美女に挟まれて旅をする。
「恵・・・こいつどうする??私の尻を触ったから殺していいよな?」
「いいよ。」
「待て!!軽く言うな!!俺が死ねば困るだろう??」
「私の尻を触ったんだ。そんな幸福もう二度とないんだよ。だから死んでも幸せだろう??」
ものすごい量の暗黒の霧を出している。それが馬の形を形成していく。
「マッキーか・・・何用だ?」
デカイ馬がマッキに問う。
「あのおっさんを蹴・・・」
「ゲハッ!!」
マッキーが言葉を言い切る前にデカイ馬はケイを後ろ足で蹴りあげている。いい気味だな。
「おい!!恵!!止めろよ!!俺が死んでしまったらその後どうするんだ??」
結構な距離飛んで行ったみたいだが元気そうだ。そんなに強そうではないが頑健さはかなりのものだ。
「恵よ・・・このおっさんは何もんだ?さっきから偉そうだぞ?殺そうと思っても死なないから大した身分なんだろう。」
「あぁ、こいつは神だ。ミシュラやハウンが持ち上げていただろう?ミシュラはこんな奴と知って軽蔑している。もうゴミを見るような目で見てたよ。」
「まぁ、気持ちはわかる。だって、美女の尻を許可無く触る酔っぱらいだもん。さっさと死ねばいいのに。」
正体を知っても全く態度を変えないマッキーが素晴らしい。
「なんてやつだ・・・。俺が話をしに来てやったのに。」
「何の話だよ?俺にじゃなくてミシュラたちにしろよ。最古の神々はあんたを相当美化しているんだぞ?早くその呪いを解いてやればいいんだ。」
俺はケイを無視して先に進む。
「解!!俺も同行させろ。酒は抜けた。こう見えて戦闘は得意だからな。」
「いや、お前は私より弱い。だからいらない。」
マッキーに思いっきり振られている。悲しそうな顔で俺を見ないでくれ。
「何で俺達に付いて来るんだよ?俺は俺で仕事をしていくつもりだからついてこられてもな・・・。」
「アホの側近の始末をして回るんだろう?それならなおさら俺がいたほうがいい。所詮相手は神々だ。俺の手にかかれば・・・」
「神々でも、あんたの知っている作り方で出来たものではないから、あんたの力じゃどうにもできない。だから来なくていい。」
「作り方が違う?力を分け与えていないのか?」
「ああ。」
「そんなことまで出来るようになったのか・・・」
「面白い・・・」
面白いという部分をものすごい小声で嬉しそうに言うケイ。
「不謹慎な奴だな。だがそういうのは私も好きだ。」
笑いながら肩を組むマッキーとケイ。なぜ意気投合したのか全くわからない。
「なぁ恵よ!!こいつも連れて行こうよ!!面白いって!!」
「はいはい。マッキーと二人旅を楽しみたかったけど・・・じゃぁ旅は2人に任せるよ。俺は一人で・・・。」
「まてまてまて〜〜〜!!なし!!今のナシ!!やっぱり二人っきりがいいな!!私は恵と2人がいいんだな!!」
「いや、そこまで言っといていきなりケイを放置はかわいそうだ。だからマッキーはケイと一緒にいてね。俺は俺の一人旅を楽しむ。」
「何だ??俺が男だからダメなのか??嫉妬か?」
「え??嫉妬なのか??」
マッキーが目を輝かせる。ケイがニヤニヤしている。
「あっそ、嫉妬ですか。そうみたいだな。だからケイを女にしてくれ!!」
「「なに?」」
『その願い叶えてやろう。』
体を再構築されるケイ。汚いおっさんの面影全くなし。これでこの女が神であるとは誰も思わないだろう。
「さて、これだけ姿が変われば、神々に出会ってもバカとはバレないだろう。」
「誰がバカだ!!誰が!!」
「じゃぁしゅっぱ〜〜〜つ!!」
マッキーが音頭を取って旅が始まる。
一人でと思っていたけど無理だと気づいてマッキーを連れて、そんでもって、わけのわからない神が仲間になって。
「これでどうなることやら・・・。」
俺は不安しかない。今までと全く違う道に突入している。
大きな失敗は何度もやっている。
最初は全く力及ばず皆殺しに。
少し強くなっていい気になって、神々の軍隊に潰される。
力を求めすぎて全員の心が離れ単身で戦い、なんとか勝ったが願いを叶える手段も、世界を元に戻す方法も失う。
ありとあらゆる者を仲間にしていたら途中で裏切られて・・・。
問題ごとを放置しすぎてダメになったこともあったな。
そんな感じの失敗を繰り返したり、大きく踏み外してしまったり、早々に力を持っていないラスボスを殺して、レイが敵になったり、レイリーが敵になったり・・・。
ミシュラにラスボスがバレて、ミシュラがラスボスに飲まれて全く歯が立たなかったり・・・。
いろいろな失敗をしまくって、今・・・そこそこいい感じ。
だが、正解かと聞かれたら・・・わからない。
この道は正しいのか?やり直せば少しだけ答えが見える。
俺のやり直しの願いはこれだ・・・
『最良の分岐点の手前でやり直させてくれ!!』
俺の願いはちょっとでもやり直しの時間を短くしたかったがためのものだった。
最良の分岐点の手前っていうのが味噌なんだな。全く同じ道を歩みたくなければフラグを踏まなければいいんだし・・・。
最初なんか願いを叶えるところからだった・・・。戻りすぎだろ?
でも・・・この願いは残酷だった。最良だから分岐点の手前以上大きく戻ることはないと思っていたらそうでもなかった。入った道がダメだとものすごく戻される。最初からなんて数えきれないほどやっている。
ただ、もう・・・大きく戻るやり直しはしたくない。俺には小さな子供が居る。シャロンにも言ったけど子どもたちの消えるようなことや、子どもたちの努力が無駄になることはしたくない。
「さて、がんばりますか・・・」
ケイも頑張ってくれるらしい。
「おれじゃなかった・・・私はケイです。よろしくお願いします。」
「なぁ、恵よ。服買ってやろうぜ?キッタナイもんこのおっさんの服・・・。」
鼻をつまみながらケイの服をつまむマッキー。臭いのか??
確かに美女にボロは似合わない。
「じゃぁ、コーディネートお願いするね。マッキー。」
胸を叩いて
「まかせとけって!!デカイ街に行こう!!どこにいく?」
「レイリーに会いにいこう。その後魔族領で買い物すればいい。」
「レイにバレないか?」
「レイリーはレイが面白いことに巻き込まれているのが好きなんだから多分言わないと思うよ。まぁ言おうとしても言えないんだけどね。」
「あぁ、なるほどね・・・。」
言えないと思っていた俺。それがレイリーを甘く見ていることと後でわかるんだけどね。