クルクの監視能力のなぞ
「当面は地の神々の行動をしっかり追ってないといけないね。」
ハウンもミシュラも、そしてクルクも頷く。
「じゃぁ、クルク。監視お願いできる?」
「はい。今も魔法で監視しています。ですが・・・最近妨害されます。気がついたみたいな・・・。」
「あなたの魔力を上回ることなんて出来るの〜?もしできるとしたら厄介なのが居るのね〜。」
困っている状況なのにミシュラがワクワクした顔をしている。
「あの・・・ミシュラ様・・・。なぜそんなに嬉しそうなんですか?」
クルクも気づいて気になったようだ。
「え??わくわく??なんのことかしら〜??」
自分の思考の範疇から出るものに対して好奇心を持ってしまうミシュラ・・・。困った性質だな。
「じゃぁ、アッシュは早急に強くなれるようにミシュラが直々に訓練してくれる。だから・・・」
「待て!!ミシュラ??こいつが私の相手をするのか?嫌だぞ!!絶対嫌だ!!いきなり死ぬじゃないか??」
「死なない場所を提供するから大丈夫!!」
俺の言葉に少し考えて顔色をものすごく悪くする。
「なお嫌だ!!どう考えてもそれは地獄だろう??究極の拷問じゃないか??段階っていうものがないのか??特訓というのはそういうもんだろ??少しずつクリアして強くなるんだろ?」
アッシュは思った以上に賢い。俺の言葉に瞬時に気づくとは・・・。なかなか見どころがある。チキンへの道の・・・。
「じゃぁ、アッシュは誰に特訓を受けたい??」
アッシュは周りを見回して
「あれ?いない・・・。どこいったんだ??もう一人真の勇者がいただろう?」
もしかしてやっちゃんのことか?
「あぁ、やっちゃんなら追放したよ。今はこの屋敷に出入りできない。」
俺の言葉に皆が驚いている。
「え??やっちゃん追放になったの??」
ハウンが目を丸くして驚いている。
「え??言ってなかったっけ??レイと一緒に追放されたよ。」
「え??レイも一緒に??なんでですか??」
ミシュラも、ものすごいびっくりしている。
「人の気持ちを考えずに物を言うから。言ったことに一貫性がないから。責任を持たないから。」
その言葉に全員が黙る。なにか言えば追放になる可能性があるからではなく、正論だからだろう。
「でも追放はひどいだろ!!?」
一番最初に口を開いたのはマイカだった。
「レイはたしかにバカだけど!!あいつはお前のことものすごく大事にしていたぞ??その程度で追放するなよ!!可哀相じゃないか!!」
マイカが仮面の穴から涙を流して俺に抗議している。
「マイカは本当に素直な子ね。レイの前ではああだけど、本当は大好きなのね〜。」
ミシュラが笑いながらマイカに言うと耳が真っ赤になっている。仮面の下の顔も真っ赤だろう。
「でも、マイカ。夫婦のことですもの。他の人が口出しはおかしいわ。恵さんも考え無く追放したわけじゃないんだし。」
ミシュラがマイカをゆっくりと抱きしめる。
「でも・・・レイが・・・レイが・・・可哀想ですよ・・・。」
なんか心苦しい・・・。
「あの・・・。アジトがありますけど・・・。行ってみますか??私達が失敗したからもぬけの殻になっている可能性のほうが高いですが・・・。」
フードの女、モアが話す。
「そこはもぬけの殻ですね・・・。今、偵察にやった物から連絡が来ました。」
「偵察にやるって・・・。神々のことで神々以外のものを偵察に行かせて大丈夫なの??」
俺の言葉に笑いながら
「大丈夫ですよ。虫ですから。魔力で意思の疎通は出来ますが小さい虫です。まず偵察しているなんて思わないでしょう。」
「あなた・・・虫と会話できるの??だから蜘蛛とかとなにか仲良くしてたのね??」
ハウンには心当たりがあるみたいだ。鳥肌になっているのはなぜかわからないけど・・・。
「なんで鳥肌になってるの??」
「だって・・・。虫と会話するんですよ??虫なんて気にして生活していますか?何でも筒抜けと思うと怖くないですか??変態ですよ??」
それは使い方によるでしょ??クルクが落ち込んで可哀相なんだけど・・・。
「クルク。俺はその能力いいと思うな〜。今度教えてよ!!」
俺の言葉に目に光が戻るクルク。
「え??本当ですか??よかった〜。わかってくれる人が居て・・・。」
自信を取り戻して自信にみなぎるクルク。それを見てくすくす笑うミシュラ。
なんか重い話をしていた割にほのぼのしてきたな・・・。