裏切る者
恵視点
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レイ視点
「恵様・・・こんな感じですけど、どうですか?」
時の止まった食堂で座っている俺にシャロンがジュディ老師のお腹を見せて聞いてるみたいだけど・・・。
どうですか?ってどういうこと??
お腹が大きくなったジュディ老師。俺の方を向いてお腹をさすって満足そうだ。
「はぁ、なんて話を切り出せばいいんだろう?自分で言うって言ったけど・・・なんて言えばいいんだろう?」
変な言い方は出来ない。他人のせいにしてしまう言い方や、俺以外に責任を押し付けるように聞こえる言葉の使い方。その辺りは絶対にあってはならないと思うんだけど・・・。そうなるとやり直しの話を出さないといけないような・・・。どうしよう
「う〜〜〜ん・・・」
俺の唸り声にミシュラが
「悩んでいますね。もう諦めて全員いいことにすればいいのでは?」
「もしかしてさ・・・ミシュラは時短賛成派なの??」
「・・・」
俺から目をそらしてしまう。やっぱりか・・・。
「はぁ、まさかここでも裏切り者に出会うとは・・・。」
その言葉に3人が驚く。
「私は恵さんを裏切っていませんわよ!!女の立場ならこの気持ちがわかるはずです!!ねぇ?」
ミシュラの言葉に頷いている裏切り者BとC。
「俺は男だから辛さはわからないけどさ・・・レイややっちゃん、ハウンには言ったんだけどね、お腹の中の赤ちゃんはその時間、母親との時間を楽しんだりしていないの?」
俺の言葉に怯む3人。
「もしそうだとしたら、今お腹の子はどう思ってるだろう?」
フラフラの3人。かなりダメージを受けているようだ。
「時間動かそうか・・・。俺は何も言わないよ。時短は好きにすればいい。俺はそのことに二度と関わらないから。」
デュランに頼んで時間の流れを元に戻す。
その瞬間から騒がしい食堂の風景が動き出す。
「レイ、やっちゃん、ハウン・・・」
「「「え??なに??」」」
「時短好きにすればいいからさ。この話は二度と蒸し返さないで。」
俺はそう言い残して自室に帰る。
その途中、クルクに会う。
「クルク。俺は負けたみたいだ。思いもしないところから隙を突かれてね・・・。」
「ええ。なんと言葉をかけてあげればいいのか・・・。」
クルクが言葉に詰まる。俺はクルクの肩をポンポンとだけ叩いて何も言わず別れる。
自室に戻った俺は
『探さないでください。後は影武者に任せます。』
簡単なメッセージを残して
『デュラン!!』
『その願い叶えてやろう!!』
そして俺はこの場から、というよりこの世界から消える。
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私はメグミのその言葉にものすごく驚いてしまう。
「ちょっと!!お母様??メグミに何があったの??って何その姿??」
私の目の前にお腹の大きなジュディ老師が呆然としたまま突っ立っている。
その隣に色白で白髪のシャロンがもっと白くなっている。まるで燃え尽きた灰のように。
お母様なんか口から魂が抜けている。
「ねぇ!!メグミ何がって、あれ??メグミはどこ??」
お母様を揺すって正気に戻ってもらおうとするが全く戻ってこない。
消え入るような小さい声で『ごめんなさい』を連呼している。どうなっているの??
今の今まで私の横にいたはずなのに!!メグミがいなくなった!!
「ちょっと!!マッキーは??」
「ほえ?何だ??レイちん?私に用か?」
アホそうに肉を頬張るマッキー。
「メグミはどこ??探せるでしょ?」
「恵か??恵ならさっきまでその辺にいただろ?どうかしたのか??」
「あそこをみて!!?お母様たちがおかしなことになってるの!!メグミなら原因を知ってるはずなのよ!!でも急に消えたのよ!!だから探して!!」
「あぁもう!どこかで遊んでるんだろう?」
マッキーはものすごく面倒くさそうに言ってもうひとつ口に肉を放り込む。
「恵様なら出て行かれましたよ。ものすごく傷ついたみたいです。このようなメモが・・・。」
クルクが私にメモを渡す。これはたしかにメグミの字だ。探さないでって・・・。何があったの??
「あそこの3人に裏切られたと言っていましたよ。あの調子じゃ・・・。ここには戻ってこないでしょうね。」
クルクがその言葉を悲しい顔で言って並ぶ食事を皿にいっぱい盛っている。
「マッキー!!」
「あぁ!!もう!!わかったって!!恵の居場所だろう?わかったわかった・・・。あれ?」
マッキーが手に持つ羅針盤・・・そこにメグミのフルネームを書き込むも全く反応しない・・・。
「これって・・・死んでいるってことだよね?」
私は以前、マッキー本人から
「人の名前指定で見つからない場合は死んでいるか、全く違うものになっているかのどちらかだな!」
と恐ろしいことを聞いている。
メグミは死んでいるの??もう??
さっきのさっきまで居たのに??
「デュランのせいじゃない??」
やっちゃんが羅針盤を覗きこんでそう言ってくれる。なるほど!
『デュラン!!』
『ん?なんだ??』
『メグミはどこ??』
『そこにいるだろ?何の話だ??』
『メグミの願いを叶えたでしょ?どこに行ったの??』
『だから何の話だ??』
『とぼけてるの??マジでムカつくんだけど!!』
『だから何の話だって!!我は何も知らんぞ!!何かあったのか??』
『トボけいるわけじゃないの??え?』
デュランは本当に知らないようだ。メグミは??
「ちょっと!!お母様!!しっかりしてください!!メグミが本当に消えたんですよ!!どうなってるんですか!!」
私の言葉を聞いてシャロンがぶっ倒れる。
「ちょっと!!シャロン??」
ハウンが駆け寄って介抱するが全く動かない。
「もう!!デュラン!!」
その言葉に現れるデュラン。
「なんだ!!主殿はこの世界のどこにもいないぞ。どういうことだ??我の言葉も聞こえないようだ!!」
「どういうこと??恵くん行方不明なの??」
やっちゃんが血相を変えてデュランに詰め寄る。
それからメグミがいない生活を私達は送ることになる。もちろん、向こうの世界でも・・・。