逃げるか殺るか。
俺は自分の屋敷に帰ってすぐにミシュラのもとに行く。あんなに嫌な思いをさせたのだ。すぐに謝っておかないと・・・。
「ミシュラ??」
「はい??恵さん、どうしたんですか??」
おチビ2人を抱いて俺の呼んだ声に答えるミシュラ。あれ??さっきと全然雰囲気が違う・・・。
「ミシュラ・・・ごめんね。」
「恵さんが謝ることではないですよ。神にも会えたわけですし。まぁ、私達と別れた頃のあの人とは全く違いましたけど・・・。」
「俺の中で会った時はもう少しマシだったんだけどね。」
「そっちの話のほうが気になりますね。詳しく聞かせていただけますか〜??」
俺は特訓中に狂戦士になり、戦闘を無意識に任せて引っ込んでいたらそこに神が現れたこと。
そして話した内容をミシュラに告げる。もちろんやり直し云々は秘密にして。
「そうですか・・・。私は神の力を超えているんですね。だからこの拘束なんですね・・・。」
体に這う呪いの術式を見て笑っている。もう嫌なわけではないみたいだ。
「シャロンのことは作った本人にもわからずですか・・・。困った人ですね。穴だらけではないですか?」
「まぁあれだけいい加減なやつだからね。」
「ふふふふふふ。いい加減で片付けてしまうんですね。さすがです。」
何故か褒められる。
「恵さん、特訓してあの2人はどうなりました?何とかなりそうですか?」
「何とかなるも何も、シャロンが化けて、レイ達ではどうにもならないらしいよ。ミシュラが相手する日も近いんじゃないかな?」
「すみませんちょっといってきます。」
顔がものすごい笑顔でおチビ達を俺に預けてどこかに行こうとする。
「今はいないと思うよ。風呂じゃないかな?あれだけ戦った後だしね。」
「それでは・・・」
え?どこ行くの?
俺がそう思うより早くミシュラは素早く風呂の方に歩いて行く。
足音も身体のブレもない美しい歩みで。
見とれている場合ではなかった。
「ちょっと?ミシュラ⁇」
慌てて追いかけるが少し遅かったようだ。裸のまま腕を引っ張られて特訓部屋の方へ引き摺られて連れて行かれるシャロン。絶望の顔で何か言っているがあまりのパニックに何を言ってるのか全く伝わってこない。
『デュラン・・・』
俺は時間を止めてシャロンの横に立つ。
「シャロン??落ち着いて・・・。」
「え??ええ???あ!恵さん!!助けてください!!ミシュラ様が!!」
「シャロン・・・。君は時間止めて逃げようと思わないの?」
ものすごい目を見開いてびっくりしている。
「あ・・・あ・・・そうだ・・・。そうすればいいんだ・・・。」
ものすごく焦って、パニックになって自分の能力を忘れてしまうなんて・・・・。どれほど恐怖にとらわれていたのか・・・。
「ミシュラの手から離れられる?空間移動できる??」
「え?あ・・・はい・・・。こうすれば・・・。」
シャロンは自分の体ごと空間移動してミシュラから離れた側の俺の隣に移動する。
「あ・・・ありがとうございます。助かりました。」
「できれば・・・ミシュラとやりあってみない??今ならけっこういい感じになれると思うけど・・・。」
俺の言葉に悩み始めるシャロン。
「そんなに私は強くなっていますか?担いていませんか??」
「担いでも何もならないけどね。もし、ミシュラとやりあえるようになれば、結構な自信につながるよ?ミシュラとタイマン張ったっていうだけで尊敬されるかな??」
「そんなに??そんなに認められるんですか?」
俺が頷くとものすごく悩み始める。
「う・・・う〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん・・・」
「嫌ならそのまま離れてしまえばいいからさ。このあとは俺が何とかするし。」
「恵さんが殺されたりしませんか??」
「ははは、それはわからないよ。最悪俺が相手すればいいわけだし。」
「そんな・・・。それじゃぁ・・・私が恵さんを殺ってしまったようなもんじゃないですか?」
「その辺は気にしないでいいと思うよ。」
「・・・」
「やります。殺るだけ殺ってみます。ぶっ殺してやります!!」
目に火が付いている。なぜそこまで火が付いたのかはわからないけど。
時間がまた動き出す、それと同時にミシュラが前を向いてずっこけている。
「あれ?シャロンは??ん??恵さん??」
「ミシュラ・・・強引はダメだと思うけど。今、シャロンはミシュラとやりあうのを承諾してくれたよ。」
「まぁ!!うれしいわ〜〜!」
「ミシュラ様・・・いや、ミシュラ!!勝負だ!!」
シャロンが様呼びを辞めたみたい。
「ミシュラですか・・・いい感じね。これで対等っていう感じが伝わってくるわ〜。ぶちのめして差し上げますから覚悟してくださいね。それと・・・恵さん。あなたは見届け人を・・・。」
俺達3人は特訓部屋にはいる。
「シャロン・・・。ミシュラは魔力以外の力をすべて操れるから注意して。あと・・・、ものすごい俊敏で、頑健、すべての攻撃が即死級。ジャブですら当たると死ぬから・・・。」
「なんですか・・・それ・・・。勝てそうに聞こえないんですけど・・・。」
涙目で俺を見つめて言う。
「時間を操れるんだろ??それが君の強みだ。当たりそうになったら焦らず止める。距離を取るときは空間移動。あと・・・気をつけてね。」
俺の言えることなんてたかが知れている。
涙目のシャロンは
「あい・・・わかりました・・・。」
シャロンはミシュラと対峙して構える。