魔族領にある大都市マイルーンにて
「やぁ兄さん。話があるって聞いたけど何?」
俺達の前で魔王の威厳を出すレイリー。
「俺がここに来たのは・・・」
レイリーに俺の屋敷で起こったことを簡単に説明して願いであそこに居る女性陣に気づかれず旅をし続けることを告げる。その中で訓練中にあった事故も一応伝えておいた。
「あぁ、あの爆発的な力はお母様だったんですね。まだあんな力を隠していたとは・・・。」
「レイリー・・・ミシュラはマジでヤバイよ。どうにか出来ない?」
「ええっと・・・それは俺のセリフかな?願いで何とか出来ないの?」
「ん〜〜〜、しないかな?そこまでしてしまうと面白くないと思うからね。自力で何とかしないと・・・。」
「いや〜〜、あれを身近で見て自力でどうにかしようと思う兄さんは・・・バカなの??」
バカまで言われる・・・。でも・・・バカなのか?
「恵のバカなのは今始まったことじゃないだろう?なぁレイリーよ。こいつの服がほしいんだよ。いいのない?」
いきなり話を変えるマッキー。
「え?そういやこの人は誰?」
「こいつはケイと言って、自称神だ。」
「自称じゃない!!本物の神だ!!」
「え〜??神って男だと思っていましたよ。まさか女の人だとは・・・。」
「あ、ごめん。性別は俺が変えたんだ。神のままだと連れ歩きにくいだろ?汚い酔っぱらいだったからそのままでもバレないかもしれないけどね。」
「汚い言うな!」
怒っている怒っている。美女になったからイラッとこないな。
「服なら・・・軍服でいい?」
「「ダメ」」
マッキーとケイが声を合わせて拒否している。贅沢言うんじゃない!
「街を歩きまわっていいか?」
「いいですよ。ただ・・・」
「ただなに??」
「いやいや、何もないです。」
プルプル首を振るレイリー。滅茶苦茶気になる・・・。それともレイリー特有の罠か?
「思いの外・・・凄い都会だな・・・。」
俺達は魔族領に来て初めて大きな街に到着する。いつもはレイリーの屋敷というか城で生活してきた。だから大きな街があることを知らないままだった。
俺達が街を徘徊していると見たことある顔が・・・
「あ!!あれは!!・・・こんな所にいたのか・・・。」
向こうは俺に気づいていない。なぜなら俺は俺を認識できるように、この男にはまだ許可を出していないからだ。
「捕まえた!!」
「ん??」
俺に触られて初めて俺の存在に気づく。
「げ!!何であなたがここに??」
驚く男。そりゃぁ驚くだろう。俺を皇帝にして逃げて俺にさんざんつらい思いをさせてきた男なんだから。
「マリスタン!!あんたのおかげで俺は散々な目に遭ってるんだぞ?」
「いやいや、楽しんでるって聞いてますよ〜。ゾルミスさんから色々聞いています。財政難も何とかなりそうだって。さすが私達が推しいただけのことはある。」
笑顔で言っているが俺は怒ってるんだぞ?
「恵・・・。最愛の男と出会って感慨深いところ悪いが、こいつを防具屋に連れて行くぞ?いいよな?」
ケイとマッキーがつまらなさそうに俺の服を摘んで引っ張っている。
「行ってきていいよ。何かあったらこの場に集合。いい??」
「「おっけ〜」」
美しい女性2人が走ってどこかに行く。ただ、片一方は元おっさんだけどね。
「あの・・・立ち話も何なんで、うち来ます?」
マリスタンが俺を家に招待すると言っている。
俺はマリスタンについて歩く。
「ところで恵さん、新婚生活はどうですか?」
「はい??新婚??何の話だ?」
「え??お子さんも出来てるくらいだから新婚では?」
「実は・・・結婚していないんだよね・・・。式もしていないし・・・。」
「それはどうかと思いますよ〜。やっぱりそういうのって大事じゃないですか?」
「・・・」
沈黙を産んでしまった。
「ここです。我が家へようこそ!!」
大きくもなく小さくもない。そんな家に到着する。
「前の屋敷に比べると・・・どうなの??」
「狭いですが・・・愛する人と2人なら狭いほうがいいですよ。」
ええ??なんだって??
「おかえりなさい。・・・えっと・・・どなた??」
「紹介するよ。この人は恵さん。俺の友人だよ。」
美しい魔族の女性が俺の前に立っている。魔族の皆に顔を知られていると思っていたのに。
「この街の人は一般の方です。あの城にいるのはこの国でも選りすぐりのエリートです。」
エリートとかあるんだ・・・。
「じゃぁ、ユクやフェブはかなり上の人なの?」
「ゆく??ふぇぶ??え?」
魔族の女性は困惑している。
「ちょっと!!もしかしてユクリーナ様やフェブラル様のこと?」
「ん?そうですよ。レイリーの護衛兼婚約者。」
「れれれ・・・レイリー・・・・???」
「マリスタン・・・俺・・・変なこと言った?」
「えっとですね・・・。恵さんは今、この国の王様や皇后候補を呼び捨てにしました。もちろんヤバイことですけど・・・なんと言えばいいんでしょう?」
「じゃぁ、お父様をゾルミスと言ったり、ミシュラをミシュラと言ったりしたらヤバイの?」
「ミシュラさんをミシュラと言ってはけないという法律があるわけじゃないですけどね。この国のみんなはあの方たちを尊敬しています。呼び捨てはマズいですね〜。」
先に言え!
「あのですね・・・。レイリーは義理の弟です。そういう立場です。あれ??レイリーは息子か?なぁ、マリスタンどうなるんだ?俺の立場って・・・。レイリーがずっと兄さんと呼ぶから何の違和感もなかったけど・・・。」
「義理の弟?息子??え??」
もっと混乱している。
「マリスタン・・・で、奥さんのこと紹介してくれないの?」
「あぁ、すっかり忘れていました。私の妻、リャムです。」
「はじめましてリャムさん。メグミ帝国皇帝恵です。よろしくお願いします。」
無理やり握手をするが混乱しすぎてどこを見ているかわからない目になっている。
「息子ってどういうことですか??」
正気に戻ったのか、リャムが急に質問してくる。
「恵さんはミシュラ様を妻に迎えているんだよ。」
「え?先代王は?」
魔王じゃないんだ・・・。
「お父様は今遊んでいると思うけど。」
「え??お父様??」
リャムは理解できていないようだ。
「えっと、どこまで説明したっけ??」
マリスタンがリャムに説明している。俺が何者か、どういう人と関わっているか。どういう繋がりか。
「あの・・・もしかして雲の上の人ですか?」
リャムの中での理解はそうなったらしい。雲の上って・・・。
「なぁ、マリスタン1世は?」
「あぁ、この街に住んでいますよ。お母様と二人っきりで楽しんでいますよ。」
「なんか、皇帝していた時より幸せそうだね。」
「ええ。あんな生活をしていた自分は不幸中の不幸ですね。金は自由だけど、女も自由だけど、心の自由がない。あれは地獄です。」
「地獄を俺に押し付けといてよく言うよ。」
「ははは。申し訳ない。」
俺達は食事をしながら談笑する。
夜逃げする自体に追い込んだことを少し負い目に感じていたんだよね。
でも幸せそうでなんか良かったと思う。