スキルの奪取
「お〜〜〜い、ミシュラ〜??今いいか??」
マッキーがノックもせずにミシュラの部屋に入っていく。
そこはノックしとかないとね。親しき仲にも礼儀ありでしょ?
「あらあら、マッキーさん、それに恵さん、何かしら?」
おチビ二人に同時に乳をやっているところだった。上の服を脱いでいる状態だ。
俺は出たほうがいいのか?
「恵さんは見慣れてるでしょう?気にしなくても結構ですよ〜。」
相変わらず人の心の中を見て答えてくれる。口にせずとも伝わるから楽といえば楽だな。
「なぁ、ミシュラ、これどうしたらいいんだ?」
全く説明をせずにザンダースにもらったスキルの赤い宝石のようなものをミシュラに見せる。
一応説明はしてあげるべきでは?
「あぁ〜、久しぶりに見ますね〜。スキル玉ではないですか?どこで手に入れたんですか?」
マッキーは人からもらったとだけ言う。
「まぁ、奪いとったんですね〜。スキル奪取は昔流行ったんですよね〜。」
笑顔で言っている。それ・・・以前聞いたやつだよね?殺して奪うっていう・・・。アレを笑顔で話をするの??
「奪ってないぞ。もらったんだぞ。なんで奪うんだ?奪えるのか??」
「ええ、奪えますよ。例えば恵さんのスキルを奪おうと思えば殺して胸開いて取ってしまえばいいんですよ。ただ、不死でもない限り、奪われたほうが死にますけどね。奪うときのコツは魂が抜けてしまう前に奪って自分の体に入れることです。それはもらったと言っていますが・・・、ということは相手は生きているんですよね?どうすれば生きたまま取り出せるんですか?」
「その前にさ、魂が抜けてからだとスキルはどうなるの?」
マッキーが俺も持っていた疑問を聞いくれる。
「魂とともにどこかに行ってしまいますわ。どこかはわかりませんが・・・。」
「じゃぁパパッとやらんとダメってことだな。」
「そういうことです。もたもた手間取っていると失敗しますわね〜。」
へぇぇと感心しているマッキー。マッキーは結構残酷な話も普通に聞き入る。何に対しても興味を持つ子供のような心の持ち主だ。
「で、これ・・・どうすればいいんだ?使えるようにしたいんだけど。」
「その前に・・・そのスキル・・・どんなものですか?」
ミシュラはそこに興味があるみたいだ。
「これはな・・・」
マッキーがミシュラに説明している。
「なぁ、恵、範囲内の全てだったっけ?敵だけだったっけ?」
あぁ、そこ大事だよね・・・。敵なら躊躇なく使えるけど、仲間諸共だと危険だもんね。
「デュラン・・・記録あるよね?マッキーに見せてあげて。」
頭の中でザンダーストの面会をリプレイしているところだろう。マッキーは泣き始める。
辛いことを思い出させてしまったみたいだ。
「『自分の示した範囲の中の敵の力を大幅に削ぐことができる。』って言っているな・・・。」
顔をグシグシと拭きながらマッキーがミシュラに話す。
「では、マッキーさん、このスキルはあなたが持っていても意味が無いですね。レベル無しは・・・レベルなしですから、影響を受けないでしょう。無いから敵も影響を受けないということです。レベルの有るものは無いものよりも必ず弱いですからね。」
「おぉ、なるほどな・・・。さすがミシュラだな。最古の神々だけのことはある。」
感心しているマッキーの言葉に目を見開くミシュラ。
「マッキーさん・・・なぜそれを?」
「へ?私何か変なこと言ったか?」
「先ほど・・・私のことを最古の神々と・・・。」
ミシュラが震えている。
「はぁ?ミシュラ・・・お前・・・もしかして隠しているつもりなのか?多分皆知ってるぞ。」
「えええ????」
ミシュラがふらふらし始める。顔色もものすご〜〜〜く悪くなっている。
「おかしいです・・・。誰も知らないはずです・・・。なぜわかるんですか?」
「反対に聞くけど、なんで知らないと思っているんだ?」
「えっと・・・」
聞かれて気付く、そう言えばなぜ知らないと思っているんだ??
「お前のその強さを見て普通の人と思うやつを見てみたいけどな。そんなバカがいたら指さして笑ってやるぞ?」
「ハウンね!!ハウンがバラしたのね!!!」
いきなり立ち上がって燃え上がるミシュラを俺がすぐに抱きしめて抑えこむ。
「ミシュラ、ハウンは絶対にない!!あの子はミシュラの話をするわけがない。だから抑えて!!」
「・・・はい・・・わかってます。言いたかっただけですから・・・。」
マッキーがおチビを落とさずにキャッチしてくれていたおかげで怪我させずにすんだ。
お乳をやっているんだから、いきなりおチビから手を放して立ち上がれば落ちるよ。
「ありがとうございます。マッキーさん。で、いつ気づいたんですか?」
おチビ二人を受け取りながら聞く。
「えっと、いつからだろ?結構前だぞ、気づいたのは。会ってすぐってわけではないけどな。って、いやいや、そう言うんじゃなくて!!スキルの話だな!!これ誰に持たせると効果的だと思う?」
思いっきり話を戻すマッキー。俺もそのほうがいいと思う。
話が替わって残念そうに
「・・・そうですね・・・レベルが極端に少ないもののほうがいいと思います。例えば、レベルが100ある人を選んだとして、レベル100分のポイント差でやられる可能性が高くなりますけど、レベルが3だと、差がそれほどないので頑張れば逃げることも、抑えこむくらいのことをすることも出来ます。」
「ほうほう・・・」
マッキーが感心しながら聞いている。ミシュラの言うことは確かに合っている。レベルがあればあるほどポイント差がデカイ。
「じゃぁ、クロエだな。」
マッキーがすぐに誰に渡すか決める。
「クロエ〜〜!!」
「は〜い!」
俺の声にすぐに駆けつけるクロエ。
「なぁ、クロエ、君って俺の声に反応してすぐに俺のところに来るけど、それって何かのスキル?」
「あ、はい。これは召使の職業のスキルです。恵様がこの屋敷内でどこで声を上げてもどこに居るかすぐにわかります。というより勝手にそこに走って行ってしまいます。そして命令されると走ってそれを遂行します。」
あぁ、それでいつも走っているのか・・・。
「歩いてできないの?」
「出来ません!!」
ものすごい胸を張って威張って言う。
「命令されたものをすぐに持ってきたり、連れてきて欲しい人をすぐに連れてくるのもスキルなの?」
「はい、それも付随しているものです。命令されたものがどこにあるかすぐにわかります。ただ・・・この屋敷内という限定ですけど・・・。」
いろんなスキルがあるな・・・。
「で、呼びだした理由は、君にスキルを持ってもらいたいんだ。」
マッキーがクロエにスキル玉を渡す。
「なんですか?これ・・・。」
まぁそう思うよね。全く説明ないし・・・。
「ミシュラ、スキルの相性とかで持っているスキルの何かしら影響あるとかはないの?」
クロエの持つ召使の能力を害するようでは意味がない。
「クロエのスキルは固有のものではないでしょう?だから大丈夫でしょう。まぁやってみないとわからないっていうのはありますわね〜。」
怖いことを言うけど、いざとなれば俺がなんとかすればいいわけだし。
「というわけで行きますわよ〜。」
え??何を??と思う間もなくクロエの手に持っていたスキル玉をミシュラが摘んで口に入れる。
びっくりしたクロエだが、そのまま飲み込んでしまう。
「ゲホッ!!何をするんですか??」
「じゃぁ封印解くからね。」
俺が願いで封印をとく。
「さぁ、クロエ、スキルを発動してみて!!」
「え?どうやって??」
まずそこ??
ミシュラが笑顔で説明しながら発動させる。
「で、どう?」
「ミシュラ・・・敵がいないぞ・・・。」
「まぁ〜!!失敗ですね〜。」
ものすごい笑い声を発するマッキーとミシュラ。なんでそこまで大笑いするの??
「で、どうする?敵がいないと話しにならないよ。」
「壷使えばいいんじゃないかしら?」
あぁ、あの壷ね・・・。