久しぶりに
特訓という名の地獄を何回か経験して、俺達は結構強くなる。
基本的に俺ややっちゃん、レイ、ハウン、メイリーンはミシュラが先生をして地獄を味わう。
魔物っ娘や魔物たちはやっちゃんが先生をして地獄を味わう。
マッキーはハウン相手に頑張っている。
魔物っ娘はアレ以来俺を先生に選んでくれない。俺の目を見ないし・・・。ちょっと俺が動くとビクッとなったりする。多分・・・もうトラウマになっている。
俺達はミシュラ相手にそんなふうにならないんだけどね。ある程度したらミシュラに相手してもらおうかな??そうすれば俺へのトラウマも抜けるでしょう。強い経験で塗り替えればきっと・・・。
「久しぶりにジルバームの食堂に行きたいな・・・。」
俺の独り言にやっちゃんがピクッとする。
「実は私も・・・。」
「え??私もさっきそう思ってたよ??なんで??」
レイがびっくりしている。きっと合わせたとかではなく、本当なのだろう。
「おいしいんですか??そこの食堂は。」
ハウンは知らないんだな。俺が弱い時にお世話になっていた食堂を。というより街を。
「街は知っているわよ。恵様が起きなかった時に泊まってた宿でしょ?」
ハウンがちょっと怪訝な顔で言うけど・・・そんなこともあったな・・・。
「皆で行こうよ!!魔物っ娘は留守番になるけど!!」
魔物っ娘は文句を言うのかと思ったら。
「「「「「いってらっしゃいませ!」」」」」
声を揃えてですか・・・。嫌われたものだな・・・。
「じゃぁ、また影武者しといてね。クロエも、お願いしておくよ。何かあったらすぐに連絡してくれればいいからさ。もしかしたらちょっと長くなるかもしれないし。」
俺がそう言うとクロエと俺の姿に化けた魔物が頭を下げる。
「じゃぁ行くよ〜〜!!デュラ〜ン!!」
一瞬で俺達はジルバームの街の壁の外に到着する。
相変わらずのどかでいい国だな、ここは。
街の周りの壁沿いに歩き入り口に向かう。
「ノート拝見。」
「・・・?」
「レイ様??」
俺を素通りして門番がレイのもとに歩いて行く。もしかしてまたアレか??忘れていたけどアレになるのか??
「あぁ、よかった!!レイ様!!ジルさんはお元気で??」
そういや、ジル・・・最近見ないな。マッキーと2人でこっちに戻ってきてからどこに行ったんだろう?
「え??ジル居ないの??私知らないわよ??」
レイが普通に答える。それを聞いて
「えらいこっちゃ〜〜〜!!!」
血相を変えてどこかに行く門番。仕事放置で大丈夫なの??そう思っていると上から2人降りてきてレイに会釈をして仕事に取り掛かり始める。以前のパニックのようなものはないようだ。
「ジルはどこに行ったんだろうね?」
「いつもマッキーといるからマッキーに聞けば??」
「俺・・・マッキーと絶交中。あっちは気にしていないけど・・・。言った手前こっちから話しかけるのもな・・・。」
「私が聞くよ。」
通信機器を使いはじめる。スピーカーにして
「マッキー?ジル知らない??」
「ジルか??ジルは布教して世界を回ってるぞ。レイ様教をな!!にゃはははははは」
頭を抱えているレイ・・・。いつもの事だったな・・・。
「生きてはいるのね??」
やっちゃんが横から口を出す。
「あぁ、生きてるな。私のスキルでもちゃんと反応があるから。」
マッキーのスキルは捜し物を探すのに適している。指定すると方角と距離が出る。素晴らしい能力だ。
「生きているならいいのよ。こっちの人が探しているみたいなの。それでね・・・。」
「ジルに言っておくよ。拠点に一回帰れって。」
「そうして頂戴。お願いね。」
レイが通信をきろうとする。
「なぁ!!恵いるだろ??俺が話しかけないと相手してくれないだろ??だから言っとくぞ。愛してる!!何があっても離れないからな!!絶交ぐらいで私は負けないんだぞ〜〜!!」
最後の『負けないんだぞ〜〜!!』の部分・・・泣いてるだろ。声が変だったぞ。
「許してあげたら??ああ言ってるし。」
やっちゃんが俺に笑いながら見て言う。
「あぁ、俺も愛してる。っていうの??」
何故か皆頷いている。通信機器の向こうからすすり泣く声が聞こえている。
「マッキー。反省してる?」
「うんうん。」
泣きながら返事している。なんかかわいいな・・・。
「じゃぁ許すよ。こっち来る?」
「おう!!いいのか??いいのか?」
『デュラン・・・』
俺の願いでマッキーが俺の目の前に現れる。
「ははは、目が真っ赤だな。」
嘘泣きかと思ったら本当に泣いていたようだ。目の周りをこすりすぎて目が真っ赤になっている。
「女の子を泣かしておいて嘲笑うな。」
マッキーがギュッと俺に抱きつく。
「マッキーよかったね。」
ハウンがそう言うとマッキーがハウンに飛びつく。
「ハウン、ありがとう。」
ハウンにずっと抱きついているマッキー。
「訓練をする空間で訓練半分、相談半分だったの。」
ハウンがバラすと
「言ったらダメだぞ〜〜!!」
顔をブンブン横に振って顔を真っ赤にして泣き始める。
それを見て全員が笑う。
「わらうな〜!!」
ハウンの話を聞きながら俺達は食堂に向かう。
「・・・」
俺達は絶句してしまう。食堂がない!!なんで??
「なんで??」
やっちゃんがものすごい勢いで俺に聞いてくる。俺も知りたい。
「ギルドで聞こう!」
俺がそういった瞬間にやっちゃんがものすごい速度で走っていってしまう。
「はや!!」
感心しているレイ。君はそれほど関心がないね・・・このことについて。
俺達もやっちゃんの後を追ってギルドに向かう。
ギルドに到着すると
「ちょっと!!なんで定食屋『緑』がなくなってるのよ!!」
ギルドの受付の男の胸ぐらをつかんで聞くやっちゃん。
「弥生様・・・放してください。く、くるし・・・」
ハウンが慌ててやっちゃんと受付の男を引き離す。
「やっちゃん!!殺す気?今のあなたは一般の人にそんなこと出来ないはずよ?殺してしまうわ!!」
その言葉に我に返るやっちゃん。
「ご、ごめんなさい。・・・何で『緑』がなくなってるの?」
ハウンに羽交い締めされながらも、落ち着きを取り戻しながら聞いてみる。
「緑のご主人が・・・」
亡くなったのか??
「店舗拡大をいたしまして・・・元あった場所ではなく、少し東に・・・。」
「・・・なんだ・・・よかった・・・。」
やっちゃんが床に座り込む。俺もホッとした。
「で、どこに??」
レイは至って冷静だな。
「ええっと、説明しにくいので地図を購入してください。」
販売促進かよ!!そう突っ込みたいところだが、仕方ない・・・。
「また、あの地図??」
「また??地図を持っているのですか?どのような??」
俺はアイテム袋からこの街の地図を出す。もちろんあのちょっとお高い便利地図だ。
「あぁ、これをお持ちなんですね。これなら新たに購入していただかなくても大丈夫です。聞けば答えてくれますので。」
よかった・・・また買わないといけないのかと思った・・・。