完敗
「ママ。イタイイタイ飛んでけ〜」
「ママ。泣かない泣かない。なでなで。」
2人にあやされるシャロン。ヒックヒック言いながら俺の前に座って朝ごはんを食べている。
「もういいから。泣かない。子どもたちも気にしてるじゃない?この子たちの可愛さに免じて許すからさ。」
俺の言葉に
「ズミマゼンデジタ。ゴベンナザイ。時間もどじまず。」
「それしたら追放するからね。」
「どうじだらいいんでずが〜〜〜わぁぁ〜〜〜ん!」
「子供の時間を戻すは絶対にないから。やったらそれこそ許さないよ。俺はこの子たちの幸せを第一に考えて欲しいの。俺が動かない3年間この子たちはどう感じていたの??かわいそうでしょ??」
「・・・」
シャロンが黙ってしまう。
「以後気をつけます。恵様・・・。愛しています。」
顔を真っ赤にしながらいきなり『愛しています』をぶちかましてきた。この子・・・やるな・・・。
「はい!!この話はおしまい!気持ちを切り替えて楽しい時間を過ごしましょう!!」
「ニセパパど〜〜〜ん!!ニセパパど〜〜〜ん!!」
さっきまでシャロンの横にいたのに、気がつくと俺の影見者に体当りしている2人。
「主様・・・この子たち・・・ものすごく怖いです・・・。」
お腹を押さえて涙目で訴えてくる俺の影武者。
「何言ってるんだよ。痛くも痒くもないだろう?おチビが遊んでいるんだ。もっと相手してあげてくれ。」
俺の言葉に
「主様・・・。この子たちのレベルを見てください・・・。」
「え?」
双子のおチビのレベルを見る。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
この場の全員が沈黙する。
「シャロン・・・何をしたの??」
ミシュラがものすご〜〜〜〜く引きつった顔でシャロンに尋ねる。ミシュラをここまで追い込むとは・・・今までにないキャラだ。ミシュラの立ち位置はこの世界のあらゆる人物を手玉に取って笑い転げる立場。そのミシュラをここまで追い込むシャロンの行動。ミシュラですら計算できないで困っている。
「シャロン・・・なんでこの子たち・・・レベルが2000もあるの?」
「1歳半から鍛えていますから。」
バッタン!
ミシュラが椅子ごとひっくり返る。
「負けました。私の完敗ですわ・・・。」
ミシュラは一言そう言って立ち上がり、椅子を起こして自室に帰ってしまう。ヨロヨロしている・・・大丈夫か??
「ミシュラ!!」
俺が横に走って行って脇を抱える。ものすごいフラフラだ。
俺はミシュラを抱きかかえてミシュラの部屋に行く。
「ミシュラ・・・大丈夫??」
「はい・・・まさか・・・あそこまで・・・すごい人がいるなんて・・・。上には上がいるんですね。思い知らされました。生まれてこのかたそう思わせる存在がいなかったので、天狗になっていましたわ。いや、違いますわね・・・いたけど気づかなかっただけですわ・・・。あんな凄い子が存在していたなんて・・・。」
これは褒めているのか??貶しているのか?どっちにしても顔色悪すぎ。
「ミシュラ・・・レイとレイリーはどれくらいから??」
「訓練ですか?人で言う12歳位からですよ・・・。魔族はそれくらいが普通です。まさか1歳半とは・・・。」
「俺はまさかミシュラがぶっ倒れるとは思わなかったよ。」
「ええ。私も初体験です。体調不良というのはコレを言うんですね・・・。あの子に最近会って生まれて初体験をこう立て続けに受けるとは・・・その心労でしょうか??」
俺はミシュラをベッドに横たえて毛布をかける。
『デュラン・・・ミシュラに異常はない?』
『ない。大丈夫だ。きっと本当に心労だろう。』
「ありがとう。恵さん・・・。」
「あのさ・・・もしかしてミシュラ・・・俺とデュランのやりとり聞こえてる?」
「・・・」
「秘密なの?」
「そんなことはありません。気持ち悪いと思われたくなくて・・・。」
「ミシュラって・・・もしかして・・・あの通路での出来事まで知ってるの?」
「・・・ええ。」
「そうか・・・スパイはレイか・・・」
「違いますわ・・・。コレは・・・ごめんなさい。秘密です。」
「言ってくれる日を楽しみにしてるよ。」
俺はミシュラにキスをして部屋を出る。
スキルにはいろいろあるらしいからな〜。きっとまだ知らない物がいっぱいあるんだろう。
「メグミ、お帰り。お母様は大丈夫?」
「ああ。心労だろうって言ってたよ。シャロンはミシュラの想定の範囲の斜め上に大きくはみ出ているみたい。」
「凄い褒めてるね。」
「これは褒めてるの??」
「最大の賛辞だと思うけど。だって、お母様の想定ってものすごいでしょ?もう未来予知に近いとさえ感じてしまうから。」
なるほど・・・未来予知か・・・。賭けも百発百中だったし。
まてよ!!?未来予知ならシャロンが出す空間が自分の体を貫くのもわかっていたはず・・・。どういうことだ??子供のことも知らなかったし・・・。