シャロンの産出した神々
俺の部屋の出来事は収集のつかないまま。
俺はマッキーを駅まで送っていく。
「恵。サンキューな!ここまで来れば・・・。あ!社長が車で待ってるわ。」
駅のロータリーの所にマッキーの事務所の車が停まっているようだ。
「こんばんは・・・。泊まりじゃなくてよかったよ。遊ぶことは許してもな・・・。」
強面のおっさんが俺の顔を覗き込みながら威圧してくる。
「ははは・・・」
俺は笑ってその場をやり過ごす以外何もできずにいる。
「君は誠実な男だな。これからもそう頼むよ。」
口元が少し笑い、そのまま車の窓を閉める。
「おやすみ、マッキー。」
「おう!恵もな!!またな!!」
お互いが挨拶すると車が出る。
「さて、ぼちぼち歩いて帰るかな?」
独り言を言って歩き始めると後ろにレイがいる。
「マッキーは一番になって変わったね。ものすごい乙女だ。」
「そうだね。いい子だね。」
「メグミは今、一番マッキーが好き?」
「そういう約束だからね。だからレイも1番になれるように考えながら行動してね。ラウルにやったみたいなことやってるといつまで経ってもそうならないよ。」
「・・・はい。わかってます。」
不貞腐れた顔をして俺の腕に絡みついてくる。
「やっちゃん達は?」
「お風呂はいるって言って帰ったよ。」
「シャロンは?」
「ベッドの上に座らせておいた。」
「え?可哀相じゃない??見知らぬ部屋でひとりぼっちって・・・。」
「そうかな??大丈夫でしょ?」
歩くこと十数分。家の前に着く。
「ただいま。」
「あ!!おかえりお兄ちゃん。もう一回お風呂に入る?」
「いや、そのまま寝るよ。疲れたから。」
「うん、じゃぁおやすみ。」
美久は挨拶しながら自分の部屋に入っていく。
「私もお風呂入ってから寝るね。お休み。」
レイはお風呂に向かって歩いて行く。
俺は自分の部屋へ。
「あれ??シャロンは?」
狭い部屋だ。見渡せばすべて見える。どこをどう見てもシャロンがいない。まぁ、突然出てきたんだから帰るのもそんなもんだろう。そう思って椅子に座ると
「先に向こうで待っています。シャロン」
そんなメモが机の上に置いてある。
「俺も寝るか・・・」
ふとんに入って目を瞑る。するとすぐに眠りにつく。向こうの世界に行き来するようになってから寝付きが半端なく良くなったな・・・。
俺は・・・何度か通った空間に1人突っ立っている。
「恵さん、待っていました。他の方が来るのをここで待ちましょう。」
俺に声をかけるシャロン。1人で優雅に白いテーブルの前に座り、紅茶を飲んでいる。
「先ほどは取り乱してしまい、無様な姿を見せてしまいました。」
俺に紅茶を出しながら謝ってくる。
さっきまでのちょっとオドオドした感じがなくなっている。最初に会った時のような優雅で気品のある女性に戻っている。
「最初の頃みたいでいいね。」
俺の言葉に顔を赤くしながら頷く。
「ここでは最高責任者なの?」
「はい。ここは我々の世界と恵さんの世界をつなぐ空間です。ここでは・・・」
俺にいろいろ説明をしてくれるシャロン。
ここは旅人となった人の時間を管理しているらしい。
大まかに言うと、何時間寝ても向こうの世界の時間が変わらないとのこと。超えた分は、戻してそこに俺達を置いてくる。足りない分は連れて行って俺達を置いてくる。言っていることがよくわからないだろうがそんな感じ。それと万が一、寝ている時に何か会った時、強制的に起こすのも仕事だそうだ。戦闘などで無理なときは体を許可なしで操作して安全を確保するそうだ。
「皆様がいらっしゃいました。行きましょうか?」
レイとやっちゃん、ハウン、そしてマッキーが揃うと俺とシャロンは合流するために皆のいる方に歩いて行く。
「お!!シャロンちゃんに恵がいるんだな!!こっちだぞ〜〜!!」
マッキーが嬉しそうに手を振っている。俺達は少し駆け足気味に合流する。
合流すると周りにたくさんのこの空間にいる管理者たちがズラリと並んで俺達を見ている。
数が半端なく多い。この場を埋め尽くすほどだ。
「シャロン様に敬礼!!」
管理者全員がビシッと敬礼をして微動だにしない。
「皆さん、お疲れ様です。こちらには私より格上の最古の神々、ハウン様がいらっしゃいます。粗相のないように。」
「粗相・・・。会った時点で粗相だらけだったんだけど・・・。」
ハウンが苦笑いをして俺にウィンクする。粗相だらけか・・・。やっちゃんの時もそうだったと聞いているんだけどね・・・。
「まさか・・・ハウン様に何かしたのですか?担当の者・・・前に。」
顔面蒼白の男が前に出てくる。多分、こいつは何かしてしまったんだろう。
「申し訳ございません。そんな高貴な方と知らずに説明もせずに世界を行き来させてしまいました。」
「ゴミめ・・・仕事もろくに出来ないのか・・・死んで私に力を返しなさい・・・。」
冷たい目で男の首を手刀で刎ねようとする。それをハウンが腕を掴んで止める。
「はい、ストップ。ここにいるものはあなたが産んだ神々なのね・・・。」
「はい・・・。私が創りだした神々です。」
「なら、粗相があったなら、あなたの責任ね。ちゃんと教育してから仕事をさせないから傲慢になっていくのよ。神々は傲慢になるの。歳月とともにね。」
ここにいるものはすべてシャロンが生み出した神々・・・。相当な数である。最弱になったのはそのせいでは??
「ハウンは神々をどこまで生み出せるの??」
「4体が限界ですね・・・。それ以上出そうとすれば必ず駄作が生まれます。」
「そうなんだ。シャロンはこの数を作るんだから相当なもんだね。」
「はい・・・。」
ハウンが俺の言葉を聞いて引き下がる。
「シャロン。行こうか・・・。その者の罪は問わないと約束してくれ。殺すのはナシ。」
「わかりました。さっさと解散しなさい。気が変わらないうちに。」
ここではシャロンはとても冷たい女性を演じているようだ。
ほぼすべての管理者がこの場から消えてなくなる。
数名を残して。
「恵さん・・・。お久しぶりです。活躍をいつも見ていますよ!!それにしてもシャロン様を連れて歩いてくるなんて・・・。」
「リロ、俺はもっとびっくりしているけどね。君たちが神々だったなんて・・・。」
「その辺は秘密なんで・・・」
「あなた達・・・恵さんやハウン様、レイさんや弥生さん、マッキーさんに取った態度を許したわけではありません。今すぐにでも始末してもいいとさえ思っています。さっさと仕事に戻りなさい。」
シャロンの目を見てリロたちの顔色が一瞬で真っ青になる。
「勝手に始末しないでね。わたしの元担当者は私が自ら殺すんだから。始末するときは声を掛けてね。私がするから。」
やっちゃんが剣を鞘から抜いたり挿したりしてカチャカチャ音をさせている。ものすごくイライラしているようだ。
「それでは皆さん。ここに立つとそれぞれの場所に行きます。私は恵さんとともに移動しますから、向こうで会いましょう。」
シャロンが俺の方に一歩近づこうとした瞬間に
「あんたはこっち。」
シャロンはレイにヘッドロックされて連れて行かれる。
「しゃ!!シャロン様〜〜〜〜!!」
リロたちが真っ青な顔をしてレイの方に走っていく。その後ろ姿を見ながら俺は丸い緑色の輪っかの上に立つ。その瞬間に俺はベッドの上で目を覚ます。
「おはよう。恵!!」
俺の横に裸のマッキーがいる。そうそう、こっちではこんな感じで寝たわ。