暴露の阻止
「じゃぁ言います!!しっかり聞いてください!!」
「ダメです!!恵さん!!本当に言ってしまっていいんですか?言って、皆の記憶を奪ってどうするんですか?」
「・・・」
「黙ってないで何とか言ってください!恵さん!!一人でどうするんですか?あなたは今回はうまく行きそうだと言っていたじゃないですか?それを捨ててしまうんですか??」
「ねぇ、何言ってんの?」
やっちゃんがシャロンの方を掴んで話を遮る。
「あなたさっきから分け判らないわよ?何を言ってるの??何を知っているの?」
「恵さんは・・・恵さんは・・・ずっとやり直してるんです!!」
シャロンが泣き出す。ものすごい涙を流して泣き出す。それを見て皆黙ってしまう。
「恵さんに暴露させません!!それをしてしまえば・・・皆の記憶を奪って一人でどうにかしようとします。一人でないとしても、仲間として参加できるのは私とミシュラくらいです。それでうまくいくんですか?」
「ダメだろうね・・・。」
「ならなんで??こんな道を選ぶんですか?やっとうまくいくかもしれないというところまで来たのに・・・。」
「シャロン・・・。もしかして恵様がやり直しているっていうのは・・・今の生活?」
「そうです。ずっとやり直しているんです。何回も何回も・・・。もう数えきれないほど・・・。」
「シャロン・・・。何で君が言うの?」
「私が言えば、恵さんが暴露したことにならない!!この空間の力を使わなくて済むから!!何でこんな空間を作るんですか?出るときに記憶を奪うように細工がしてあるじゃないですか!!」
その言葉に全員が顔を見合わせて驚く。
「やっぱりわかってたんだね。そうだよ。今は知るには早すぎるんだ・・・。それはわかっている。あまりに早い段階で知れてしまうと漏れるんだよ。」
「じゃぁ、その記憶だけ奪えばいいじゃないですか!!何で皆をそんなふうに・・・」
顔を手で覆ってしゃがみ込んでしまう。シャロンは言葉に詰まってもう話せないでいる。
「殺されて記憶を使われてしまうんだ・・・。それはもう一度踏んでいるんだよ。あの時はハウンが人形にされていた・・・。今思い出しても・・・だからそれはダメなんだよ。」
「私が皆に当たり散らしたからですか??何も知らないで和気あいあいといつまで経っても劇的な飛躍を望みもしない!!だからイライラしてしまったから・・・。そのせいで恵さんは・・・。」
「やっぱりそうだったんだね・・・。シャロンは俺がやり直す時間を知っているんだね。」
「はい・・・知っています。それがもうすぐ来ます。だから焦っているのに・・・恵さんはそれも一切出さない。」
「強制は出来ないよ。」
「じゃぁもうひとつ聞いていいですか??何で一人でどんどん似非神々を狩り続けてるんですか?誰にも知られず、黙ってずっと狩っているんですか?」
「それも知ってたの?」
シャロンが俺をずっと睨むように見ている。
「ミシュラが言ってたじゃないですか!!もう少し仲間を頼ったらいいのでは?と。荷物を私達にあずけて欲しいって!!」
「似非神々はレベルは高くなくても危険なんだよ。変わったスキルを持ってこの国に近づいてくる。いくら強くても、いいようにされる可能性が高い。」
「そんな道を歩んだんですか?」
「ああ・・・」
俺は思い出す。色々なバージョン、色々な道、色々な結果・・・。どれもバッドエンドというにふさわしい。
「ねぇメグミ・・・話してよ・・・。記憶消さなくてもいいから。私達が気をつければいいんでしょ?」
レイが泣きながら俺に話しかけてくる。
「デュラン!!この空間を解除!!そしてそれと同時に違う空間を作って俺達を閉じ籠めてくれ!!絶対に外から干渉できないように!!」
俺達を閉じ込めていた空間の雰囲気が変わる。禍々しさがなくなり、ものすごく静かな空間に。
「シャロン・・・泣き止んで・・・。君の気持ちで少し考えを変えたから。」
「ありがとうございます。」
俺は皆に話し始める。俺が今まで歩んだ地獄の経験を。