改変ルールと捕獲
ルールーの起立、歩行訓練はラウルに任せて俺達はモンスターファームの計画を練る。
「どんな魔物を育てるの?」
俺の問にレイが元気よく
「ペットっぽいやつ!!」
と拳を握りながら言う。ペットって・・・軍用じゃないんだ。
「私もそれがいいと思う。強いだけならダンジョンで拾ってくればいいじゃない?」
やっちゃんもレイに同意する。
「こっちにはペットという概念がないわよ。富裕層でもあまりみないわ。」
こっちでは犬や猫も飼わないという。理由は簡単、食うし、出すからだ。
そんなものを家に入れたくないというのがこちらの世界の人々の考えだ。
いるのは家畜。いつか誰かの口に入るものだけ。
「その辺りはお父様に頼めばいいんじゃない?あれで広めればあっという間に概念の植え付けくらいできるでしょ?」
「レイが飼っているのを抱っこして歩けば、ファンは飼いだすんじゃない?」
など、いろいろな宣伝方法をそれぞれが口にする。
レイの顔はちょっと複雑だな。それでも
「私のカワイイペットイメージは・・・」
レイがアイテム袋から紙を出してスラスラと書き、イメージを俺達に伝える。
もこもこ
ふわふわ
丸い
大きくもなく小さくもないそこそこのサイズ
色はいろいろ
いい匂い
俺にはいい匂いの部分がちょっと理解できなかったが大事らしい。
レイが言うには
「日向に当たった小さい子供の頭のニオイ・・・」
俺には全然わからないがやっちゃんは「あぁ〜!!」と声を上げている。理解できたようだ。
「おい、改変者、できるか?」
レイが奴隷の改変者を睨んで凄む。
「あの・・・できるか?と言われましても・・・。一応素材がいるんですが。」
「え?勝手にできるわけじゃないの?」
「そんなすごい能力じゃないんですよ!この能力自体はランクがBです。これを品種改良に使ったら凄くハマっただけですから。だって、この力・・・道具作りの能力なんですよ。」
改変者が言うには道具に違う道具の力を足すだけの能力なんだとか。
だから必ず素材がいる。
例えてくれたのが
コップにストローをくっつける。そのためには、コップとストローがいるらしい。
そのまんまだな。なにより別々でいいし。
思いの外、使えない能力だ。
「じゃぁ、私の理想のものを持っている魔物を捕まえて来ればいいのね?」
「はい。」
「それぞれの特徴を少しずつ取り出して新たな魔物を作るっていう感じでいいのね?」
「はい・・・多分・・・。」
どんどん弱い感じになっていく改変者達。なんか気の毒だな。
「聞きたいんだけど、泳ぎの上手い兵士を作るのに何を混ぜたの?」
傾向を掴むために俺がちょっと質問してみる。
「あれは、人と、海にいる魔物です。なるべく泳ぎの早い魚型の魔物を捕まえてその能力を兵士に植えつけました。それだけです。」
「じゃぁ、あのグネグネ伸びる兵士は?」
「あれは人と、軟体の魔物です。あの時は確かタコみたいな魔物だったかな?」
「死んでてもイケるの?」
「ダメです。死んでいるものは死んでいるものとは混ぜれますが生物の改変には必ず生物が必要です。死体は肉になっていて、物ですから。だから、生物と機械も混ぜれません。」
ふむふむ、なるほど・・・
「じゃぁ、主となるものと、くっつけていくそれぞれの特徴が必要ってことだよね?」
「はい。」
「特徴を取られた生物ってどうなるの?」
「その部分がなくなります。例えばですよ、知能がほしいから、人の能力である知能を奪って何かの生物に入れてしまえば、その奪われた人は知能を失います。すなわち・・・廃人です。」
やっぱりか〜。これはキツイな。
「ツガイを作ったとして、交配はできるの?特徴を遺伝させたりできるの?」
「わかりません。そこまでしたことがありません。兵士も子供を作ったと聞いていないので確認できていません。」
遺伝するならオスメスで作ってしまえば交配して増やせるのにな〜。
そう考えていると
「よく殖えそうなネズミとかで実験してみれば?」
やっちゃんが楽しそうな顔で提案してくれる。
そうだな、ネズミを元にして色々くっつけてふやしてみるか?
俺はレイとやっちゃん、ハウン、メイリーンで手分けしてこの国の回りにいるかわいい要素を持った魔物を片っ端から捕まえる。
「気絶させて縛っておいたけど殺さず捕まえるって結構大変ね。ちょっと小突いただけで死んでしまった魔物も結構居たわ。」
ハウンが腕を組んで困っている。俺達・・・強くなりすぎたもんね・・・。
たくさんの可愛い要素を持った魔物・・・やっちゃんだけちょっと趣向が違うな・・・。
多分、ウーパールーパー好きから来ているのだろう。ヌルヌル系の両生類が多い。
カエル。でっかいカエル。カエル。サンショウウオ、カエル、サンショウウオ、カエル、カエル・・・
カエル率高いな・・・。