単独行動
レイは寝込んでいるので久しぶりの単独行動。
俺だけなら人だかりは回避できる。なんせ、見た目はその辺のモブ。
モブで悪いか!!オール普通の俺はレイの伴侶なんだぞ〜〜!!
と言いたいが袋叩きに会うかもしれないので言わないでおく。
レイを宿屋に避難させてデュランに時間を動かし始めてもらう。
止まった世界を知るといかにこの世がうるさいか感じることができる。
さて、ギルドに行ってデッカイおっさんに話を聞きに行くか。
まさかあれほどレイが弱るとは思っていなかったんで、すっかり情報収集のことが頭から抜けていた。
さすがに貴族のことを嗅ぎまわるのは死にかねない行為なので、情報なくおいそれとはできない。
デッカイおっさんならきっといろいろ知っているだろう。
それにこうなった経緯も知りたい。
絶対おかしいのだ。
この速度でファンが増える事自体何か陰謀があるのでは??と思ってしまう。
と言っても、ファンを増やして何ができるのか?と思ってしまう部分もあるが。
それに会ったこともない貴族が何故レイのファンクラブに携わっているのか?その辺りもすごく気になる。
お金の匂いに鋭い人で金になる!!と思ってしまったのか?
それとも実はレイの知り合いです!!みたいな感じとか??
ありえないな・・・レイは魔族だ。貴族と知り合っているとは思えない。
だからこの線はないか??
そんなことをいろいろ思いながらもギルドに到着。
なんかすっごい慌ただしい。
「レイ様が置き手紙をしていなくなったぞ!!」
「いつ移動したんだ??」
「新手の神かくしではないのか??」
などなど怒号が響いている。
あれ??おかしいな??混乱することはないと踏んでいたんだけど。
そう思いながらギルドに入る。
その瞬間、デッカイおっさんが俺を見つけて突進してくるのか??という勢いで俺の前まで走ってくる。
「おぉぉぉぉぉぉ!!姐さんのご主人様!!姐さんが消えたんです!!どうなっているのか全くわかりません。申し訳ないです!!今、国の上の連中に話を付けにいこうかと思っていたところです。それでは行ってまいりますのでここでおま・・・」
なんかすごいややこしい事になりそうなので止めておこう。俺は手を前に出して話を止める。
「レイなら宿に行ったよ。疲れて寝ている。皆にばれないように魔法を使ったんだ。あそこで寝かしたままとは行かないからな。レイは今、体調が優れない。だからそっとしておいてやってくれ。」
俺の言葉を聞いてデッカイおっさんは両膝を着いて崩れる。
「良かった。姐さんになにかあったのかと・・・。」
デッカイおっさんなのに大声で泣き始める。暑苦しい男だな。
「みんな、レイ様は宿でお休みということだ。だから心配ない!!確かな情報だから皆落ち着くように!!」
混乱を収めるデッカイおっさん。泣きながらでも指示はしっかりしているな。
「あのさ、聞きたいんだけど、このファンクラブ、なんでこんなに急速にでかくなったの??
あと、誰が出資しているの??」
聞きたいことを簡素に聞いてみた。
「あの、それは企業秘密でして・・・。あと、出資者も大物だけに口外できないんですよ・・・。」
心底困っているのだろう、頭を掻きながら俺に説明する。
「その大物はレイのファンクラブの会員になってるの?」
これくらいなら答えられるだろうと聞いてみると
「それはもう!!会員証のナンバーも0ですから!!」
驚愕の事実、ナンバーに0なんてあるんだ!!
1をも超える脅威の数字!
レイの以前の名前もゼロ!!いや〜〜、偶然の一致とはこれいかに??
なんて言っている場合ではない。
ファンクラブの人々の尊敬を一心に集めるであろうナンバー0。
で、デッカイおっさんは何番なの??と疑問に思っていると
「ちなみに俺様、じゃなかった俺はナンバー1です!!」
誇らしげに胸を張って会員証を俺に見せるデッカイおっさん。
やっぱりな・・・そうだろうと思ったよ。
「まぁ俺は主だけどな!!」
胸を張ると
「そりゃいいっこなしでしょ?」
ちょっとしょげている。ごめん。悪かった。
「じゃぁさ、そのナンバー0の貴族に云っておいてよ、レイが会いたいって。」
「ちょっと待ってください!!なんで貴族なのを知っているんですか??」
あれ?俺そんなことうっかり言ったっけ?
「あ、いや、裏の情報屋がだね・・・」
魔王に聞いたとも言えないのでごまかしてみる。
「さすがご主人様ですね。感服いたします。それではそうお伝えします。多分、喜んで答えてくれると思いますよ。向こうの気持ちと一致すれば秘密にしなくてもいいはずですので。ちょっと待ってください!すぐに連絡します。」
電話もメールもSNSないのにどうやってそんなに早く連絡するの??なんて思っていると
「すごい勢いで返答していましたよ!!無論すぐにでも来てくれとのことです。」
偉い暇なのか??その貴族。すぐってなんだよ。こっちの都合はどうしてくれる??
そう思って怪訝な顔をすると
「姐さん、体調悪いんですよね。都合はどうしますか??」
「ちょっと聞いてくるよ。レイに。それまで待っててくれるかな??」
ギルドを出て足早に宿屋に行く。
『すぐに』とくるとは思わなかったな。
レイは今日は無理だろうな〜〜。いつなら行けそうかな??などと考えながら早足で歩くこと数分。
宿屋に着いた。
宿屋の周りには屈強そうな男がウロウロしている。もしかしてここに泊まっているのがバレているのか?
そう思いはするがそういうわけではなく多分すべての宿屋を調べているのだろう。
ちょっとしたストーカーだな。
そう思いながら、部屋に戻る。
レイはまだベッドで丸まっている。可哀想だな。
ベッドの縁に腰を下ろしてレイに小さい声で話しかける。
この声なら寝ていれば起きないだろう。
「レイ??レイ???大丈夫??貴族に会いに行くんだけど、いつがいい??今日はしんどいんだろ??
いつにする??」
布団からガバッと出てきて邪悪な顔を浮かべて
「今すぐ・・・」
こ、怖い・・・。何その顔芸。そんな顔できるんだ・・・。
般若の面顔負けの顔、綺麗な顔が台無しです。
そう思っているとスッと綺麗な顔に戻る。
「メグミに当たっても仕方ないもんね。」
俺の顔を見てにっこり笑ってくれた。
「そんな笑顔ごときでさっきの顔を忘れるんだったら相当馬鹿だな。」
冷たく言ってこっちを睨む田村さん。見てたんだ。
さっきまでコーヒー飲んでくつろいでただろ?
そう思いはするが口に出さずに出かける準備をする。いらぬトラブルはゴメンだ。
貴族のところにいくのだから一応綺麗な格好をしておかねば。
と思ったところで服がない。
それはきっと皆そうだろう。貴族に会うための服なんか持っているわけがない。
仕方なくいつもの装備で出かける。
ギルドの前ではデッカイおっさんが待っていた。
「姐さん!!お体は大丈夫ですか??」
気遣ってくれているのに
「・・・」
何も言わないレイ。だいぶ怒っているな。
「じゃ、じゃぁ馬車用意しますんで・・・」
察したのか逃げるように馬車の用意に走っていくデッカイおっさん。
そろそろ名前聞いておくか??聞いたっけ??まぁいいや!
そして馬車が来た。
その馬車に乗り込むレイと俺、そして田村さん。
あれ??なんでついてくるの??
そう思っていると
「危険なことになった時には人の手がいるでしょ?」
何があっても無理やりついてくる気らしい。
まぁいいか!レイだけとは言っていないんだし。
そして馬車は北門を出て北東の方へ走りだした。
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