戦力のために
「私・・・訓練怖いです・・・。」
ミシュラがこれから先絶対口にしないであろう言葉を放つ。
「え?今なんて?」
ハウンが耳に手を当てて聞き返す。多分ここにいる皆その気持ちだろう。
「戦闘で初めて怖いと思いました。戦闘怖いです・・・。」
今までにないほど小さくなるミシュラ。以前も小さくなっていたが今は・・・5割ほどだ。
1mの人ってものすごく小さいのだ。
「じゃぁ誰と遊んでこれから先強くなるんだ?」
マッキーがエビフライを口に入れながらミシュラに話しかける。
その声にビクッと飛び上がってマッキーの方に振り向くミシュラ。
「あああ・・・マッキー様・・・そこにいらしたんですね・・・。」
「「「「「様?」」」」」
全員が耳を疑っている。
「俺の意見を聞いてくれるかな?」
皆が俺に注目する。なんか恥ずかしいな。
「ミシュラとマッキーはNGということでいいんじゃない?あと、マッキーの暴走時はすぐにやっちゃんとメイリーンに任せる。マッキーは暴走しないように訓練。それでどう??ミシュラもマッキー以外なら怖くないでしょ。」
俺の話にボムっと大きさが戻るミシュラ。ちょっと笑いそうになった。
「そうですね・・・。マッキー様以外でしたらいくらでも相手しますわ。マッキー様は本当に・・・勘弁してほしいわ。あんな化物・・・この世界にはいないと思いました。生まれて初めて恐怖というものに心囚われてしまいました。」
ミシュラが手で顔を覆って泣き始める。
「ミシュラがね〜。マッキーってそんなに手強いの?私達にとったらただのカモよ。こんな弱い魔物それこそいないわよ?スライム以下って感じ・・・。」
やっちゃんがマッキーの頭をペシペシ叩く。
「なんだよ!!普通に戦えば私とそれほど変わらんだろう?あの状態の時だけだろう?それは。」
「まぁそうだけど。」
「たしかにマッキー様はあの状態だと私達に何も出来ないままやられますもんね。何でですか?」
メイリーンが頭を傾げている。
「多分だけど、黒い霧の侵食を全く受け付けないからだろう。食えないから斬れもしないし、刺せもしない。ミシュラの防御力を軽々突破するから多分食いながら攻撃しているんだろうね。」
「その仮説はきっとあっているでしょう。さすが恵さん。」
ミシュラがすごい暗い顔で俺を褒めるけど・・・、そんなに落ち込まないで。
「真の勇者以外にとっては厄災ですよ。あの暴走状態で外にでも出られた日には・・・。世界が滅んでしまいますよ。封印したほうがいいですって!!こんな化物!!」
シャロンがものすごい拳を震わせながら力説している。仲の悪いジュディ老師も横で頷いている。
「お前が言うな!!規格外のぶっ飛び神々のくせに!!誰よりも常識はずれのお前が言うな!!」
「そうね〜。そこはマッキー様の意見に賛成ですわ。この子に言われたくないと思います。さて、マッキー様の存在は多分、意味があるのでしょう。神々が馬鹿をやり始めたからかしら?だから封印はダメだと思います。」
「ミシュラ・・・俺達みたいな存在が暴走しないようにすることができる奴っていないの?」
「あら、簡単なことを。デュラン殿に頼めばすむことですよ。なぜそうしないんですか?」
「う〜〜〜ん、やっぱり努力があったほうが良くない?」
「封印に努力は全く必要ないと思います。」
「封印じゃなくて、自分でコントロールしたいわけなんだけど。何でそんなに封印封印言うの?ダメって言ってたじゃない?」
「あぁ、すみません。自分より強い存在が現れてちょっと不安定に。封印がダメって言ったのは私でしたね・・・。この場で始末してしまいましょう。」
うわ〜〜〜、ミシュラがミシュラらしいこと言い出したけど、マッキーを殺そうとするとあれが出てくるよ?
「ミシュラ・・・。訓練部屋行こうか??」
マッキーはオデコに血管浮かせてミシュラにお誘いをかけている。
マッキーの一言で震えだすミシュラ。
「恵頼むわ。ミシュラと私をあそこに放り込んでくれ。食い尽くしてくるから。」
「ヒィィィぃぃ!!やめてくださいね!!絶対しないでくださいね!!恵さん!!私のこと愛しているんでしょう??」
俺の後ろに隠れてマッキーから逃れようとする。
「なんか面白いわね。今までにない反応。恵様、放り込みましょう。」
ハウンが凄い笑いながらミシュラを見ている。今まで散々な目にあってきたもんね。やり返しが出来てすごく嬉しそう。
「ハウン・・・覚えておきなさいよ〜〜!」
「マッキー!!怖いわ!!ミシュラをぶっ飛ばして!!」
3人でギャァギャァやりあっている。仕方ないので真の勇者組以外放り込んでおいた。
「キャァぁ!!恵さん!!恵さ〜〜〜〜ん。」
ミシュラの悲鳴が扉から漏れている。扉を消しておこう。
「さて、やっちゃん、メイリーン。この世界にまだ真の勇者はいる?」
「ええいるわよ。どうして??」
「そうだね。今のうちに確保するなり始末するなりしておかないと。」
「あなた・・・極悪人?一応真の勇者は正義の味方よ。殺したらそいつが所属する国と敵対するわ。」
やっちゃんがものすごい呆れた顔で俺をみている。
「まぁそんなこと言っても、何人かは恵くんが殺しているわよ。あとは・・・。探すしか無いんじゃない?マッキー呼びましょう。」
「え?マッキーは今、ミシュラをお仕置き中だと思うけど。」
「それは後でいいじゃない?今は探すのが優先なんでしょう?」
「面倒だね。デュランでいくわ。」
『デュラン・・・』
俺の目の前に3名の女性が・・・。
「女だけ?」
「あなたが男の真の勇者殺したんでしょう?」
「いや、覚えていない。」
「ちょっと!ここどこ?あなたは?」
目の前にいる女性たちが俺に向かって敵意の眼差しを送ってくる。
「俺は恵。この国の皇帝だよ。君たちは真の勇者?」
「ええ・・・。知っててここに呼び寄せたの?」
「そういうことだね。君たちには選択してもらおうと思ってね。」
俺の言葉にものすごい怪訝な顔をしている。
「何言ってるの??私達に勝てると思ってるの?」
剣を構えている。あぁ、そういう選択をするんだね?
「やっちゃん。この子らは死ぬけどいいよね?」
やっちゃんが首を横に振る。
その瞬間に3人を倒すメイリーン。レベル差は歴然だね。
「君たちには頑張って強くなってもらいたかったんだけどね・・・。この程度なら普通のマッキーの相手にならないだろう。だから野放しでいいか?」
「え?もしかしてマッキーのために?真の勇者を狩るつもりだったの??どれだけ愛されてんの?」
やっちゃんが呆れている。
「レベル・・・120,110,156・・・はっきり言って名前返上レベルですね・・・。」
悔しそうな顔をする真の勇者達。
「何よ!!レベルを隠す卑怯者のくせに!!堂々と戦いなさい。」
「だそうだけど?」
俺は訓練部屋に3人を放り込む。
そして俺もそこへ向かう。