多尾獣族を伴って
全員が配置に着く。
と言っても・・・好き勝手に出て行っただけだけど・・・。
「恵さん。この場は私が守りますから・・・。ラスボスの相手をおねがいしますね。」
ミシュラは自分で狩りに行くのかと思ったが、俺にラスボスを譲って、この屋敷にいるものの安全を第一に戦ってくれると言ってくれている。
「恵さん・・・何度目の決戦かわかりませんが・・・お気をつけて。」
おチビ2人を抱いて自室に戻るミシュラ。
俺は皇帝の間に一人残っている。
「この国の王はあなたですよね?」
見知らぬ男が俺の目の前に現れる。
「そうだけど、あんたは??」
「申し遅れました。私はジュエル様の使いの者です。あなたの強さを確認してこいと言われまして・・・。」
「恵様の強さを測る前に自分の強さを測るべきね。」
シャロンが男の首だけを違う空間に収めてしまう。
首がなくなり倒れる使いの男。
「シャロン、気をつけて。首を切り落としたくらいで死ぬなら、俺は皆にあんなことを言わないよ。」
俺がシャロンを自分の膝の上に願いを使い移動させる。
「くくくくく・・・ばれていましたか・・・。油断したところを始末するつもりでしたのに・・・。いやぁ、お強い。側近の方でこれ程なのですからあなたはもっとお強いのでしょう。そ・・・」
男の体が爆ぜる。
ジュディ老師が何かしたようだ。
「木っ端微塵ならさすがに死ぬでしょう?雑魚の相手はシャロンと私でやりますから、恵様は戦う準備を。」
ジュディ老師が服に付いた肉片を手で払いながら笑顔を俺に向ける。
「ウォーミングアップ位にはなると思ったんだけどね。まぁ、俺は皆と違って遊ぶ余裕がないから。」
椅子から立ち上がり、ラスボスを迎えに行く。
お使いが死んでしまったから来るタイミングがわからないだろうからね。
「恵様・・・外のゴミはある程度始末して、レイさんや弥生さん達のストレス発散要員だけ残しておきました。」
マッキーとデュオーンが俺の元にやってくる。
「恵よ!!ジュエルは私達で始末するからその辺で見てろ。見つけた瞬間にデュオーン姉と連携して始末するからな。よく見とけよ!!顔も見ないうちに死ぬかも知れないぞ。」
顔は何度も見ているから別に見なくていいけど・・・
「一応、お話くらいさせてよ。長い長い俺のやり直しの歴史に俺じゃない人による瞬殺で終わりましたは悲しすぎるでしょ?」
「はぁ?恵は以前言ってたよな!戦って勝つ必要はないって。それなら私達が殺してもいいんじゃないか?」
「う〜〜〜ん・・・デュオーン的にはどうなの?瞬殺楽しい??」
「え?私は家族とゆっくりできればそれでいいので。それが私の幸せですから。それ以外のことはもう・・・どうでもいいです。」
ちょっと笑いながら言うデュオーン。最後のほうがものすごい小さい声なところが可愛らしい。
「デュオーンは家族第一だからね。まぁ俺も仲間第一だから一緒か。というわけで、お話はさせてね。それと・・・獣の姿で俺の横にいてね。」
「なんでだ??綺麗な女を見られたくないのか??」
「そうだね。」
「うわ・・・なんか凄い馬鹿にされた感が・・・。」
マッキーが俺の背中にパンチを何度も入れてくる。
痛いよ、もう・・・。
「恵様・・・もうすぐそこにいます。周りのゴミはどうしますか?」
「そいつらは食っていいよ。そこは瞬殺でお願いできる??」
「かしこまりました。」
デュオーンが消えて、黒い霧の嵐が来る。そしてまた俺の横に戻ってくる。
「始末しました。後はジュエルという男のみです。私とマッキーなら瞬殺も可能です。反応できていませんでしたから。」
どうも今回のラスボスは弱いようだ。まぁ、今までにいなかった多尾獣族という反則級の仲間がいるからね。いくら神々であろうと、改造を施そうと、どうにもならないものはどうにもならない。相手にできるのもは真の勇者のみと決まっているのだから。
「まさか・・・多尾獣族を従えているとは・・・。誤算でした。」
ジュエルの皮を被ったラスボスが苦い顔をしている。
「やぁ、はじめまして。俺は恵。あんたのことはいろんな神々から聞いている。無茶し過ぎだよ。評判も良くない。何でそんなことするの?と聞きたいけど知っているからいいや。リセットはさせないよ。神もこっちで保護しているからね。あと・・・まぁその辺はもう少し後でいいかな?」
俺の言葉に頭をかしげるジュエル。
「何を言っているのかわからないですが、あなたが私にとって最後の敵というのはわかっています。さて、勝負しますか??あなたが正しいのか、私が正しいのか。」
「正しいか間違っているかなんて正義と悪と一緒で勝ったほうが勝手に決め付けるんでしょ?俺はこの世界のことが好きだからリセットはさせるつもりはないよ。あんたの不幸は見てきたから。だから止めにしない??」
俺の言葉に震えだすジュエル。
「私の何を見たんですか?私の何がわかるのですか?人族ごときに何が理解できるのですか??」
「別に理解はしていないよ。ただ、あんたは自分の愛したものを奪われた。それでおかしくなったってことだけしか理解できていない。ただ、あんたは自分がやられて嫌だったことを長い時間、他の人にやり続けているんだけど、それは理解できているの?」
「ゴミの気持ちなんぞどうでもいい。」
「ゴミね・・・。あんたの愛した女性もそのゴミに入るんだけどいいの?」
「デュオールはゴミではない!!」
大声で怒鳴り散らし俺を睨みつける。
「デュオール・・・?」
デュオーンが呟く。
「え?」
マッキーがデュオーンに聞き返す。
「デュオールとあの男は言ったわよね?」
「ああ、そういったな。知り合いか?」
「ええ・・・でもあの男を見たことがないわ。その呼び方をするのは・・・え?フレイ??」
デュオーンが気づく。だが多尾獣族の姿のままだ。彼女は俺が言ったことを守り続ける。
「まぁそんなに怒らないで。デュオールは素晴らしい人だったんだろう。あんたをそこまで駆り立てるんだから。だからこそ、彼女のためにその行為をやめない?彼女はあんたがやろうとしている、それを望んでいるの??」
「デュオールはそんなことを望むはずがない。彼女は・・・すべての世界の人々の笑顔を望んでいた。」
「ならやめればいいじゃん。アホですか?こいつ??なぁデュオーン姉。」
マッキーが横から口を挟む。
「・・・」
「デュオーン!!姿を見せてあげていいよ。」
俺の言葉と同時に多尾獣族の姿から人の姿になる。一糸まとわぬ美しい姿に。
「フレイ・・・」
デュオーンの姿を見てジュエルが硬直する。
「デュオール・・・あぁ・・・本物か??デュオール・・・。」
ジュエルの姿が歪む。そして本来の姿を見せるフレイン。
「ええ・・・」
悲しそうな顔をしてうつむくデュオーン。