禍々しい
「じゃぁ、この世界にいるものという指定ならどう?」
「そうですね・・・この世界の真の勇者の数だけで留まると思います。ただ・・・死んでいるものがいる場合は数が上回る可能性も。」
「あぁ〜、やばいかも・・・やっちゃんが言うには俺が何人か殺しているらしいし・・・。」
「恵様・・・真の勇者を殺したんですか?・・・そうですか・・・」
「え??何その落胆ぶりは??なにかあるの?何人殺したかわからないけど・・・それに俺は1人生み出したよ??とびっきりの強さの!!それでチャラじゃない?」
はぁぁとため息をつくデュオーン。とても不安なんだけど・・・。
「恵様・・・称号を確認してください・・・。ダークな感じのものが隠れていませんか?」
「へ?隠れる??なんで??どこに??」
俺はノートを見る。これと言って変な称号はない。それにいつもどおり何も書いていない。
「明かり落としてくださいますか?」
「クロエ!明かり落として!!」
ハ〜〜イという元気な返事と共に明かりが落ちる。
そうすると・・・
「恵よ・・・なんか浮かんできたぞ・・・。」
「「「・・・」」」
この場にいる俺とマッキー、デュオーンが黙ってしまう。
シャロンまで覗きこんで黙ってしまった。
「なに・・・この禍々しいもの・・・。」
『真の闇の王』
暗い関わらず確認できる漆黒の炎で書かれた文字。
「なんで暗闇じゃないと見えないの?」
「わかりませんが、私にもあります。」
自分のステータスを見せる魔法を唱えるデュオーン。そこには・・・
『究極の闇の女王』
「デュオーン・・・どれだけ殺せばこの称号になるの?」
「100名は殺していると思います。」
「うわ・・・真の勇者キラーだな・・・。あんなに獣じゃどうしようもない真の勇者をどう殺すんだ?」
マッキーが恐ろしい質問をする。
「簡単なことです。獣にならなければいい。なると全く刃が立たないでしょう?そうならないように普段の姿で戦えばいいのですよ。」
普通に教えるデュオーン。
「なるほど・・・やってみるか・・・。」
「しないで!!」
俺の涙目の顔は見えないと思うがちょっと声が震えているはずだ。
「クロエ、明かりつけて・・・。」
明るくなると俺のノートにはその禍々しい文字が見えなくなる。
「しかしここにいる真の勇者である2人は恐ろしく強いですよ。私でもどうにもなりません。あの強さは・・・どの世界でもあったことないですね・・・。」
「じゃぁこの称号はもらえないか?やっちゃんかメイリーン単体なら何とかなりそうなんだけどな・・・。」
「え?マッキーさんはそんなに強いんですか?」
「マッキーは強いよ。やっちゃんやメイリーンなら勝てると思う。ただね・・・コントロールできないんだよね・・・。」
俺の言葉にマッキーは俯きながら頷く。
「それならば、私がコントロールできるようにしましょう。」
席を立ち上がりながらマッキーの手を引っ張る。
「え??いいのか??そんなことできるようになるのか?」
「ええ、あなたなら必ずできるはずです。もしかしたらそれより先があるかも・・・。」
「先?」
「ええ。」
「なにか知ってるの??」
俺の問に首を横に振る。
「恵!!ちょっと訓練部屋に行ってくる。誰も近づけないでくれよ。食っちまうと困るからな!!」
2人で仲良く手を繋いで走っていく。
「大丈夫ですか?あの人を信じて・・・。」
「ああ。彼女は何かしら俺に役立つところを見せたいんだよ。まだ来て間もないから。俺が大事にしているマッキーをどうにかしたいと思っているんだろう。」
「なんか・・・羨ましい・・・。」
シャロンが少し悲しい顔をする。
俺達は飯を食べている。
レベル有りの皆は訓練部屋を閉めだされてここで飯を食っている。
黙々と食事をし続ける。食べないと強くは、なれないもんね。
「なんか静かね。お通夜?」
やっちゃんが現れる。お通夜って・・・確かに暗い感じがするけど・・・。
「あれ?マッキーは?」
レイも現れる。ハウンを肩に担いで。
「それよりハウンはなんで目を覚ましていないの?」
「ネボスケだから?」
目を覚ましていないハウンを椅子に座らせて、召使に食事を用意してもらう。
「後でさ、ミシュラの部屋に集合できる?俺のことでものすごく変なことに気付かされたから。」
「「え?なになに??」」
やっちゃんとレイが食いつく。
「いや、レベルのない人を集めてちょっと話しておこうと思って。皆に声を掛けておいて。」
俺は席を立ち自室に帰る。
俺はベッドに寝転がりノートを手にする。
「・・・なんだ?この称号・・・。全然気づかなかった・・・。」
俺は変な汗が吹き出ている。なんでこんな禍々しいものが?