持ち込みOK
追試だよ。(落ちたやつ)全員集合!!
なんとも言えない空気の中、俺は田村さんをなだめた後、自分の教室に行く。
なだめていたのが気に食わなかったのかレイは頬を膨らましている。
あの状態で俺にどうしろと?
そういや、レイのクラスってどこなの?
そう思っていると同じクラスでした。
教室に入ってのレイの第一声は
「私の机がない・・・いじめ??」
泣きそうなふりをしながらそう言う。
「俺!!先生に言って机と椅子の用意するわ!!」
ものすごい勢いで飛び出していく数名の男子クラスメイト。
早くも召使や奴隷のようになってしまっているではないですか!
すごい速さで机と椅子、そしてロッカーなどが用意される。
その辺りは願いで何とかしておけよ。
どう考えても矛盾だらけだろ。
女子たちはヒソヒソなんか言ってるぞ!!
そしてチャイムがなる。
学校の始まりだ。昨日も行っていたのになんか久しぶりのように感じる。
昨日?の死にかけたせいだろうか?
どうなんだろ?日付的には昨日??今日??わけわからん。
というより時間が変なのだ。
寝ている時間は8時間無いくらいなのに体感は16時間くらいある。
きっとこっちの世界でも16時間は起きて過ごすのに起きたら8時間位になっているんだろう。
じゃないとおかしなことになるもんね。
それとも、こっちが正規の世界なのだから向こうの時間は16時間経っているのだろうか?
う〜〜〜ん。
さて、気を取り直して授業を受ける。
進学校であろうとやることは変わらない。
ある程度の体育があり、授業の進むスピードは早いとはいえ、ごくごく一般的なことしか言わない教師たち。
入試の裏ワザ言ってくれたり、効率の良い方法をいってくれたりはしない。
その辺りはもう習得済みだろ?的な感じである。
そして放課後・・・というより追試の時間である。
英語の追試は50分。
問題が配られスタート。
・・・
あれ??
わからない単語が全くない。
というよりもう、母国語である日本語と変わらないくらい理解ができる。
なんで??
楽勝なんだけど??
書く方は単語に悩んだりするが読む方は全く困らない。
これ、もしかして・・・。スキルのおかげか??
スキルの持ち込みは大丈夫なのか?
不正じゃないのか??
そう思って解いているうちにあっという間にテストが終わる。
時間に余裕がありまくる。
でももう終わっている。
そして時間も終了。家に帰ろうと靴箱に行くと
「お疲れ様!どうだった??」
レイが待っていてくれて追試の労を労ってくれた。
下駄箱にもたれて待つ姿は見惚れてしまうほど美しいし、おれの夢のシチュエーションだ!
「いや、簡単だった。あれ、スキルのせいかも。」
「そうだね!スキルのせいでこちらの言葉の大半は理解できるね。」
にこやかに笑って答えてくれた。
レイは知っていたようだ。
レイの説明では言語は文字には意思を伝えたいというものが含まれているらしくそれをスキルが読み取って脳に直接理解させるらしい。
要するに意思さえ込めて書けばどんな難解なものでも理解できるということ。
会ったことも、聞いたことも、見たこともない言語に触れても理解できるすぐれものなのだ!!
ということはだよ、
みんな違う言葉で話していてもスキルがあれば会話ができるということなのだ。
スキルのない人からすれば何言ってんだ?こいつら??となるんだろうな。
でもレイはいろんな人と会話出来ている。
それはなんで?
スキルがあればレイはいろいろな人と会話できる。
だがスキルのない人はレイの言葉を理解できないはずだ。
その疑問をぶつけると、
「難しく考え過ぎだよ。」
あっさり誤魔化された。レイにもわからないんだろう。
まぁいいや、うちに帰ろう。
そう思いつつ2人で門の方向へ歩いていると
「遅いな、恵くん!!何やってたの?」
という言葉をかけてくる、田村さん。
正門の横の壁にもたれて待っていたようだ。多分前の俺なら飛び上がって喜ぶ場面だろう。
田村さんは何があっても話をしたいようだ。
正直、放っといて欲しいんだけど。
好きだった女の子が待っていてくれたのに、もう心躍らない自分にびっくりしながらも、ここをどう切り抜けるか思案している。
「あぁ、待ってたんだ。で、これからなにかするの?」
ととぼけてみるが
「え!?話するんでしょ?その子のこととか、旅人のこととか。」
「いや、別にこれと言って説明することないんだけど。」
そう素っ気無く答えると、
「え??なんで?そんなに私のこと信用できないの??もしかしてその子に脅されているの??この子も旅人なんだよね。なんでこんなに広範囲にマインドコントロールして、さも『普通にいました』っていう態度なの?おかしいでしょ?学校すら通っている。恵くんの家族も違和感なく生活している。すごくおかしいよね。私は誰にも聞けないし言えないんだよ?苦しいよね??それなのに何も話してくれないの?」
もうすごい勢いで問い詰めてくる。
涙浮かべてまで、俺に詰め寄ってまで、聞きたいのか??俺の情けない話。
「面倒だから話してあげれば?」
レイが簡単にそう言ってのける。
「この子もそう言っているんだから、今からうちにおいでよ!!」
涙をグシグシ拭いながら俺とレイの腕をつかむ。
この子、力半端ないな・・・。
そう感じながら、引っ張られていく。俺とレイ、そして田村さんは、田村邸へと足を向ける。
幼なじみのことはもう好きではないらしい。
あれほど恋焦がれていたのにな〜。