変な奴がいっぱいになって
レイの弟である魔王のレイリーと別れて街に帰ろうとする俺達。
そこに変な奴が現れる。
「さっさと離れろ!!美しいレイ様にお前のような下賤の者が触れるな!!」
離れたくてもくっついて来ているのはレイなんだよね。
この状態を見てちゃんとわかってくれよ。
そう思っていると何故か体を回転させてポーズをとっている。
後ろを向いて刺繍を見せつけて、左手は腰に、右手はレイピアをまっすぐ横に構えている。
顔は右を向いてすごいムカつくドヤ顔をしている。
それにしてもすごい変な格好だな。
カブトにピンクのハートマークをくっつけて真ん中に『愛』の文字。
白い鎧に内側がホワイトピンク、外側は白のマント、そしてでっかく
『レイ様護衛追跡隊参上!』
『レイ様のみを愛し続ける』
『レイ様のいる世界は最高』
などなどいろんな刺繍がしてある。
刺繍ってそんなにすぐできないんじゃなかったっけ?俺達の世界だけの話でこっちではすぐできるのか?
ブーツも白を基調にして金色の蔓のようなものが描かれている。
特注品であろうすべての装備品。
それが10数名。じゃないな、ほかの者は少し刺繍や鎧がグレードダウンしている。
1人だけすごく金かかっている様子だ。
周りの男の中には大きな旗『ハートマークにレイの文字入り』を持っているものもいる。
「きっつ〜〜」
すごく小さい声で田村さんが俺達の代弁をしてくれた。
そうキツイなこれ。レイはこれを見てワナワナ震えている。顔色も悪い。はっきり言ってすごく気の毒だ。
「メグミ、ちょっとこれ、なに??怖いよ。」
俺の後ろに体を隠して肩越しから向こうを見るレイ。多分、最強に最も近い魔族が心の底から怯えている。
「私生まれて初めて怖いと思った・・・。」
レイがプルプルし始める。そして鳥肌になっている。
「おい!!貴様!!レイ様を隠すな!!我らはレイ様護衛追跡隊。そして私は誉れ高き隊長ルイス!
ミキスタル国の貴族、ミキスター家三男、クラスBの冒険者。レイ様は私が護衛につくのを望んでおられるのだ!!」
そう言って、レイピアを鞘に戻し、レイの方に右手を差し伸べる。
「うわ、マジキッツ。うわきッつ、きっつ、キッツー。」
すごい小声で田村さんが何度も何度も言う。笑いそうになるからやめてくれ。
「結構です。間に合っていまう。お引き取りください。」
レイがそう言うと、俺の方と田村さんの方を見、そして俺を睨んで
「声色を真似てそんなこと言ってもバレているぞ!!貴様たちがレイ様を拐かしたんだろ?さっさとこちらに渡せば死刑は免れるであろう!!」
「いや、本人の気持ちだけど・・・。」
レイが隠れきってしまったので、仕方なくそう俺が答えると
「そんなわけがない!!これを見よ!!レイ様ファンクラブ会員証だぞ!!しかもシングルナンバー!しかも3番だぞ!最高にして最大のファン。我ら9人がそれぞれ隊長を務めているのだ。貴様と違って我らはレイ様を思い・・・」
最後まで言わせずに田村さんが割って入る。
「女の子の気持ちを考えず何がファンクラブだ!!嫌がっているんだからさっさと帰れ!!」
目がすごい怒っている。なぜかはわからないけど怒っている。
レイは田村さんに輝いた目を向けた。
隊長はプルプル震えている。まぁ貴族のボンボンがあそこまで無下に扱われたらそうなるわね。
レイは俺の肩越しにファンたちをチラチラ見ている。
「ご、ごめんなさい。私はこの人たちとパーティーを組んでいるの。ファンクラブはその後から出来たから、優先順位はこちらなの。だからそちらにはいけません。諦めて帰ってください。本当にごめんなさい。」
多分、トラブル無しに返すためにそういったのだろう。すごい大人の対応だな。
隊長は手を握りしめて震えている。
「わかりました。レイ様がそういうのであれば、我々は引くしかありません。しかし、その者達がレイ様にとって悪となるならば、我々は全力で潰しにかかります。そのことはご了承ください。」
レイに一礼して
「戻るぞ!!」
「「「「「「はっ!!」」」」」
「「「「「我々はレイ様を愛しています!」」」」」
「「「「「我々はレイ様の盾となります!」」」」」
「「「「「我々はレイ様の剣となります!」」」」」
「「「「「レイ様は我々の支えであります!」」」」」
何度も何度も何度も言いながら隊列を組んで歩いて帰っていった。
ちょっとした宗教だな。ここまで来ると怖いわ。
こんなのが1万もいるの?レイ、大丈夫かな?ちょっと心配になってくる。
「あんなのがまだいっぱいいるの?」
青ざめた顔で俺を見るレイ。そんな顔しない。
それを食い止めるためにこれから元締めの貴族を探しに行くんだから。
と、その前に
俺レベル上げとかんとね。巻き込まれたらどう考えても足手まといだから。
「なぁ、レイ。あれと揉めたら俺やられそうだから少しレベルアップしてくるわ。レイはどうする?宿に隠れておく?」
首を横に振って
「一緒にいる。また死なれちゃ困るから。」
あの時俺死んでたの?そう思っていると
「恵くんを危険な目に合わせたの?何考えてんの?任せれないわね。」
田村さんが横目でレイを睨みつける。
レイはしょんぼりして肩を落とした。
「ごめんなさい。」
小さい声でポソッと謝ってた。かわいいな。
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