですね。恵さんの恐れていることは、この中から真のラスボスが出ないかということ。皆さん・・・、その辺りはしっかり気をつけてくださいね。」
ここにいる皆が頷いている。
「終わったし、宴会しますか??」
「「「「「「お〜〜〜!!」」」」」」
全員が笑顔で飛び上がる。
そして俺の屋敷では連日宴会が催される。
俺のやり直しの旅が終わるのを祝して。