マッキーのお仕事6 証拠捕縛
「さぁ早く吐け。お前の依頼者は誰だ??」
女は黙りこんでいる。400ものレベルだ。プロ中のプロだろう。そう簡単には白状しないのはわかっている。
「答えろよ。弱者が強者に捕まれば、どうなるかくらいお前レベルならわかるだろう??」
私は邪悪に微笑んでみる。こんな感じだったと思うんだよな・・・恵の顔は。
「恵と違って死なない空間とか、時間を止めた無限の拷問とか出来ないからな〜。失敗できない。あぁ、手加減が面倒だな・・・。」
「え?恵皇帝はそんなことができるんですか??」
「ん??あぁ、できるぞ。あの男は無敵だ。戦闘能力も高いが、スキルが反則なんだな。どんな化物もあいつにかかればかわいいモルモットだな。にゃははははは。」
何故か恵のことを伝えるときは気分が高揚する。きっとめちゃくちゃ好きなんだろうな〜。ふふふふふ。
「もういいよ。君は死んでもいいよ。私はお前のせいでわけのわからない罵倒を受けたんだからな。鉛筆のように削られてしまえ〜。」
私はまた漆黒の霧でその女を包み、削り取る。
「ぐぎゃぁぁぁ!!あぎゃぁぁ〜〜〜!!!!」
悲鳴を聞いて青ざめていたザンダースが白目になって泡を吹いている。情けない・・・。もう少し強い気持ちをもて。と言ってもボンボンだからそんなもんか・・・。
「おい、私の感知能力を馬鹿にするなよ?まだいるだろう??こんなにひどい目にあっているんだ。助けてやれよ??それともお前は監視か何かか??」
私の言葉に気配が変わる。戦闘態勢か?
「なぜ人ごときが私の気配に気づく??姿を見せなくてはいけないことになるなんて思いもしなかったが・・・。」
「え???その声は・・・姉さん??」
気を失っていたと思っていたザンダースが出てきた女を凝視している。
「ザンダースよ。さっさと死んでいればこんなことをしなくてすんだのにな・・・。まさか弟を自ら始末する羽目になるとは・・・。」
「お前、化物のくせに人の弟がいるわけ無いだろう??どうせどこかで姉と入れ替わっていたんだろ??そういうの好きだよね??ヴァンパイアって・・・。」
「姉さんと入れ替わった??姉さんは??」
「この姿の女か??食ったに決まっておろう??そして皮だけをこうやって利用しているわけだよ。あはははははは!!」
「ヴァンパイアってなんか皆、品がないよな。皮なんか被らなくても姿くらい変われるだろう??正体をばらすときのためにそういうの取っているっていうのが、ものすごく品がない。気持ち悪いんだよな〜。と言っても友達にもヴァンパイアはいるぞ。」
「は??ヴァンパイアの友達??お前は馬鹿なのか??そりゃぁ飼われているだけだよ。餌にしようと思われているだけだよ。こんなバカが入るなんて・・・あはははははは。」
「ダリアはそんなやつじゃないよ。正真正銘のマブダチだな。お前みたいなゴミクズじゃない。」
「はぁ??ダリア〜???私達の仲間でダリアと名乗っているのはミューアスのあいつしかいないんだがな??それとも新参の無知なバカか?」
「ミューアス??根城か??確かミューアス出身だぞ??恵に捕まって一族を皆殺しにされたって言ってたような・・・。」
「まぁどうでもいいわ。ダリア如きの名を出して驚くとでも思っているのか??フンッ!!あんなイカれた奴・・・当の昔に殺せるくらいの力を得ている。この場にいたところでどうってことないわ!!」
「まてまて、ダリアより強いって??お前のレベル500そこそこじゃん。話にならないぞ??無知はお前だろ??バカはお前だろ??力の差もわからない奴がダリアごときとか抜かすな。捕まえてお前をダリアに食わせてやるよ。」
私はすぐその場で漆黒の霧で目の前のヴァンパイアを捕縛する。
「なんだこれは??グッ!!!!はな・・・せ・・・。」
「おいおい、その霧ぐらいは払えよな。それも出来ないのにダリアをバカにするな。」
「ぎぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜!!!」
ヴァンパイアは叫び声を上げて苦しみだす。ザンダースの姉の皮を被ったヴァンパイアは皮が撓んで苦しんでいるのか笑っているのかわからない表情になっている。
「ザンダースよ。もしかして・・・兄弟皆ヴァンパイアなんじゃないのか??」
私の一言にザンダースがこっちを向いて反論する。
「そんなはずはない!!だって、日光にもあたっていたし・・・。」
「この世界のヴァンパイアはな・・・日光大丈夫みたいだよ??」
「え??でも伝承では・・・。」
この世界も私達の世界も、ヴァンパイアといえば日光で死ぬというのが定番となっているが、ダリアは普通に外をほっつき歩いている。青白いっていうのもない。にんにくがダメっていうのもない。あいつに関しては泳げないっていうのがあるらしいが、それは人の得手不得手があると一緒だろう。
「調べる必要があるね?」
「はぁ・・・。」
気の抜けた返事だこと。
「このヴァンパイアは捕獲するけどいい??ある程度瀕死まで追い込んで以前に恵にもらった虫かごに入れるんだな〜。ふふふふふ。」
私は以前、C国が保有する帝国を旅している時に、面白い魔物がいたら捕ってきてくれと言われていて、この虫かごを渡されている。ただ、残念なことに面白いの定義がわからず何も捕まえずにいて持て余していたものだ。アイテム袋は生物は入れることが出来ないが、これなら生物だろうとなんだろうと入れ放題。虫かごにいれさえすればそれをアイテム袋に収容することも可能。ということになっている。
グチャグチャのミンチにされて首から上だけがパクパクしているヴァンパイアを虫かごに入れる。
「こいつはどうしよう?もう殺すか??」
もう一人捕まえている証拠隠滅を図った女のほうを見る。
「殺さないで・・・。もう・・・依頼主がいません・・・。」
どうやら、この女を監視していたザンダースの姉の姿のヴァンパイアは、時期を見計らって、自ら証拠を消すつもりだったんだろう。
「じゃぁ、お前も私の奴隷になるか??顔は綺麗だな??かわいがってやるぞ??にゃははははは」
「マッキー様はソッチノケもあるのですか??」
「ソッチノケ??女もイケるのかってことか??ん〜〜〜??わからない。その辺はどうでもいいよ。」
「で、どうするんだ??」
「生かしていただけるなら・・・。奴隷になります。」
「よし!!じゃぁ言うことを何でも聞けよ!!で、お前の名前は??」
「マイン・・・です。」
「よし!!!マインよ!給金じゃ!!年俸だからな!!その辺の話はライ先輩にでも聞いておけ。いちいち短期間で同じ説明は面倒だしな!!」
奴隷の話は全てライに丸投げをして、私は外に出る。
「お前たち!!止まれ!!これはどういう状況だ??」
「何が??スラムらしい汚い建物があるだけだろう??」
「何を言っている??中で死人が・・・あれ??」
私達のさっきまで居た部屋には何もない。
「何か文句あるか??酔っぱらいの戯言を真に受けてここまで来たみたいだな??ご苦労なこって・・・。」
私は笑顔で兵士の肩をポンと叩く。
「ま・・・まて・・・。」
兵士の言葉を余所に私達は港に向かう。
そろそろ出航の時間だしな。