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願いで手に入れた伴侶が最強  作者: うぉすれや
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輝く魂

全く私の攻撃が効かない敵。

一方的に切取られる体。

しかも切られた部分は元に戻すことが出来ない。


「はぁぁ、参ったわ。尾が後・・・3本しか無いわ。しかも右手もないし・・・。どうしましょう?」


私は普段見せない人の姿で考え事をしている。

啖呵を切っただけに、このままリベンジに向かわないのも格好がつかない。


「う〜ん・・・久しぶりに頭を使うわ・・・。」


包めば死ぬモノの相手ばかりしていたから、技術なんてあるわけもない。

どうしたものか・・・。





「おぉ、ここで一人で住んでいるのかな?気配をたどってきてみれば・・・大きな家だ。財宝もいっぱいあるみたいだし。」


ボサボサ頭の男が私の前に現れる。


「女の家に上がるときは一声かけるべきよ。戦士としては一流でも、男としてはちょっとダメね。」


「あぁ、よく言われるよ。女でもできれば変わるんじゃないか?とか友にもよく言われる。」


私達は笑う。


「さて、すまないが、あなたには滅んでもらう。あの城に攻めたのはまずかったな。あそこが何かしらないみたいだから教えておくけど、あそこはこの世界の王の城だ。あなたが来た理由はなんとなくわかる。依頼主のいろんな黒い噂を聞くから。だが、そんなことは私には関係ない。」


剣を抜く男。


「服を着る時間くらいはやるぞ?その姿でいいのか?」


「いや〜。申し出うれしいんだが、あいにく服を持っていないでね〜。この城にあるものを着る気にもなれないし。下衆のニオイで酔いそうになるからね。」


私は髪を掻き上げてゆっくりと立ち上がる。


「あなたのその姿は・・・そっちが本来の姿なのか?」


「ええ。生まれた時の姿はこっちよ。嫌なことがあってあの姿になったのよ。」


「それでは参る・・・いざ・・・」


男が構える。そして斬りつけてくる。斬撃を回避しつつ体術で応戦。一団にいた頃の技を駆使して攻撃する。

すると容易にヒットするのだ。


「ぐ・・・もしかして・・・結構やる方ですか?あの時の姿の時は弱小妖怪と思っていましたが・・・。」


膝をついて腹を押さえる男。私の膝蹴りがあたって吐血している。


「じゃぁ、ここまでね。あなたへの攻略がわかったわ。あなたはあの姿に対して絶大な強さを持っているけど、この姿には対応できない。ふふふ・・・勝負あったわね?降参してしまいなさい。」


私は勝ち誇る。偶然とは言え、この男を攻略出来た嬉しさもある。


「ははは、そうも行かないんだよ。私が生きたまま負けると一族が滅ぼされるんでね。だから死ぬ以外の負けは認められないんだな・・・。」


「難儀な商売ね〜。あ!そうだ!!あそこを滅ぼせばいけるんじゃない?私はあなたをできれば・・・できれば殺したくないのよ。心の中の黒い部分は殺せ殺せとうるさいけどね。」


私の言葉を聞いて笑顔を見せる男。


「信用第一なんだよ。商売っていうのはね。だからそれも飲めないんだよ。」


よろめきながら立ち上がろうとする男。


「あらそう、じゃぁ、あなた・・・その怪我で私に追いつける??」


私は窓を開けて身を投げる。そして地面に着く前に空に飛び上がってこの国の中心にある大きな城に向かう。


「あなたはそこでゆっくりしていなさい。はははっはは」










大きな城でも、隠れていても、すぐにどこにいるかわかるのよ。

臭いニオイを発するところに行けば必ず下衆がいる。

大量の下衆を殺して、王と妃と思われるもの、そしてその子どもと思われる3人を見つけ出す。


「一際臭うドブのニオイ・・・。あなたがここの王?」


「無礼者・・・私達に傷ひとつでもつければ無限の苦しみを与えてやるぞ!!」


「それはこういうものかしら??」


后を尾で包み、拷問を始める。以前、私が喜んで行っていた方法だ。

悲鳴と絶叫が響き渡る隠し部屋。

それを見て3人の子供が泡を吹いて倒れる。そしてそのまま私の尾に包まれて消える。

子供はいくら下衆であっても苦しめて殺すほどのこともない。そう思っている。

教育が悪い。躾が悪い。そういうことにしておこう。


苦しめるだけ苦しめてバラバラにして王と妃を殺す。


私の体の一部は地下の宝物庫に厳重に封印されていた。見たこともない札や縄、剣や杭を使って。

そして切り落とされてなくした尾と右手を取り返す。

元の体を取り戻した私は気分よく根城に戻る。

あの男がそこで伸びているはずだから。







「・・・バカ真面目もここまで来るとね・・・。」


私は根城についてすぐに見つけてしまう。

腹を自らの剣で掻っ捌いて絶命する男の姿を。

重要な器官を自らの力で斬って自決する。

どれほどの覚悟と、どれほどの苦しみがあるのだろうか?


私は絶命している男の側に座る。


「何も死ぬこと無いじゃない?久しぶりに会う・・・美しい魂の持ち主・・・。絶望しかない私の生きる道に見つけることが出来た・・・初めての光だったのに・・・。」


亡骸を抱きかかえて私は涙を流す。


「私はあなたの気持ちを考えなかったのね・・・。あなたほどの男ならこうしてしまう可能性を感じることも出来ないほど心が腐ってきているのね・・・。・・・ごめんなさい。」


「ねぇ、あなたの話を聞きたかったわ。あなたはどんな生き方をしてきたの??どうしてそこまで真っ直ぐなの??あなたは大事な人がいなかったの??ねぇ??」


亡骸は何も言わない。


「土葬も、火葬も出来ないわ。できるのは・・・私の中で眠ってもらうだけ・・・。」


私は男の亡骸を霧で包みすべてを取り込む。


「おやすみ、慶次郎。そして、さようなら。あなたは天国に行くでしょうね。私はどう考えても地獄・・・。もう会うこともないわ。」





この世界の下衆の数も激減した。

また違う世界に行こうかしら?

もしかしたらまたあの輝く魂の持ち主に出会えるかも。

私は新たな楽しみを見出すことが出来た。




色々な世界を滅ぼした。

色々な世界の同じ能力を持った戦士に出会いもした。

だけど、美しい魂の持ち主には出会えない。

あの輝く魂を、信念を、覚悟を持った者に出会うことはなかった。


「彼は本当に特別だったのね。」



私は過去の彼との出会いを思い出す。彼ほどの男とまた出会える日を夢見て。

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