お見舞いに行こう!!かな・・・
「マッキー!!」
俺が皇帝の間に座ったまま、普通の声で呼んでみる。
数分後、マッキーが俺の前にやってきて
「何〜??呼んだだろ?」
と、ちゃんとした服装でやってくる。戦闘用ではない、俺とお揃いの町人の服を来て。
最近マッキーは鎧の類のものを着ていない。なぜなら、彼女は霧で鎧をまとうから。
そのせいで基本的に軽装で、ぱっと見た感じその辺にいるお姉さんと変わりない。
顔は美しいんだけど、こっちでは化粧もしていない。
綺麗なので必要もないんだけどね。
「なぁ、マッキー。そろそろお見舞いに行こうよ?」
「え?誰か病気か??」
「いやいや、俺達、結構な問題を放置しているだろ??」
「へ??問題??私達、何か問題を抱えてたっけ??」
「じゃぁ、ヒント!魔族領。」
「ザンダースか?」
「ブブー。もうひとつヒント!酒場。」
「え??酒場??う〜〜〜〜〜ん・・・」
マジで悩んでいる。もしかして忘れているのかな?
「じゃぁ、ほぼ答えを云うよ。魔族領の大きな街の酒場で大きな事件があったじゃない??」
「え?事件?誰か殺されたのか??」
「いやいや、死にかけてはいたけど、死んでいなから殺人未遂事件だな。」
「恵・・・ちょっとその言い回しじゃ私は答えに行き着かないぞ?」
「わかったよ!!ミシュラがフェブを殺しかけただろ??」
「あぁ!!そんなこともあったな!!で、何でそれが私達と関係しているんだ??」
俺は頭を抱える。そうだな・・・厳密には俺達は全く関わっていない。ミシュラが一撃をお見舞いしてフェブが瀕死になった。でも、それは俺達にレイにバレたことを警告しに来てそうなったわけで・・・。
「まぁそう言われると、俺達には関係ないかも知れないんだけどさ、やっぱりどうなったか気になるじゃない?知り合いだろう?」
「そうだな。美人がこの世から消えてしまうところだったからな。それに・・・」
何故かものすごいにやけた顔をするマッキー。
「取り立てねばならんのだよ・・・。」
ニヤニヤして両手をワキワキさせて何かを妄想の中で揉みまくっているような感じだ。
「もしかして・・・賭けの話??」
「Yeeeeeees!!」
ものすごいいい顔だ。なぜ英語で返事する??
俺とマッキーは願いによる瞬間移動で魔族領のレイリーの城の前にやってくる。
それにしてもデッカイ城だよね?そう感じていると、警備の魔族の人が俺達に気づいて走ってくる。
「これはこれは!!恵様!!レイリー様なら湖のほとりの別荘にいらっしゃいますよ?」
「別荘って、ミシュラが住んでいた??」
「はい。ミシュラ様がいなくなって、今はフェブラル様の養生に使用しています。」
「あのさ・・・フェブは大丈夫??」
「はい。少しずつではありますが回復に向かっています。あのランクの戦士を瀕死に追いやるとは・・・世の中にはまだまだ凄い方がいらっしゃるんですね〜。」
おや??誰が瀕死に追いやったのか、隠しているのか??
「なぁ、誰がやったんか聞いていないのか?」
マッキーも気になったようですぐに聞き返している。
「ええ。誰とまでは聞いていません。聞く必要もないですしね。回復すれば自分で倒しに行くでしょうし。それが我々の掟ですから。」
それはない。というよりその掟がおかしい。瀕死に追いやるほどの強さの違いを短期間で埋められるはずがないんだから。
まぁ、ある程度のことはわかったし、回復に向かっているなら急ぐ必要もないか。
「マイルーンで買い物したいんだけど、入っても大丈夫?」
「ええ、恵様は出入り自由ですよ。ただ・・・、まぁその辺りは行けばわかるから今言う程でもないですね。」
その言われ方・・・とても気になるんだけど
「じゃぁ、とりあえず行ってみる。なんせ、俺のことで何かあるってことでいいんだよね?」
「ええ、あなたが顔を見せればすぐにわかります。」
俺はマイルーンに向かう。結構な距離があるのでマッキーの能力を使って。
「マッキー!!馬かっこいいな!!」
「そうだろ!!ジェノス!!恵が褒めてるぞ!!喜んだらどうだ??」
「フン!なぜ男を背中に乗せねばならんのだ・・・。クソ・・・」
マッキーの創りだす巨馬、ジェノスはマッキー以外の人を乗せるのがとても嫌だそうだ。
ずっと走っている間、文句をブツブツ言い続けていた。
デカくてカッコイイのになんか小さいやつだな・・・。
俺達はあっという間にマイルーンの入り口に到着する。
そこで・・・
「あ!!あれは!!手配書の・・・」
門番が俺に指差して慌てて街の中に走っていく。
俺達は門のところで違う門番に呼び止められて話をする。
「これはこれは・・・えっと・・・恵様!!」
手配書を見ながら俺の名前を出す門番。
「聞きたいんだけど・・・何その手配書・・・」
門番が黙ってしまう。そしてその後門番の後ろから変なおっさんがやって来る。
見た目はチョビヒゲの生えた小太りの魔族のおっさん。魔族にも小太りとか居るんだ・・・。
「いやいや〜〜!!これはこれは!!ご訪問有りがたき幸せ!!」
俺の手をとって握手するおっさん。
「あなたは??」
「おお!!自己紹介が遅れました!!この街を管理させて頂いてます、ボルンと申します。」
ものすごい笑顔で俺の手をブンブン振って握手し続けるおっさん。
「俺は吉永恵、そしてこっちが」
「マッキーだ。よろしくな!!」
胸を付き出してふんぞり返るマッキー。
おっさんは俺達を連れて街の中を通り、大きな屋敷に連れていく。
「こちらでゆっくりしていってください。」
「いいよ。普通の宿に泊まるからさ。それにまず、えっと・・・マッキー、何の用事だったっけ??」
「はい〜??もう忘れたのか??ギルドの酒場だろ!!私の可愛い奴隷ちゃんが待っているんだよ!!」
きっとだが・・・待っていないと思うぞ。
「それでしたら、どうぞゆっくりしていってください。この屋敷で今夜はお二人の歓迎式を開きますから。」
「おお!!歓迎してくれるのか??やったな!!恵!!」
大きな屋敷の前で小太りのおっさんに手を振って別れる俺達。このデカイ街でちゃんとここに戻ってくることができるのか・・・。それが一番心配だ。