マッキーのお仕事8
「ザンダース!しっかり道案内してくれよ??」
気を失って薄ら笑っているザンダース・・・。起きそうにはないな・・・。
仕方なく私は『この国の皇帝』を羅針盤で探しだそうとする。
「・・・あれ??いないな・・・。まさか・・・。」
これはきっとやっちゃったってことだよな??
「仕方ないな・・・。恵で」
羅針盤に恵を指定して探しだすとここより南東に数十キロ行った所に居るようだ。
そこまでなら霧より生まれた巨馬、ジェノスの速度ならほんの数分だろう。
「マッキー・・・魔物がいる。食っていいか??」
ジェノスがのんきに私に話しかけてくる。
「食いたきゃ食え。でも立ち止まるのはナシだぞ。」
漆黒の霧を放出させながら疾走るジェノス。辺り一面真っ暗になるほどの霧がすべての魔物を食い殺す。
いたるところから魔物の断末魔の叫び声が聞こえる。
「ジェノサイドから名前を付けただけに凄まじいな〜。」
あっという間に大きな城壁に囲まれた巨大な建造物を発見する。
「結構な人数いるけど・・・皇帝だけ始末したのか?」
私はそのまま門に向かい、城壁の中に入る。
「マッキーこっち、こっち〜〜。」
レイちんが立って私に手を振っている。ジェノスとともに近づくと
「でっかい馬ね〜。いつから飼ってたの??」
ジェノスが『飼ってた』の部分に気を悪くする。
「女よ、マッキーの知り合いだからといって無礼な言葉を私に向かって吐くな。私はマッキーの能力で生まれし戦闘馬、ジェノスである。」
「話せるんだ〜。私はレイっていうのよ。乗せてくれない??」
「レイちん、ジェノスは私が乗る以外無理なんだよ。一応私の能力で作っているからさ。」
「乗せて〜〜!!」
「乗せるわけ無いだろう?人は人らしく、地べたをのろのろ歩くのがお似合いだ。ふははははは!!ゲフッ!!」
その言葉にレイちんがジェノスを殴り飛ばす。そのまま城壁にめり込んでしまったジェノス。
「マッキーの能力で作っているんだよね??じゃぁ殺してもすぐに出てくるでしょ?」
最近思うんだけど、レイちんは発想が恐ろしい。もし、出せなかったらどうするつもりなのか?まず何度も作れるかどうか聞いてからやってほしい。
「あ、いや〜。同じものは出せないんだけど??」
「え??うそ??能力で出したんでしょ??何で出せないの??」
「えっとね、私の霧を濃縮して馬の形にしているんだけどね。そんなポンポン出せるなら複数出すじゃない??戦闘員としても優秀なんだから・・・。で、どうするのよ??これ・・・。」
ジェノスが壁にめり込んで出てこない。きっとこれは・・・死んだかな??
「もう!!死んでんじゃん〜〜!!レイちん無茶苦茶だな!!もう!!」
「死んでおらんわ!!危うくそうなるところだったがな・・・。」
壁から放出された漆黒の霧が私の横で馬の形を形成し始める。
「この女・・・無茶苦茶だな・・・。」
「これからそういう無茶苦茶なのがいっぱいいるから馬鹿な台詞を吐くなよ?私はここではものすごく弱い方なんだからな。知っていると思ったんだけどな!!」
ハウンとの戦闘訓練の時には頻繁に出している。ハウン以外は初なんだけど、まさかいきなり殺しにかかられるとは・・・。
「マッキー、やっと着いたか。じゃぁ、中に入ってよ。皆待ってる。」
恵が私を見て笑いかけてくれる。本当にこいつはかっこいいな。
「で、俺に会いたいって言っていた貴族は?」
「あ!!」
私が慌てて城壁の瓦礫を除けていくと、そこに気を失った奴隷たちと、瀕死のザンダースが転がっていた。
「ヤバイって!!皆回復魔法かけて〜〜〜!!」
大きな声で城に助けを呼びに行くレイちん。言っとくけど・・・・全部君のせいだぞ??
城の中から沢山の人が出てきて奴隷たちとザンダースに回復魔法をかける。そしてまだなお意識を取り戻さない全員を担いで城に入る。
「馬にくっついているなら言ってよね!!」
レイちんが半べそをかいて文句を言っている。誰が言えばよかったんだ??私か??馬に取り込まれてた奴らか??