レイリーは知っている。
「なぁ、レイリーよ。ここのものの殆どを私の奴隷として恵の国に持って帰るけど、いいよな?」
「ええ、構いませんよ。賭けに負けて奴隷に落ちたものまで救う気にはなれません。食うなり焼くなり好きにして頂いて結構です。」
「ほほぅ・・・食っていいのか・・・。それは楽しみだ〜。」
ニヤニヤして周りを見渡すマッキー。その姿に全員が目を伏せる。
「レイリー・・・マッキーはマジで食うぞ。色んな意味で。」
俺の言葉にユクがマッキーを見て真っ赤な顔になっている。
「あぁ、食うってそっちですか・・・。まぁそういう人もいるのは聞いていますからお好きにどうぞ。」
テーブルの上の料理を食べながら平然とした顔で言う。
「ミシュラはうまかったぞ!」
マッキーの言葉に
「親のそういう話は聞きたくないです。」
目を瞑って耳をふさぐレイリー。
それを見て爆笑してレイリーの背中をバンバン叩くマッキー。
「いや、ミシュラはマジで食われてたから。そっち方面じゃないよ。」
「あぁ、そうですか。良かった。兄さんもさすがにお母さんのそういう話は聞きたくないですよね?」
「ん〜、まぁ、想像したくないな。母親は女じゃないからな。母親という生物だから。」
「ははは、わかります。」
レイリーが少し顔をひきつらせながら笑う。
俺達の会話を聞いているのか聞いていないのかわからないが、ギルドの中にいる者は皆顔色が優れない。
自国の王と対等に話す者や、タメ口で背中をバンバン叩く女を見て、その人物を笑っていたことをかなり後悔しているようだ。
「なんかお通夜みたいで気持ち悪いな。こいつらに芸を一発ずつやっていってもらうか?笑わなかったら死刑って言うのはどうだ?」
「うわ!!ものすごいパワハラ。その思考はかなり怖いわ。だから奴隷になった召使の子も恐れおののいていたんだね。」
俺が身震いをしながらそう言うと
「マッキーさんは極悪なんですね。この状況で芸をやれって・・・。一番最初の人が気の毒で仕方ありませんよ。」
レイリーの護衛として来ているユクが俺と同じように身震いをしている。
「極悪って・・・フェブには負けるよ・・・。」
ぼそっとマッキーが呟く。
「ははは、ミシュラ様から聞きました。アホですよね。身内の愚かな行為を謝罪します。」
頭を下げるユク。
「まぁいいじゃない。死にかけるほどの制裁を食らったわけだし。」
「そうですね。制裁を受けたおかげで正妻になれたわけですし。」
「「え?」」
俺とマッキーがレイリーを見る。
「あぁ、言ってませんでしたね。ユクとフェブ、そしてマイカを正妻として迎えました。今は後継者作りに勤しんでいます。」
真っ赤になって俯くユク。
「ほう、願いはかなったわけか。大した女だな。おめでとう。」
マッキーがモノすごく感心している。
「恵よ。私も正妻にしてくれ。そろそろいいだろう?」
「いや、そろそろもクソも、今はそういうのはないっす。」
「なんだよその言葉遣い!!」
グーで俺の頭を殴るマッキー。手をプルプル振るって、その後顔をしかめて拳をさすっている。相当痛かったようだ。
「ははは。マッキーさん、気をつけたほうがいいですよ。兄さんの防御力はここまで来ると攻撃力ですから。殴るなら何か物を使わないと。」
ひどいことを言うレイリー。
「おう、恵!!トールハンマー出せ!!殴ってやる。」
「止めて。さすがの俺でもあれは痛いから。」
「やめてやるから、なぁ、正妻にしてくれよ〜〜。なぁなぁなぁ。」
腕にまとわりついてそのまま俺の体にまとわりついてくる。可愛いんだけどな〜、俺は正妻をまだ迎えるつもりはない。
「まぁ今一番はマッキーなんだけど、正妻というのは俺の今の状況ではちょっと無理なんだ。ごめんね。必ず何かしらの責任は取るつもりだから。」
その言葉にものすごい勢いで俺の口にキスをしてくる。
「おい!!お前ら!!私は今めちゃくちゃ機嫌がいい!!奴隷になったやつ全員並べ!!」
賭けに負けたものが素直に並んで立っている。エディだけ転がっているけど・・・。
「お前解放、お前は残留。お前は残留、お前は解放・・・」
どんどん残留と解放を宣言するマッキー。解放されたものは逃げるようにこの場から立ち去る。
「残留の根拠は?」
「私が食うのだ。あと・・・恵が好きそう・・・。」
「え?俺も混ざるの??」
「もちのろんだな!!当たり前だろ??私のものはお前のもの。お前のものはお前のものだぞ。」
「レイと違うね。メイリーンが言ってたけど・・・。」
俺はメイリーンに監視させてやっちゃんとレイの3人で遠出させた時のことを思い出す。
「あぁ、それ・・・俺も聞きました。姉さんはアホの極みですね。どこの世界にそんなこと言うアホがいるんですか・・・。」
レイリーが呆れたため息を吐きながら自分の姉のアホさ加減を嘆く。
「ここにだな・・・。」
マッキーが何故か悲しそうな顔で床を指さす。
「「「ふふふふ・・・あはははははははは!!」」」
「姉さんはアホですよね〜。何であんなにアホなんでしょう?」
「レイリーよ!!アホアホ言ってやるな。ああ見えてアホと言われるとショックを受けるんだから。」
「レイはいつからあんななの??」
「私の知る限り、会った時にはああでした。」
俺の疑問に答えるユクの言葉に床をバンバン叩いて笑い転げるマッキー。
「あははははははは・・・キャラ作って頑張る当たりは父親似か??ゾルミスも頑張ってたっていう話を聞いてミシュラが爆笑してたぞ。」
「父親のそういう話を子供にバラすのは良くないって。って、何で知ってんの??」
俺が驚くと
「ミシュラに酒を飲ませてみろ。何でもしゃべるぞ。あいつ・・・酒が入って酔うとものすごくおしゃべりになるから。」
「もしかして、自分で自分の正体を話したとかはないよね?」
「神々って話ですか??」
レイリーが普通に言葉に出す。
「「「え???」」」
俺とマッキー、ユクが目を見開いてレイリーを見る。
ギルドにいる全員は耳をふさいでいる。なにかやばい感じがしたのだろう。聞いてしまえば死ぬかも知れないという本能がそうさせたのだろう。全員が耳をふさいでいる。
「もしかして・・・レイリーは知ってたの??」
「ええ。なんでです??秘密でしたか??」
「ミシュラは頑なに隠しているでしょ?」
「ええ。でも、お母様を見て誰が魔族と思うんですか?姿形が全く違うでしょ?色白だし、目が普通の魔族と違うし、角もない。誰だって解ると思いますよ。」
「レイちんは知らないぞ。」
「いやいや、知ってますよ。そこまで馬鹿なら縁を切ります。」
お酒を飲みながらものすごい爆弾発言をかますレイリー。
「ユク、お母様を魔族だと思ってたりしないよね?」
「え??特殊な方でしたから突然変異かと・・・。」
「それは聞き方によってはものすごく失礼だよ?」
俺の言葉に下を向いてしまうユク。自分の失言に今気づいてしまったようだ。
それを見て笑い転げ続けるマッキー。
このまま死んだりしないよね??