俺に名誉挽回の機会はあるのか?
ユクや他の調査に参加していた魔族が皆無事で俺は気が抜けて呆けている。
魂が抜けているとはこのことだろう。もう・・・燃え尽きた〜という感じがするくらい脱力と無気力に襲われている。何も燃えたわけでも、やりきったわけでもない。ただただ自分の失態のすべてが最悪の結果になっていない運要素だけの展開。
「ねぇ、恵くん、そろそろこっちに戻ってきてよ。虫はまだ生きているのよ。」
やっちゃんが俺の前に来て腕を組んで俺を見下ろしながら言う。
「やっちゃん・・・黒いパンティ見えてるよ・・・」
そう言うと俺の顔にパンチする。
「もう!!心配して損した!!全然元気じゃない!!もう!!」
牛のようにモウモウ言っている。そろそろ俺も会議に参加するか・・・。
俺は立ち上がって皆がいる所に行く。
「なにか決まった?」
「ええ、決まりました。さっきの空間に虫を隔離して皆でどつきまわすことになりました。恵様も参加しますよね?ストレス発散に。」
「ストレス発散??なんで?」
「え??メグミはストレス抱えてるでしょ??自分が失敗してイライラしてるでしょ??」
レイが首を傾げているが意味がわからない。
「失敗したり失態をおかしたりしてもイライラしないでしょ??あ〜〜やっちゃった!!どうしよ〜ってなるだけで。」
「そもそも原因があるならそれに対してはイライラするでしょ??」
「原因は自分にあるでしょ??ミスは人や物のせいじゃない。自分のせいだよ?反省しないと。どう考えても今回のことは俺の浅い思考の問題。きっと自分が強くなって自惚れていたんだろうなと。」
俺の言葉を聞いて闇の神々とクルクはウンウン頷いてくれる。
「何この意識高い系の思考。ちょっとウザいな。」
マッキーが冷たく言ってくれる。
「そうね。ちょっとできる男を気取った発言が鼻につくわね。」
やっちゃんが何故か俺の発言に嫌悪を示す。
「メグミは真面目だよね〜。そういうところも好きだよ〜。」
レイは取り繕ったかのような発言。
「恵様は真面目に考え過ぎです。たまには自分に甘くするのもいいと思いますよ。」
ハウンが俺にもう少し自分に甘くしろというがそうしていると堕落した人になってしまうだろ?
「そうだね。自分に甘くするよ。まず自分のムカつく対象に怒りをぶつけてみるね。」
そう言って俺は
「マッキーは減点10。接触禁止1ヶ月。やっちゃんは減点50。接触禁止3ヶ月。部屋を取り潰し!!」
「「な!!」」
ざまぁ〜。
というわけで虫の退治にとりかかる。
「デュラン、ここに封印されていた虫をすべてさっきの芋虫のいる部屋に隔離して。」
「ちょっとまって!!あの芋虫とは別で隔離して!!」
「なんで??」
俺はレイの意見に率直に『なんで』をぶつけてみる。
「あれ・・・なにかいいアイデアが浮かびそうなの!!だから全部殺さないで!!」
あぁ、なんか大きな声で『あ〜〜〜!!』って言ってたようなこともあったような・・・。
「じゃぁ別の部屋に。あと、どこまでも移動できないようにめちゃくちゃ広い部屋っていうのはナシで。マッキーは先に俺の屋敷に帰っておいてね。」
そう言って俺達も虫の閉じ込められている部屋に移動する。
繭が5つに成虫が・・・4匹??多くない??
「これは・・・1匹ずつ相手にしたほうがいいのでは??」
青ざめる闇の神々。クルクなんか顔が引き攣っている。巨大な虫が取っ組み合いをしている。何かの特撮のような感じだな。
虫の見た目は・・・巨大なカブトムシ?クワガタ??中脚にゴカイのような気持ち悪いにょろにょろした生物、後ろ足がバッタの脚をもっと太くしたような、そして凶悪なほどにトゲトゲさせたような・・・。前足はカマキリのようなシャコのような感じの極太のものがついていてその関節部分に甲冑の篭手のような人の手がついている。
「ここは俺の縄張りだ。向こうへいけ!!」
「ここは私が先にいたんだ!!向こうに行け!!」
「邪魔をするな!!」
「俺の腹の中から食い物が消えた!!返しやがれ!!」
まぁ、お互いが邪魔なようだ。芋虫時代から共食いしているんだからそうなるわね。
「1匹焼き殺してみるけどいいわよね?」
ハウンが皆に聞いているけどいいんじゃない?
答える間もなくハウンは目から周りの光を集め始める。
「ゴミども・・・消え失せろ!!」
取っ組み合いをしている2匹の虫型超大型魔物に光線が当たるととてつもない大爆発をする。
煙で生死の確認が出来ない。
「見えませんね!!これでどうですか??」
クルクが突風を吹かせる。
煙が散り、2匹の虫型の超大型魔物の姿が見える。上半身と呼べばいいのだろうか??吹き飛んでいる。
「殺せるわね。なんなく・・・。」
ハウンの顔が元神々とは思えないほど邪悪。
「どれほど長い年月後悔で心潰されそうになったことか・・・この苛立ちをすべて貴様らクソムシ共にぶつけてくれる!!」
第2弾を準備しようとするハウンにやっちゃんが
ボフッ!!
ハウンの目から火花が出るのが見えた。やっちゃんはハウンの頭に思いっきりチョップしたのだ。
「いった〜〜〜〜〜ぃ!!」
頭を抑えてうずくまるハウン。
「ちょっと!!ハウン!!口が汚い!!あなたらしくないわ!!お姉さんならお姉さんらしくしなさいよ!!」
「本音は私も暴れたい・・・ね。」
レイが横から付け加える。それに驚いた、変な顔をするやっちゃん。図星でもその顔はよせ!!
「物理攻撃は無駄ですよ。強力な魔法を使えるのですか??彼女たちは??」
俺に闇の神々が聞くが俺は知らない。
「俺は魔法からっきしだからな〜。彼女たちは・・・どうなんだろ??知らない。」
そう言えば俺はレイややっちゃん、メイリーンが魔法を使って戦う姿を見たことない。
「恵くん。真の勇者はね・・・魔法も使えるのよ。しかも強力なのがね!!」
真の勇者は使えるんだ。似非勇者の俺は・・・
「あなたも使えるようになるはずよ。ただ・・・勉強しないとね。」
「どうやって??」
俺の質問に
「チャンスはあったでしょ?レイリーもいるし、そこにクルクもいる。お父様だって魔法で言えばそこそこよ。」
「お父様はそこそこなの??」
「まさか、ゾルミスはそこそこなんてレベルではないですよ。今の魔王は魔王核があるから最強ですがなければゾルミスの方が上でしょう。神々を始末するほどですからね。」
魔王核・・・そういやレイに聞いていなかったな。それがなんなのか。お父様は強いんだ・・・そう感じさせないのがすごいってことなのか???
「まさか!!あのお父様が魔法最強??そんなところ見たことないわよ?絶対そこそこよ!!」
何故か震えるほど怒っているレイ。お父様が強いのがなぜそこまで嫌なんだ??