俺の失態
「なぁ、デュラン。芋虫居ないけどどこにいるの??」
「芋虫??いるだろ??よく見ろ!!100体ほど散り散りになっているけど移動しているぞ。」
100体もいるのか??でもどこに??
「メグミ〜〜!!いたよ〜。」
両手に芋虫を掴んで持ってくるレイ。
小学生がカブトムシを捕まえて走ってくるかのようだ。
その芋虫を床に置くと一番弱いと思われるマッキーに向かって突進している。マッキーの装甲にも勝てずに体に当たるとそのまま跳ね返って床に転がる。それを数回続けて勝てないとわかると何もなかったかのように移動し始める。
「こいつ・・・私をバカにしているよな。この中で一番弱いと思ってかかってきてたよな!!」
怒りに任せてマッキーが芋虫を脚で踏んづけている。
「何この感触〜〜!!ちょっと気持ちいいんですけど〜〜!!」
踏みつけながらエロい顔をしているマッキー。
「「え??マジで??」」
眼を輝かせてレイとやっちゃんまで芋虫を踏み始める。
「何この感触!!たまんな〜〜い!!むにゅむにゅする〜〜!!こう言うストレス発散グッズ欲しかったのよね〜!!あ〜〜〜!!」
レイとやっちゃんが顔を見合わせてお互いを指さしている。何が「あ〜〜〜!!」なんだろ?
「芋虫は確かにいるみたいだな。でも小さくない??デカイのは??」
「デカイの??どれくらいをデカイと取るのだ??」
デュランがデカイのもいるような反応をしている感じもするけど全く居ないようにも感じる。
「ルナリスさん、大きい芋虫ってどれくらい??」
「大きい物ですか??そこそこのものでも数十mほどありますよ。大きいものだとヘタすると1kmほどのものも。」
「だってさ、デュラン。それくらいのやついる??」
「居ない。大きい物で1mほどだぞ。」
「まさか・・・すべて繭に?」
ルナリスの顔色が悪くなる。
「まさかと思うけど・・・デュラン・・・芋虫以外であの大陸に残っている虫は居ないよね?」
「えっと・・・芋虫をここに閉じ込めろと言われたから芋虫だけだぞ。芋虫以外にも居たのか?」
俺は大失態を犯したようだ。
「ピピピ、ピピ、ピピピピピ・・・」
「なに??レイリー??どうしたの?」
どうやらレイリーから連絡が来たようだ。
「スピーカーにするね。」
レイがなにかイジっている。そうすると
「姉さん、兄さんいる??もしかして第5大陸で何かしでかしたとかある?いきなり現れたけど。」
俺の大失態はもうひとつ合ったようだ。
「もしかして俺・・・とんでもないことしでかしてる?」
俺は今、急速に気分が悪い。きっと顔色もすごく悪いだろう。
「兄さんが関わっていないならいいんだけど、今いきなり不明になっていた第5大陸が現れて部下を何人か調査にいかせたんだけど、連絡が来ないんだ。何かあったのかな?と思って。」
「調査に向かったのは誰??」
レイが聞き返す。
「皆結構な手練だよ。ユクを隊長に10名ほど。イケると思ったんだけどな〜。」
どうやらユクが行方不明になっているらしい。
これはかなりヤバイかも・・・。
「その大陸にはヤバイ魔物がいるんだよ!!連絡が取れたらすぐに帰るように言ってくれる??」
俺が泣きそうな声で言うと
「ははははは、兄さん、狼狽し過ぎ〜」
笑い声をあげながら連絡を断つレイリー。なんかあの緩さが初めてムカついた。
「ユクがヤバイみたいだね。すぐに向かわないと・・・。」
レイが腕を組んで言う。
「どうやらあそこからルナリスを移動させたから封印が解けたんでしょう。多分、あの大陸にいた虫ごと元の世界に戻ったんでしょう。もう、餌を求めて動き出しているかも・・・。」
ハウンが冷静に分析してくれる。俺の気持ちを考えてくれ〜。
「ここにいる芋虫は放置でいいとしてすぐに向かったほうがいいわね。幼虫の時に食えば食うほど強くなるというのであればユク位強い魔族を取り込んだら化けかねないわ。」
やっちゃんが恐ろしいことを言う。ユクよ!!無事で居てくれ!!
「じゃぁ、ユクの泣き顔見に行きますか〜〜!!」
レイが面白がっている。こいつのそういう感性が俺には理解できない。
「デュラン!!すぐに俺達を第5大陸に移動してくれ。」
俺達は第5大陸に降り立つ。そこには巨大な繭が転がっている。もう・・・中身がない。
「馬鹿な!!こんな目立つ所に繭はなかったはず・・・。何でこんな所に??」
ルナリスが驚いている。
「あなた・・・どうやら誰かがここに運んだみたいですよ。繭の固定糸に千切った後があります。」
ルナリスの妻、テレサが観察分析を行っている。俺の気持ちとは裏腹に皆のんきなのは何で?
「マッキー!!今すぐ、ユクを探してくれ!!」
「お〜!!恵が私に頼み事か〜??高く付くぞ〜!!」
「何でもいいから探してくれ!!」
「えぇ〜〜〜っと、言いづらいけど・・・見つからない。」
「え?」
「言いにくいんだけど・・・私の能力で指定して見つからないってことはだな・・・死んでるってことだな。」
「ははは、まさか・・・ユクが死ぬってことはここにいる人はほぼやられるよ。ははは、ありえないって。」
レイが笑っているけどちょっと泣きそうになっている。俺はもちろん泣いている。
「成虫は戦闘力が非常に高いです。力の神々であるミシュ・・・」
「あぁぁああぁぁ!!」
ハウンがでかい声でルナリスの言葉をかき消す。それと同時にハウンがルナリスを引っ張っていき遠くで話をし始める。俺もレイもそれどころではないんだけどね。
「魔族の人たちは??どこかに隠れていないか??」
「魔族ね・・・魔族。えっと・・・いるけど・・・どうする??」
「救出しに行くに決まっているだろ?どこだ??」
「ここから100kmほど先にいるみたいだぞ。どうやって行く??」
「行くじゃない!!すぐにここに呼び出す。」
俺はデュランにお願いして魔族の方々を呼び出す。
「ここは??ん??レイ様??」
魔族の姿を見てレイが抱きつく。
「無事でよかった!!無事でよかった!!」
すごい泣きながら抱擁される魔族。状況が全く掴めていないようだ。
「ユクは??ユクは??」
「ユク様は・・・魔物に食われました・・・。」
やっぱり・・・どうしよう・・・。俺のせいだ。
「デュラン・・・。ユクをここに・・・」
俺はユクの亡骸だけでも、少しだけでも遺品を回収しようとデュランに頼む。
「ん??ここは??」
あれ??ユク本人が生きたまま出てきた・・・。なんで??
「何であんた生きてるのよ?泣いて損した!!」
なぜかレイがユク相手にキレている。素直に喜べよ!!
「いや〜、食われた!!と思っていたら変な空間にいてですね・・・。数名で中を捜索していたら急にここに・・・。で、他のものは??」
俺はまた大失態をした!!
「デュラ〜〜〜ン!!」
「わかっておる!!ちょっとまて!!」
そうやりとりしていると、数名の魔族もこの場に現れる。
「ユク様!!いきなり居なくなるから心配しました。ご無事でしたか!!よかった!!」
魔族は皆無事だ。良かったよかった。
俺は今回のことで自信を消失している。
大きな失態を続け様に3つもやってしまった。・・・俺はやっぱり・・・馬鹿なんだな。