ハウンの昔話開始。
「あの〜、恵様。あからさま、私に向けてはいけない思想を持ったでしょ?」
なぜわかる??顔に書いてあったのか??
「イエ、カミガミモボケルノカ?ナンテオモッテマセン。」
ハウンは俺の棒読みに大きなため息を吐く。
「別にボケてませんからね。その場所にはすごい昔大きな大陸があったの。昔も昔よ。レイは生まれていないし、それどころか魔族すら生まれていない。そんな時代。」
ハウンの長生き加減がよくわかる。魔族もいないような昔の話をし始めるハウンに
「もしかして長くなる?」
レイが怪訝そうに聞く。
「そりゃ長くなるわよ。だって、数ま・・・あぁぁぁ!!」
頭を抱えて蹲るハウン。それに意味を察したやっちゃんが
「歳バレしそうになって蹲ってるけど、皆なんとなく知ってるわよ。創造主に作られた最初の神々なんだもん、もしかして数億歳?」
「そんなには生きていないわよ!!というより何で数億??」
この世界ができてどれくらい経っているのかはわからないが俺達の世界が出来てから数十億年は経っているんだからここもそれくらいは経っていると思うのが普通でしょ?
「俺達基準だとね?」
俺がやっちゃんの方に目をやると
「そうよ、私達の世界の人なら星が出来た時からと思ってしまうから。だから最初に作られた神々もそれくらいかな?と。」
「違うわよ。この世界は・・・言っていいのかしら?」
どこかを見上げて唇を押さえながら考えているが何を思っているのだろう?しばらく考えて
「このへんはオフレコでお願いね。とくにミシュ・・・」
「ハウン、それ以上話すと死ぬわよ・・・。」
「ヒッ!!」
いきなりのミシュラの登場と発言でハウンが変な声を出しながら飛び上がる。
「お母様??なにか知ってるんですか?」
レイもいきなりの登場にびっくりしている。
「あぁ〜、もう、ハウンが馬鹿だからバレたじゃない。」
何もバレていないはずと思っているとやっちゃんが硬直している。どうやら察してしまったようだ。
「弥生さんと恵さんは察しがいいからそういう発言をしているとバレるでしょ?ホント馬鹿なんだから・・・。」
「ご・・・ゴメン。」
ハウンがものすごく落ち込んでいる。今まで見たことないほど・・・。
「レイに話すんですか??」
俺の問に
「えぇ〜、何〜〜??私の知らないことをお母様は私には秘密でメグミには言ってるの?」
「いえ、恵さんに話したことはないです。恵さんが私に聞いてきただけですよ。わからないレイにはまだ話してあげません。」
「何よ〜〜もう〜〜!!」
文句言いながらモフモフしたネズミをギリギリ抱きしめている。可愛そうだから放してあげてほしい。
「私も横で聞いているので、皆さんに話して差し上げれば?」
ミシュラが赤ん坊を抱きながら、俺の近くに座る。それを見たクロエがすぐに楽に腰掛けることのできる椅子を用意してくれた。気の利くいい子だな。
「ミシュラは言っちゃダメそうなところがあればすぐに止めてね。」
ハウンは昔の話をし始める。
太古の昔、今現在言われているように、大陸は5つあり、それぞれの大陸には大小様々な国があったこと。それぞれの大陸で領土を奪い合うほどの大きな戦争が起き始めたこと。神々はそれに不干渉を貫いたことなど、結構どうでもいい話から始まる。
それぞれの大陸で小さな国を大きな国が飲み込み、帝国の前身が出来上がり始めた頃、今話題に上がっている大陸で巨大な芋虫型の化石が発見されたこと。その芋虫の化石は地中深くから発見され、人の手によって地上に引き上げられたこと。その化石がどのようなものかも知らずに・・・。
神々も当初はそれほど何も思っていなかったようで、無関心でいた。そこに生の神々と呼ばれる最古な神々の1人がこの化石がまだ生きていいることに気づく。その神々は最古の神々にあの芋虫の化石を元に戻すように言うが、殆んど誰も耳を貸さなかったらしい。その中で、唯一耳を貸したのがハウンの相方、闇の神々だったとか。その2柱の神々は人に戻すように説得するが、神々が口を挟んだことでこの化石がただの化石でないことに気づいてしまう。神々の目の届かぬように隠し、そこでその化石を調べ始めたとか。
それから数百年の時が経ち、誰もその化石のことを思い出すものはいなくなったとか。生の神々は人が隠したことに気づいていたらしく、その化石をずっと探し続けていたとか。
人がどのような実験をして、どのように調べて、その化石に生を与えたのかは不明だがある日その化石は目覚めたらしい。巨大な芋虫の化石だったのに生を与えてみると化石からは考えつかないほどものすごく小さな、ただの芋虫が活動をし始めたとか・・・。
全部、らしいという表現の理由は後に神々が調査した時に見つかった資料から出てきたものだから。神々も色々やっているんだね。
結構な量の資料で、当時とても貴重だった映像を残せる魔石などもたくさん出てきたらしい。
数百年と言う年月と、膨大な研究費用をかけて出てきたのがただの芋虫。それでその国の最高権力者は激怒。研究の中止と、研究者への処罰、そして芋虫の殺処分命令を出す。
芋虫は人に攻撃されるも全く傷つくことなくひたすらイモイモしていたらいい。想像するとちょっと可愛いと思ってしまうが俺の中での想像が栗の中から出てくる幼虫だからだろうか?
人々は殺すことが出来ないと知り、それを最高権力者に伝えるべきかどうか悩む。伝えて虫如きを殺すことも出来ない使えないものというレッテルを貼られて、処罰されることを恐れ、その芋虫を国の近くの森に捨てたのである。
つ・づ・く・・・