山の神々
「ディーシャ、案内お願い。」
「わかった。・・・ところでさっきのは?」
ディーシャは気づいていない。自分が殺されたこと、この街が一度滅んだことに。
「さっきのはうちの守護神だ。」
「よくわからんがそうか・・・。」
俺達の前を歩くディーシャ。街の人々が挨拶をしている。きっと人望があるのだろう。
俺達には・・・存在を感じていないのかというくらいの扱いだな・・・。
「なぁディーシャよ、ここのものは挨拶もできんのか?人としてダメなタイプだな。」
マッキーが世間一般の話をする。
「外の者に異常に警戒しているだけだ。ダメというわけではない。かれこれ・・・数百年は新たな住人が入ってきていない。そうなれば侵入者に対して何かしら思うのも仕方あるまい。」
「はいはい。あんたが連れて歩いてるのに無視はないだろう?なぁなぁ。」
マッキーがしつこく纏わりつく。それをものすごい怪訝そうな顔であしらうディーシャ。
マッキーはそう扱われると燃えるタイプだから面倒なことになるよ・・・。
「この階段を登り切った所にある館に山の神々はいる。」
ものすごい階段の数・・・。コレを登れと??以前の俺ならきっと挫折しているだろう。
指差す先には霞がかかって館なんか見えない。
「じゃぁ登ろうか。」
「そうしてくれ。私は先に行く。色々あるからな。」
ディーシャが空を飛んで移動する体制にはいる。
「はい!!この瞬間を待ってました〜。」
マッキーがディーシャの背中に掴まって脚を胴に回す。
「あ!こら!!離せ!!まっすぐ飛べないだろう?」
ふらふらしながら上に上がっていく2人。放置していても大丈夫かな?
「じゃぁ登ろうか・・・。」
ミシュラが俺を抱きかかえる。
ハウンがレイを抱きかかえる。
やっちゃんとメイリーンは自分の持っている剣に乗る。
「え?どうするの??」
俺が驚いて聞くと
「真の勇者ってカッコイイんだよ?剣に乗って飛べるんだよ・・・。私も真の勇者になりたい!!メグミ・・・いいかな?」
「え??デュランでってこと?」
頷くレイ。
『なれるの?』
『もしかして我を愚弄しているのか?なれないわけがなかろう・・・。その程度・・・あれ??』
『なれないんだね・・・。』
『いや・・・ミューがいるから大丈夫だぞ・・・。』
『じゃぁやってよ!!早く!!』
レイが割り込んでくる。
『その願い叶えてやろう。』
可愛い声が聞こえる。デュランではなくミューがレイの願いに答える。滅茶苦茶声が可愛い。
「ハウン!!わたしを下ろして!!剣に乗って移動してやるんだから!!」
階段の上に飛び降り、剣の上に乗ってやっちゃんたちと同じ格好をする。
「・・・」
「飛ばないよ?」
涙目のレイ。それを見て笑い出すメイリーン。それを聞いて特大の火炎をとばすレイ。
「あぶ!何するんですか!!当たったら墜落しますよ!!」
「笑ってないで飛び方教えなさいよ!!」
「はいはい・・・。」
あれこれ言って構えてやってるけど・・・進歩なし!!もうハウンに抱きかかえられて飛んでいこうよ!!
「レイ・・・先に行くわよ〜。山の神々は死にかけているそうだから〜。」
俺とミシュラは先に飛んで移動する。やっちゃんも俺達に付いて来る。
ハウンは手を振っているところを見ると、レイに付き合うようだ。
あっという間に着く。飛ぶって素晴らしいな・・・。
「もう着きましたか?聞いていたより早いのでびっくりしました。」
「俺は恵です。あなたは?」
「私は山の神々であるデルサ様の世話をしている、イルミと申します。さぁ中へどうぞ。」
館の中へ通される。まるで寺院のようだな。
「こちらがデルサ様の部屋です。どうぞ・・・」
ノックして俺達を通す。
大きなベッドにものすごい大きな男が寝ている。ジルの大きさにワイド感を出した感じだ。
縦にも横にもデカイ。だが太ているという感じではなく筋肉が凄いのだ。
「グフグフ・・・。話は聞いている。あんたが・・・恵という男か?」
咳き込みながらゆっくりと状態を起こす大男。
「はい。初めまして。吉永恵と申します。あなたは今・・・呪いにかかっていると。」
「ああ、最近ジュエルの野郎がいきなり来てな。力を貸せと言ってやがったが・・・アレは・・・もう昔のアイツじゃない。だから断った。あんな目をしたものに力を貸せば必ず無垢の民に災いが降ってくるだろう。」
体中からうねうねと呪いの縄が躍り出ている。それをぶちぶち千切りながら話をするデルサ。
「で、俺を見てどうなる?あんたは俺から何を感じる。」
「あなたがディーシャの生みの親なんですよね?」
「ああ。あの子はとてもいい子だ。それが?」
「教育も?」
「ある程度はな。人々は神々の下にあらず。同等であるといつも言っておいた。そして子どもたちは未来への光だとも。俺にとってディーシャがそうであるようにな。子は・・・何よりも大事な存在なんだよ。それ以外は何も教えていない。教えるということは押し付けるということにもなりかねないからな。まぁ人族にそれがわかるほど長く生きているものはいないだろうが・・・。」
「で、ディーシャは?」
「あの子は・・・私の後ろで控えている。」
「ディーシャ!!山の神々は素晴らしい人だな!!」
『デュラン!!』
山の神々の体からうねうねと出ていた呪いの縄が消えていく。ボロボロと灰のように色を変えて消えていく。そしてそれと同時に傷が塞がっていく。
「よっこらしょ・・・。ふぅ。で、後ろにいる神々殺しの大罪人が何のようだ。」
「ふふふふふ。私が大罪人なら神々は人族を大量に殺した大罪人ですね〜。」
ミシュラが笑っているがものすごい殺気を放っている。
「俺の聞いた話では神々はそれほど仲がいい訳じゃないんでしょ?」
「ええ。今でこそ、遊んでいますけどね〜。」
「人族にくっついて何を企んでいる?」
「間違わないでね〜。私は一緒にいたい方と居るだけ〜。神々にそう思わせるほど面白い存在が居なかっただけよ〜。」
「ふはははは。確かに面白い奴は居ないな。バカばかりだ。」
「熱血バカにバカと言われると癪ね。」
ハウンが部屋に入ってくる。
「おお、これはこれは・・・癇癪女王様ではないか。」
真っ赤になるハウン。癇癪女王様って・・・。
「あなた!!そのアダ名・・・なんでここで言うのよ!!」
「うはははははは、あんたの側に立てば、ひどい目に会うと皆怖がっていたぞ。」
「あぁぁぁ!!聞いちゃダメですよ〜〜!!恵様〜〜!!」
耳に指を突っ込んで俺の聴覚を奪うハウン。
「恵様??あんたが人族を様呼びで慕っているのか?フハハハ!!そうかそうか!変わるもんだな!!」
腹を抱えて笑う山の神々。
泣きまくるハウン。
「ハウン・・・過去は気にしていないから泣かないで。」
頭を撫でると嬉しそうな顔をして涙を拭っている。
「ほう、人族にここまで寛大な男がいるとはな・・・。」
「あなたもこっちにつかない?ジュエルが無茶苦茶しているのよ。それをなんとかして止めたいのよ。神々はハウン以外にも恵さんに付いているものがいるわよ〜。」
「ほうほう、神々が・・・」
「あと・・・神もいるわよ・・・。」
ミシュラが嫌悪の顔をする。ふと見るとハウンも同じ顔をしている。何なのそのへんな顔・・・。
「なに??神が??本当か??」
俺の方を見て驚く。
「ここに呼ぶ?」
「やめておいたほうがいいと思いますわ。アレを見て・・・この男がどう思うか・・・。」
「ええ、ミシュラの言うとおりです。あの姿を見て・・・耐えられるかどうか・・・。」
「え??なんだその言い方??どういうことだ?」
山の神々であるデルサがとても気にしている。