ハウンの昔話2と言いたいけど脱線中
「生の神々がいるってことは死の神々も居るの?」
レイが不意に質問する。
「ええ、いるわ。」
「どんな人??男??女??」
「女よ。生の神々が男で、死の神々は女。そして闇の神々は男よ。対になっているものは男と女に分かれているの。地の神々が男で海の神々が女なのと同じように。」
「繁殖するために?」
「それはどうかしら?闇の神々はたしかに男前で、すごく感じのいい男だったけど・・・。ほら・・・私、暗いの嫌いじゃない?」
そう言って笑うハウン。そういう問題なんだ・・・。
「そういや、対の神々のこと、それぞれがあんまりいい感じになっていなかったわね。どの対も仲が悪いって感じでもないけど出来ているって感じはもっとない。」
ミシュラが中に入ってくるがそんなこと話して大丈夫なのか??流石にアホなレイでも気づき始めると思うんだけど。
「え〜、お母様って他の神々とも面識あるの??喧嘩仲間??」
どうやら、一生気付きそうにない。そう俺は思ってしまった。
「私と喧嘩するような神々はいなかったわね。だ〜〜れも相手にしてくれなかったわ。とてもさみしかった・・・。もしかしていじめだったのかしら?」
悲しい顔をするが、どう考えてもいじめとかではなく純粋に死にたくないだけだと思う。
「ミシュラに戦い挑む馬鹿な神々はいないわね。神々と言われるだけあってそんなバカはいないわ。一応神々だから・・・。」
そう言いながら何故かドンドン落ち込んでいくハウン。
「私ってバカなんだ・・・。」
すごい小声でブツブツ言っている。何かを思い出したようだ。
「ほら、あのさ!!ハウンはもう神々じゃないもんね!!」
「そう!!そうよ!!神々じゃないんだもん!!たまには羽目も外さないとね!!」
羽目をはずして大バトルになったんだけどね・・・。
「あの・・・いも虫どうなったんですか??」
なぜか俺の後ろにミューとミドラがいる。ミドラとミューは俺の願いを叶え続けるデュランというランプの魔人の娘たち。最近全く姿を見なかったが元気そうだな。
「あ〜しは歴史大好き!!そんな昔の話を聞けるチャンスなかなかないからな!!あ〜しもお話きかせてほしい!!お願い!!聞いていていいだろ?」
「ん?いいんじゃない?ミューもこう言う話好きなの?」
「え〜〜〜っと・・・あんまり興味ない。」
どうやらノリでくっついて出てきてしまったようだ。
「クロエ、この子に何か食べ物用意してあげて〜。」
俺の一言に大慌てでテーブルや椅子、そして食事に準備をし始める屋敷の人々。なんかごめんね。
「じゃぁ、お話楽しく聞いてくれる人も出てきたから俄然話をする気分が乗ってきたわ〜!!」
どうやらハウンは俺達があまり楽しそうでないことにうすうす気づいていたようだ。そういう所にすぐ気づくのは女性として素晴らしいと思うが、少し気の毒に感じる部分でもある。レイくらい空気読まないほうが絶対人生は楽だろう。
そう思っていると
「そろそろ目を覚ませ!!」
思いっきりやっちゃんの頭にチョップするレイ。
「いっっっった〜〜〜!!」
涙目でレイととっくみ合いしているやっちゃん。どうやら目覚めたようだ。面白くもない話を聞かされる仲間が増えたようでよかった。
「じゃぁ、話を続けるわよ。」
ハウンが脱線から戻って話をし始める。
芋虫を最高権力者に隠れて無断で放ってから数カ月。
その森の周りには全く魔物を見なくなった。
芋虫を放った森にはかなり強い魔物がうじゃうじゃ居て、それらに食われて死ぬだろうという考えで放ったのだが、その芋虫を放ってから数ヶ月程度で森は一切の生の気配を断ってしまったのだ。
理由はわからないながらも魔物の消滅に森の傍の町の住人は非常に喜んだ。
外に出ても安全だし、何より開拓をしやすくなる。
喜んで町を取り囲む塀の外でドンドンと開拓をしてドンドン発展していった。
それから数年、町は、巨大な街になり、やがて国となった。周りの国々もその森の傍の国がこれから発展してもっと大きな国になるであろうと思われていたのだが、ある日突然、国民がいなくなったのだ。
国を守るいい気な城壁に空いた大きな穴、そして城壁のすぐ近くの地面に空いた大きな穴。それを残して、これからと思われていた国は滅んでしまった。
近くの国から調査団が派遣され、調べてみても何も出てこない。人の死体や、血の跡なども一切出てこない。人だけでなく家畜や、従魔も全ていなくなっていた。
地面の穴に調査が及んだが、穴の中には何もなく、穴を進んでいった先は生物の居ない森のど真ん中だった。
国が滅んで調査してから数日、再調査に出かけたものが帰ってこなくなった。その再調査の一団の中に権力者の娘が居たらしく、すぐにその娘の捜索に軍人を使うことにした。
かなりの人数を再調査の場所に送ったが誰も帰ってこなかった。
大きな事件になり、そのことが最高権力者の耳に入る。
実はこの最高権力者は芋虫を森に逃したことを知っていたのだ。
あの芋虫が何なのか知りたくて、信用できないものに始末をさせ、思惑通りにどこかに捨てさせることに成功したのだ。実験のために。
そして、自ら調査団を結成し、その芋虫の正体を掴むべく、芋虫探しを開始。
「あの魔物は神々すら恐れおののき、手放せというほどのもの。飼いならすことができれば神々をも従わせることもできるかもしれない・・・。」
そんな愚かな考えを持っていた。
自分が考えた最高の調査団。
魔物を従わす能力のあるもの。
圧倒的な武力のあるもの。
生物に詳しい学者たち。
空から調査できる飛竜隊など。
自分は危険の及ばないところで吉報を待ち続けた。
ずっと・・・。そして悪夢がやってくる。
超巨大な虫型の魔物が大陸に住む、すべての生物を食らいながら最高権力者の国までやってきたのだ。