なんか知らんが先生と
「まぁ飲め!!青年よ!!」
俺にコーラをどんどん注文してじゃぶじゃぶ飲ませる。酔っ払っても未成年にアルコールを飲ませない辺りは大したもんだ。
「先生は今日何をしていたんですか?」
さっきは誤魔化されて終わったが今なら話してくれそう。
「今日??お見合いだったのよ!親の奨める男とね。」
ものすごい不機嫌な顔でジョッキをドンとテーブルの上に置く。
「で、ダメだったと?」
「ダメよダメダメ!!ダメっぷりが半端無かったわ。あんなのと結婚したら絶対嫌な気持ちを抱え続ける。そんな感じ??」
どんな感じでどんな男かは全く伝わってこないが相当嫌な男だったようだ。
「見る目が厭らしいのよ。すごく嫌な感じ。あんなのと一緒にいたら鳥肌でっぱなしよ。気持ち悪〜〜〜い!!」
これまたすごい言われようだな。どんな男かは知らないがちょっと気の毒だ。
「そうだ!!吉永くん、あなたが私のお婿さんになりなさい。こう見えてイイトコロのお嬢様だから!!あなたみたいな可愛い男の子なら私はかわいがっちゃうわ〜。ははははははは」
なんかすごい酔っ払っている。
「先生・・・大丈夫ですか??」
「大丈夫??なにが??お財布の心配?それなら大丈夫よ〜!!お姉さんにまっかせなさい!!」
相当出来上がっている。この店に来てからまだ20分も経っていないのにな・・・。
見ればデカイジョッキが6つも空になっている。
「おい!!吉永!!どうした!!なんか聞きたいのか??何でも答えてやるぞ!!スリーサイズか??にゃはははははは」
綺麗な女性が膝を立てて枝豆を食っている姿に少しかなしみを覚えるがそれほど今日のことが嫌だったんだろう。いつもの地味だが知的な感じの先生の面影は全くない。
「先生はどういった男が好みなんですか?」
「私のタイプと来たか!!ズバリ!!君だな!!あはははははは!!これは口説いているんだぞ!!どうだ??このままうちに来ないか??」
「ははははは・・・」
俺はかなり困り果てている。
『ブブブブブ、ブブブブブ・・・』
「吉永く〜〜〜ん、授業中は携帯禁止ですよ〜。」
先生がテーブルの上にあった俺のスマホを取り上げる。
「ちょっと!!マッキーって書いてあるよ!!何で??この前学校に来た時も思ったのよ!!友達なの??」
「えっと・・・そうです。趣味友です。」
「ここに呼びなさいよ!!私ファンなのよ!!サインほしいんだから!!」
「マッキー呼ぶと同じクラスの子や、学年違いの子たちも来ますよ?大丈夫ですか??」
「それは不味いわね・・・。逃げないと・・・。」
逃げるんだ。
「あの・・・マッキーに話して皆には帰ってもらうんで・・・。」
「マッキーだけ呼べないの??」
「無理でしょうね・・・。皆めちゃくちゃ楽しそうに一緒に遊んでたので。」
「なんで??私は??皆がうらやましぃぃぃぃ!!」
駄々っ子が誕生したようだ。座敷で足を伸ばし手足をバタバタさせている。こんな大人・・・あまりみないな。
「はい。マッキー??」
『お〜〜〜!!恵か!!どこにいる??皆心配してるぞ。主役が勝手に出ていくっていうのはどうかと思うぞ。皆には説明できないからな。暴れて出入りできなくなったなんて』
おまえ・・・そこで言ったら皆に聞こえるだろ?
そう思っていると案の定、女の子が『え〜あばれたの〜??』とか言っている・・・。俺の印象を壊さないでくれ。
「おまえな〜。それをそこで言ったら俺の印象が壊れるだろ?マジで勘弁してくれよ。今、俺はとある人とお店でメシを食っている。その人はそこに居る女の子たちと会わせるわけに行かないんだよ。俺が今から戻って皆と話をするから待っててくれ。」
俺は通話を切り、先生に説明する。
「皆、カラオケ店から出てきて俺のことを心配しているので少し話をしてきます。先生はここにいてください。必ず戻りますから。」
「はいは〜〜〜〜い。いってら〜〜〜」
大の字に寝転んだままでの気の抜けた返事を聞いて俺は上着を羽織り外に出る。
少し進むと女の子たちが見えてくる。
「ごめん。変な奴にからまれてさ〜」
仕方なく俺は嘘を織り交ぜつつ説明する。
「じゃぁ、皆ここで解散でいいかな?あまり遊べなかったけど、誘ってくれてありがとう。あと、マッキーはこれからどうする?」
「お前についていくに決まってるだろ?熱帯魚屋にも行きたいんだが・・・。」
この時間じゃ無理だろ??そう思いながら皆に手を振り別れる。
「レイちんたちが隣で熱唱してたぞ。今も遊んでいるんだろうな!!私達はこのままラブホか?」
「行くか!!あほ!!今からさっきまで居たお店に戻るんだよ。」
「会わせたい奴がいるってやつか??」
「俺が会わせたいわけじゃない。会いたがってたんだよ。その人が。」
「よくわからんが恵に恩を売るチャンスだから会ってやる!!」
笑顔で俺と腕を組んで歩くマッキー。
店について
「いらっさぁい!!」
元気な声と共に案内をされそうになるが
「連れが中にいるので・・・」
先生が待っている店の奥の座敷に向かう。
「ここでエロいことするのか??恵の趣味にはなかなか深いものがあるな。」
「そこから離れろよ。何でなにもかもエロにつなげる??」
アホな問答をしながら座敷にふすまを開ける。そこには出る前に見たままの大の字姿で寝ている先生が・・・。
「は〜〜〜い!!私マッキー!!で、この人だれ??寝てるし・・・。」
「先生・・・先生・・・マッキー連れてきましたよ。」
そう言いながら俺が先生の方をユサユサする。
「うぅ!!揺らしちゃダメ。グワングワンするから・・・。」
これだけの量を一気に飲めばそうなるわね。
「マッキー、この人は俺の学校の先生。森先生だ。」
俺が紹介するとゆっくり起き上がって
「森です。はじめまして。いつも雑誌やテレビで拝見していまう。とってもファンなんです。サインください。」
「おう!!恵の先生か!!いつも恵が世話になっている。これからも恵を頼みます!!」
そう言って握手している。お前は俺の母親か??しかもかなり上からだな。
ヘラヘラしている先生。サインしてもらうものを探しているがないみたいで悲しそうな顔をしている。
「なんだ??何も持っていないのか??そりゃそうだな。よし!!先生の家に行こう!!そうすれば何でもあるだろ??何なら家の壁にでっかくサインしてやるぞ??」
マッキーが胸を張って大声で笑う。
「失礼します。ごちゅうも・・・え??マッキー??」
店員がマッキーの存在に気づく。すっごい驚いた顔で停止している。
これはヤバイ展開か??