ハウンの昔話3
最高権力者とその国の人々、ありとあらゆる生物は何もすることなく虫の腹に収まってしまった。
そしてその虫は海を渡ることなく大陸にいるすべての生物を食い、大きな繭を作って動かなくなった。
そこに生の神々と闇の神々が降り立つ。
彼らは繭のなかの蛹を殺そうといろいろ試してみるが全く歯が立たなかった。
「私達神々も、最初から無敵ってほど力を持っていたわけじゃないの。例外も居たけど。生まれた瞬間から力を持っていたのは、力の神々、死の神々、その二人だけ。私達は年齢と共にレベルが上がり、今に至っているの。」
ハウンが神々の強さが年齢に比例していると教えてくれる。
「じゃぁ、お母様のターゲットはその力と死の神々ね・・・。」
レイがワケのわからないことを言っている。その言葉を聞いて笑いをこらえているミシュラ。レイは絶対このまま一生、自分のお母様が力の神々と気づくことはないと思われる。
生の神々と、闇の神々は力のある神々にお願いしに行った。
ここから先は記録とかではなく、私達が体験した話。
この時代にもう力のあった力の神々に頼みに行ったら
「繭で引きこもっている無抵抗な虫を殺せと?なぜ??出てくれば強いんでしょ??出てきて相手する程の楽しめる相手なら遊んであげてもいいですわ〜。」
ミシュラの口調に似せるな!バレるだろ?
死の神々にお願いしに行った。
「生まれいでた物に死を与えるのが私の仕事だが、その時でもないものに自ら出向いて死を与えに行くのは私のポリシーに反する。例えお前の頼みであっても聞けないな。」
二人共に断られた。
生の神々と闇の神々は最古の神々に全員集まるように頼む。
その時に集まった神々で話し合い、虫のことを調べることになった。
そしてその虫の正体が明らかになる。
神々の調査でわかったことはこの虫は自分たちを作った神がここで生ある星を作成する前の何もいない星に衝突した星すらを食ってしまう魔物、通称『星喰』であること。
『星喰・・・安直だな・・・。』
その虫によってかなりの星々が食われてなくなっていることなど、調べれば調べるほど、恐ろしい魔物だった。
生命のない星に来たせいで成長できずに化石になっていたのを人が掘り当ててしまい、目覚めさせてしまった。
「生まれでてしまったら取り返しが付かない。死の神々と、力の神々は私達に力を貸してほしい。このままではこの星の管理を任された私達が無能ということになってしまう。」
神々たちは虫の繭のところで集まり虫の始末にとりかかる。
「ピシィ!!」
神々の準備の途中で繭にヒビが入る。
「マズい!!羽化してしまうぞ!!」
闇の神々が言った瞬間に力の神々が繭を真上から叩きつけて繭の破壊にとりかかる。
繭から液体がドバドバこぼれながら山脈の方にバウンドして飛んでいく。山々の木々をなぎ倒しながらバウンドしながら転がり、中身がドロドロになってこぼれ始めた。
「まぁまぁ、すごい液のようね〜。これで死んだのかしら〜?」
力の神々の言葉の後すぐに
『お・の・れ』
「あらあらお話できるのね?お話で解決できるなら殺しはしないわよ?出てきてお話する?」
「食料の分際で・・・」
羽化したての虫は会話ができるようで、私達神々を前にしても怯むことなく戦闘態勢に入る。
構えると同時に潰れた体が再構築され、力の神々に襲いかかる。
「まだまだね。この程度では面白くないわ。後何年待てばあなたは強くなるの?」
口を抑えながら微笑んでいる力の神々。
星を食うほどの魔物でも戦闘能力は力の神々の足元にも及ばなかった。
口を閉ざし、黙々と力の神々にかかっていくが全く相手になっていない。
「大きな体なのに、情けない子ね。」
力の神々が虫の頭を無造作に千切る。
闇の神々も、生の神々もその戦闘の終焉を見て、安堵のため息をつく。
「力の神々、あなたに感謝します。」
二人の神々は力の神々に深く頭を下げて感謝する。
その時
『ブチュブチュブチュ・・・』
星を食らう魔物の体から幾千もの芋虫が生まれ出てくる。
それを見た神々は脚で踏んで殺そうとするが傷つけることが出来ない。
力の神々も踏んでいるが弾力があり踏んでも踏んでも元に戻り、殺すことが出来ない。
生まれてきた芋虫が親虫の遺骸を食い始める。
少し食ったら脱皮を行い、少し成長する。
少し食ったら脱皮をして、じわじわ大きくなる。
それを繰り返し始める数えきれないほどの芋虫達。
「これが全部、あの成体になったら、取り返しが付かない・・・」
最古の神々が思案していると、ある程度大きくなった芋虫がそれぞれすごい速さで土の中に潜り始める。
「逃してはダメだ!!今すぐ何とかしないと、この世界が壊れてしまう!!」
生の神々が途方に暮れる。
闇の神々が何かを唱え始める。
「皆さん、私はここでお別れのようです。私の術を使い、この大陸すべてを封印します。今すぐに退去してください。私諸共封印するのですぐにここから退去してください!!」
大きな魔法陣と共に巨大な大陸が光に包まれる。それを見た神々たちはすぐにその場を離れ、海の上で大陸を封印する状況を眺めている。
「ハウン、あなたの相方は未来永劫あそこであの虫を相手し続けるんですね・・・。」
力の神々は、まだ力の弱い光の神々の方を抱き寄せて涙を流した。
光が大地に収束していき大きな闇が大陸とその周辺の海を飲み込み始める。
そして大きな穴が海にぽっかり開いている。
海の水はその穴に落ちていくわけでもなく、何もないかのように穏やかに波立っていた。
「だから、大陸がないの。」
そう言って話を終えるハウン。
「皆甘く考えてたのよね。たかが虫って。まさかあんなにヤバイものだったなんて・・・。」
ミシュラがそんなこと言っているが、さすがにその言葉でレイも気づくんじゃない?
俺がレイに目をやると・・・寝てやがる・・・。
レイはミシュラが力の神々だと気づく最大のチャンスを今、棒に振ったんだな・・・。