キシュワード確保
「もう!!レイのせいで下着濡れちゃったじゃない!!」
くすぐり地獄に負けて、少しお漏らししてしまったハウンがレイに怒っている。まぁ当然だね。漏らすほど擽るのはひどすぎる。
「じゃぁ、シュム。案内して。まずは君の上司だね。えっと、名前なんだっけ?クロスワードだったかな?」
「キシュワードです。ワードしか合っていません。それとも阿呆なんですか?」
俺達の会話で俺へのツッコミを心得たのか??冷たくツッコまれる。
「皆捕まえてから話を聞くはずだったからね。それほど重要に感じていないんだよ。それにすぐ死ぬわけだし。」
俺の言葉に顔色を変えるシュム。
「あの・・・聞きたいのですが・・・。あなたが変身していた姿の子はどうなるんですか?」
「リムとか言う子だよね。もちろん死ぬよ。だって・・・」
「あの!!どうか助けていただけませんか??お願いします!!」
「私のこと塵って言ったやつだろ??私が食い殺すからダメですよね?」
「ダリアって同族食べるの??」
俺の質問にきょとんとして答えるダリア。
「へ??食べちゃダメなんですか?人よりは味が落ちますが普通に食べますよ?だって、魔物食べるじゃないですか、私達!!」
「ん〜〜??どうなんだろうね??人族は人族を基本的に食わないからな〜。わからないっていうのがある。もしかしたら人も旨いのかな??」
俺の一言にやっちゃんがヒク。
「そういう経験までしたいの??結構な知識の探求者ね・・・。」
やっちゃんが身震いしながら俺を見る。
「何?その言い方。特訓部屋でやっちゃん殺して食っちゃおうか??」
俺が冗談で言った言葉に
「食べるほど愛しているってこと?それならいいかも・・・」
目をウルウルさせながら俺にまとわりつくやっちゃん。
「うわぁ、変態がここにも・・・。」
レイがじわじわ俺とやっちゃんから離れていく。
「『も』ってなんだよ??『も』って・・・。ハウンのことか??」
その一言にハウンが俺の背中を真っ赤な顔でバシバシ叩く。
「ハウンって変態なの??」
「ハウンは変態中の変態だよね?あ、ゴメン・・・。」
下唇を噛んで涙を目にいっぱい貯めて俺を睨んでいるハウン。
「恵様・・・ひどい・・・」
ものすごい消え入りそうな声で俺を非難するハウン。
「ゴメンゴメン!!本当にゴメン!!」
俺はハウンに謝るがそれがもっと気に入らなかったようで
「そんなに謝ったら私が変態って肯定しまくっていることになるじゃないですか!!」
頬をふくらませて腕を組みソッポを向く。
俺は移動中ずっとハウンにつきっきりで謝り続ける。そのおかげか少し機嫌が治って
「今度デートしてくれたら許します。」
ちょっと照れながら笑うハウン。
「それくらい何度でも!!」
すごい笑顔で俺の腕に飛びついてくる。
「泣いてみるもんだな〜。怒ってみるもんだな〜〜。」
笑い続けるハウンを見てやっちゃんとレイがものすごい羨ましそう。
「私も隙を見せてアレに持ち込もう・・・。」
聞こえてますよ・・・。
キシュワードという男がいた部屋に戻る途中に
「こんなところなかったよね?」
俺がシュムに尋ねる。
「はい・・・。道を間違ったわけでもないのに・・・。ここは?」
シュムの様子を見る限り、どうやら俺達を嵌めようとしているわけでもなさそうだ。
「とんだ裏切り者が出たね。まさかあなたが私達を裏切るとは・・・。」
格好を付けて、大きな階段を降りてくるキシュワードという男・・・。だよね?
「裏切ったのではなく、力あるものに付いて行くだけです。それを裏切りというならば、私は裏切りの人生だったことになります。」
人生って・・・君は魔物です。
「フン!!この空間は私の能力で作ったものだ。この私の能力は、自分より弱いやつだと全く意味をなさない、塵のような能力だが、敵が強ければ強いほど最強になるすばらしい能力だ。と言っても説明はしてやらないがね。」
その言い方でなんとなく想像はつくよ。こいつはアホなのか?
「キシュワード・・・。ここにはどうにもならない強さのものしかいない。諦めて降伏しろ。」
シュムが説得するが
「では聞こう!お前たちの中で一番強いのは誰だ?」
その質問に
「だれ?」
全員が顔を見合わせる。俺達は誰が一番弱いかと聞かれればさっき仲間にしたシュムと言えるが最強は?と聞かれると困る。多分、レイだろう。だが、絶対そうか?というとそうでもない。俺と言ってもおかしくはない。戦闘の仕方を取ればハウンも強い。
「私じゃないのはわかってるけど・・・。レイ??」
やっちゃんが早々に最強の座をレイに渡す。
「私もレイ様に1票。」
メイリーンもすぐにレイの名前を出す。
「そうですね〜。一番怖いのは恵様ですが、戦闘に関してはレイ様ですね〜。」
ダリアもレイ推し。
「私も誰と戦いたくないかって聞かれればレイかな?」
ハウンもそう言っている。
「レイだろうな〜。俺は仲間を傷付けるのは好きじゃないから・・・」
「「あなたが言う??」」
やっちゃんとハウンが同じセリフを同時に言う。俺は気にしないも〜〜〜〜ん!!
「レイです!!」
全員でレイに指を指す。
「え?この女が一番強いの??恵様じゃないのか??」
シュムが驚いている。
「わかった!!じゃぁあなたの強さをいただこう!!」
不敵な笑いを見せて男はレイに指を指す。それと同時に
パン!!
ものすごい勢いで膨らんで破裂した・・・。どうやら器が耐え切れなかったようだ。
「うっわ〜〜〜〜〜、グッロ〜〜〜〜〜〜。」
レイが呆れている。俺達皆そうだろう。
「ば・・・・・ば・・・・か・・・・・な・・・」
「馬鹿はお前だ。」
レイがキシュワードの頭部を踏み潰す。
「レイちゃん。殺しちゃダメだよね・・・。俺の話し聞いてた??殺すのはナシって・・・。捕まえて虫かごだよね?関係者っぽい奴らは・・・。」
「我々はその程度ならまだ生きています。放置されれば死にますが・・・。」
シュムがキシュワードの残骸に向かって回復魔法をかけている。じわじわ元に戻り始める体のパーツ。
「これはこれでグロいわね・・・。」
もぞもぞ戻っていく肉片・・・。じわじわ体の形になり始める。シュムのときとは違い、男の体は戻るのを見ていても不快なだけだな。
それが声に出ていたようで
「うわ〜〜〜。変態街道まっしぐらね。」
やっちゃんの目が俺を汚物を見るかのような目だ。
「そんな目で俺を見るやっちゃんはさぞやまともなんでしょうね??行こうか??ハウン。」
その一言に
「はい!!変態は変態と仲良くってことですね?」
何故か開き直っているハウン。デートが相当効いているようだ。
レイはそこそこ元に戻ったキシュワードを虫かごに収容する。
「1匹ゲット!!何点かな??」
「結構高得点じゃない??俺は2人だよ!!1人はここに出てるけど。」
シュムを指さす。
「あの・・・それはどういうことなんでしょう??」
どうやらこの子にも説明しなくちゃいけないようだ。