アミスタの怒り
「じゃぁ、残してきた4体の魔物との関係は?」
「なんと言えばいいんでしょうか?あの者達は私の敵です。私達の国を狙う化物たちです。」
同じレベル帯の魔物を化物というアミスタ。
君も相当レベル高いよ。
「同じくらいの強さなのに何で化物というの?負けないでしょ?一対一なら。」
横に首を振るアミスタ。
「経験が違います。私はあの者達に比べると若いから・・・。」
アミスタが悔しそうな顔をして話し続ける。
「私は小さい頃、飢えと貧困で苦しむただの子供でした。そこにある日、救世主が現れたんです。そのものは私達を見て食べ物と知識、そして戦う力を与えてくれました。それを持たない他の子供だけの集落は搾取され続け、あるところは滅び、あるところは奴隷としてすべての子供が捕らえられるというひどい有り様でした。」
昔を思い出して涙を流し始める。
「その救世主は近くの集落に居る子どもたちも助け始めたんです。そして大きな国を作りました。ただ、その国の収入が盗みによるものしかなく、生産も、農耕も出来ない脆弱な国ですけど。それでもすべての国に入り込み、すべての国から盗みを行う盗賊の国として他の国に認識されるようになるまでそれほど時間はかかりませんでした。」
少し嬉しそうな顔をする。
「少しずつ力をつけていった私達は救世主とともに戦い続け、今までになかった生産能力、農耕能力、そして外交もできるようになり、本当の国として認められそうになりました。」
「やっと、もうすぐ、どこの国からも国として認められて同じ立場に経つという段階で救世主がいきなりいなくなったんです。その大きな力を我々が失ったのを知った他の国は、一斉に攻めてきました。それを私達は必死になって撃退し続けたんです。」
「そのいなくなった救世主がジュディ老師だったんだね?」
「・・・ええ。」
「恨んでいるの?」
俺を見て怒りをあらわにする。
「当たり前でしょう!!何であの重要な場面でいなくなるの?もう少しで、もう少しで全てがうまく行ったのに!!そのせいで沢山の仲間を失ったのよ?ひどい殺され方をしたものもいっぱい居るのよ?」
涙を流して俺に怒りをぶつける。
「ジュディ老師はお兄さんたちを探していたんだと思うからね。もしかしたらその時、何かの情報を手にしたのかも?すぐ帰ってくるつもりだったかも知れないじゃない?その時、何があって国を離れたのかを話し合うべきじゃないかな?」
「それでも・・・」
怒りの矛先をどこに向けていいかわからなくなって、湯船に座り込んで顔をお湯につけている。
「ジュディ老師は中途半端に投げ出すような人じゃないからな〜。何かあったんだと思うよ?話をしてみようよ?」
「恵様も横にいてくれますか?」
「そうだね。話しやすいなら俺も居るよ。」
真っ赤な顔をしてすこしだけ笑うアミスタ。こう見ると凄く幼く見える。
「じゃぁ早速行こうか?」
「え??心の準備は?」
「そういうのは要らないよ。ぶっつけ本番。気持ちを素直にぶつけるにはそのほうがいいよ。」
俺達は風呂から出て服を着る。そして訓練部屋へ。
「もう・・・やめてくれ・・・。」
4体の魔物が倒れて全く動かない。
その姿にレイがキレて頭を蹴る。
「だらしない。それぞれの国の王だろ?メグミのほうがなんぼか気合入ってるじゃない?」
「あらあら、恵さんを悪く云うのは許せませんね。あの人はこんなゴミと比べると泣きますよ?」
「恵はその程度で泣かないだろう?こいつらもう1000回位食ってもいいか?にゃはははは」
「食えばいいじゃない?こんなに弱いんなら統一してから出ればよかったわ。あ、あの時は誰かさんに飛ばされたんだったっけ?」
ジュディ老師が女の魔物の頭を踏んでグリグリしている。
ガチャ
俺が部屋に入ると全員がこっちを向く。4体の魔物が元気になるはずなのに死にかけている。
「恵よ!!このゴミと比べたら泣くのか?泣くのか??」
「へ?俺の話?何で俺が泣くの?また何かされるの?」
俺が身構えると横に居るアミスタが吹く。
「なんだ?この女・・・メグミの横に楽しそうに立ちやがって・・・。殺してやろうかしら?」
レイがジリジリとアミスタに近づく。
「別にいいでしょ?これから先君たちは俺の相手をできないんだし、この子に全て押し付けたんだから。」
もじもじし始めるアミスタ。俺の話を聞いてものすごい落胆する4人。
「ごめんなさい」
「すみません」
「悪かった」
「申し訳ありません」
「許しません!!」
俺の一言に落ち込んでその場に座り込む4人。
「で、皆はレベル上がった?次の組と入れ替わるけどいい?」
俺が仲間たちに聞くと
「まってくれ!!」
こいつらには聞いていないんだけど何故か贄共が俺の問に答える。
「君たちには全く聞いていない。」
「何を・・・。貴様・・・この女どもの影に隠れていい気になりおって・・・。」
ゴン
ゴン
俺の斧が戦闘の気配を察知してその場に現れる。超特大の特性の斧。
「全員退避。これから俺はこいつらの相手をするから。」
俺の言葉にレベル有り組は奇声を発して扉に向かって走り始める。
レイとミシュラ、ジュディ老師、マッキーは一斉に大きく後退してこの部屋の隅にそれぞれが陣取る。
「何??」
アミスタは理解できていない。俺がどうするのかを。
「アミスタ・・・。俺の強さ見たいんでしょう?見せてあげるから・・・マッキー・・・この子を守って・・・。」
「守ってやれば私はあの3人とは違う扱いをしてくれるのか?」
マッキーが俺に行為をしないというのを撤回しろとそれとなく云う。
「いいよ。それで。」
「「「じゃぁ、私が・・・」」」
アミスタを獲り合う4人。両手両足を引っ張られているアミスタ。多分あのままでは千切れて死ぬかな?
「もう!!邪魔!!がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺は狂戦士になる。目の前にある大きな斧を拾って4体の魔物と対峙する。
「なんだ??それで俺達を脅しているつもりか??そんな大物、お前の体じゃ振り回せんだろ?馬鹿じゃないのか?こいつ。」
「正気を失って我々を相手する?アホか?」
「女の影に隠れるゴミが・・・。調子にのりおって・・・。」
「ゴミの分際で・・・」
バチャ
ビチャ
グチャ
バシャ!!
あっという間に目の前の魔物がひき肉になる。
「ミンチ・・・ミンチ・・・ハンバーグ・・・ははははは」
俺はすべてを本能に任せる。