成れの果て
騒動に皆が集める。
「で、この子は回復してるけど、どういうことなの?」
ディーシャが何故か怒っている。
「あんた・・・なんでマッキーを治療していなかったんだ?」
俺の顔を見て驚く。そりゃぁそうだろう。俺は今怒っているんだから。
マッキーは治療をされるどころか布団すらかぶせてもらってなかった。
そんな治療があるはずない。
「ここはね!!神聖な場所なのよ!!人族なら放置すれば勝手に治るの。布団を被せていないのは神聖な空気に晒すため。普通ならモノの数分で復活していたはずよ。なぜすぐに回復しないか見に来たところなの!!」
ディーシャは疑われて少し機嫌が悪い。俺の怒りはまだ収まっていない、それが本当かどうかわからないからだ。
「恵様・・・。ここにいれば確かに傷は治ります。神聖な空気というより傷を治す特別な何かが施されているようです。ほら・・・」
メイリーンは自分の傷ついた体を見せると確かにじわじわ超回復のないものにしてはおかしなスピードで傷が治っていく。
「この子は何者なの?なぜ回復しないの?しかもさっきの姿・・・。伝承にある魔物でしょ?」
「「「伝承の魔物?」」」
「あなた達は知らないのね・・・。この世界とは別の世界にいる漆黒の魔物・・・。すべてを食らう邪悪な存在。」
「はぁ?何だそれ??違う世界??私達の世界にそんなものいないぞ?」
「何を言っているの?この世界の他にいくつも世界が存在するのよ。あなた達旅人のいる世界とこの世界だけってことじゃないのよ!!」
はぁぁ、ここに来て世界を広げるか?収集つかないだろう?山の神々も仲間に引き入れようなんて思うんじゃなかった・・・。
「じゃぁ私はその違う世界から来たのか?なんでやねん!!」
一人で突っ込んでいるマッキーをよそにディーシャは話を続ける。
「あなたの姿は漆黒の多尾獣族の一種。現れると必ずその世界は滅びるわ。今・・・この世界はあなたの存在のせいで滅びに瀕しているのよ。あなたは封印されないといけない存在なの。なぜ普通に人と一緒に居るの?」
「大丈夫でしょ?私達がいるし。マッキーの獣なんて・・・スライム以下よ。」
「真の勇者ね・・・。そりゃぁそうでしょう。そのための存在なんですもの。この世界には必ずある一定数の真の勇者が生まれる。それ・・・」
「お前誰?」
俺が話を遮る。
「「「「「え?」」」」」
全員が俺の方を向く。
「お前誰??ディーシャじゃないよね。ナニモノ?」
「ふふふ・・・はははははははは・・・なぜわかった・・・。」
顔つきと雰囲気が変わる。
「いや・・・話し方かな?で、ナニモノ??質問に答えてやったんだから答えろよ?」
全員が戦闘態勢に入る。
「はははははは・・・さすがにコレでは勝ち目がないな・・・。さてどうしたものか・・・。」
「このメンツを前に全く動じないってことは強いんじゃない?レベルもないし・・・。」
「そうね・・・。気を引き締めて相手したほうがいいんじゃない?」
部外者でレベルのないものを前にして全く動じない。それはいいとして緊張感があまり伝わってこない。
これは・・・ヤバい感じだな。
「ディーシャは?」
「ふふふふふ・・・」
外を指差すディーシャの偽物。
「見に行くなよ・・・。そっちに向いた瞬間に殺されるぞ・・・。」
マッキーがものすごい形相で偽物を凝視している。
「ふふふふふ・・・気づいたの?」
「ああ。お前・・・私と同じだろ?」
その言葉と同時にやっちゃんとメイリーンが切り刻む。そしてディーシャの偽物はその場に倒れて砕け散り始める。
「マッキー・・・。こいつは・・・。」
「ああ、私の成れの果てだ・・・。」
泣きながら俺にもたれかかるマッキー。そしてそのまま気を失う。
俺はマッキーを抱きかかえて外に出るとそこには・・・
「これは??」
真っ黒に焦げた人々がたくさん居る。街も焼け野原、というよりパラパラと砕ける物体になっている。
「まさか・・・さっきのヤツのせいか?」
「多分・・・そうでしょうね〜。」
『デュラン・・・元に戻してくれ。』
『その願い叶えてやろう・・・。』
時間が戻るように全てが復元される。そしてそのもとに戻るにはあのマッキーの言う『成れの果て』までも。
「はい。元に戻ったところであんたは切り刻み決定なのよ。」
そのセリフを言い終わる頃には消滅してしまう。
『さっきのやつの話だけを聞きたい。どうにか出来ないか?』
『出来なくはない。だが危険だ。さっきマッキー殿が言っていただろう?成れの果てと・・・。アレはああなる可能性があるということだ。どうしてああなるかまではまだわかっていない。だからマッキー殿抜きで話をするなら・・・そういう条件でなら聞こう・・・。』
『わかった・・・マッキーを隔離してくれ。それから俺の願いを聞いてくれ。』
『その願い叶えてやろう・・・。』