奴隷と魔物と子供達と
マッキーとジル、そして・・・
「で、この人たちは何もんですか?」
俺の問に笑いながら答えるマッキー。
「にゃははははは、紹介するぞ!!こいつは恵だ。この国の皇帝をやっている、私のダチだ。平民出だからそんなにかしこまって話す必要はないと思う。でも、イタズラはやめておけ。結構ひどいことをやり返してくる陰湿なやつだから。」
「ほうほう。俺が陰湿と・・・」
さっき持っていたロープをそのままマッキに向けると
「あ、ごめんなさい。陰湿じゃないです。変態です。」
「よし!」
俺の返答に
「よしなんだ・・・」
やっちゃんが呆れている。
「で、俺の方の紹介はいいからそっちにいる人の紹介をしてよ。」
「おぉ!!そうだったな!!こいつは私の奴隷の・・・奴隷だ!!」
名前ないんかい!!
「で、こっちの魔物は・・・」
「ルールーと申します。」
頭を下げて、ルールーと名乗る魔物。見た目は蜘蛛に女性の上半身がくっついたみたいな魔物。俺達のゲームなんかに出てくるアラクネってやつだな。
「ルールーが守っていた子供達、名前は・・・」
「パイロンです。」
「アイシャです。」
そう名乗る男の子と女の子。どう見ても東洋人だな。
「よろしくね。」
俺が手を出すとパイロンとアイシャは元気よく握手してくれる。かわいい子供達だ。
「で、ルールーは魔物なのにノート持ってるんだよね?なんで?」
「はい。マッキーさんに聞いてびっくりしたのですが、魔物はノートを持っていないとか・・・。私はこんな姿ですが一応・・・旅人です。」
「旅人?どうやって旅人になったの?抽選はされないでしょ?」
やっちゃんが興味深そうにマジマジ見ながら質問する。
「はぁ、それは・・・」
ルールーの話しによれば
数年前はC国に居た自分の主、荀攸という人物に飼育されていた蜘蛛だったそうだ。
その主が抽選に選ばれた時が蜘蛛である自分をカップに入れて持ったまま就寝していた時でそのままこちらの世界に来てしまったらしい。この国に来た時は普通の蜘蛛だったが、こちらの世界の虫を餌として食べているうちにじわじわ体が大きくなり、今に至ったとか。
大きくなっていくルールーを見て最初、主は凄くびっくりしたそうだが、会話できるようになったと喜んでくれたそうでとても嬉しかったそうだ。
「この子たちは、こちらの世界で主である荀攸様が結婚してできた子供です。荀攸様がどこかに連れ去られてしまい・・・」
涙を流す3人。なんか気の毒だな。
「3人はここで生活すればいいよ。主の写真とかはないの?あればレイリーに頼んで捜索してもらうけど。」
レイが提案する。
「写真はあります。でも、私達の面倒を見てあなた達にメリットを感じませんが・・・。」
「それがあるんだな〜。ルールーって魔物と話できる?」
レイがなにかニヤニヤしながらルールーを見て質問する。
「え?はい。魔物ですからね。あまり種類の離れたものは無理ですが、陸の生き物であればそこそこ話が出来ます。昆虫系なら確実ですね。水の魔物はまったく出来ません。」
そういや、ラウルも同じことを言っていたな。海の魔物は話せるけど、陸の魔物は無理だって・・・。
「ラウル!!こっち来てくれ〜!!」
俺が呼ぶとどこからか走ってくるラウル。そういや、今はこの屋敷の部屋にいるんだったね。走らせてごめん。
「はい、なんでしょう?恵様。」
「新しく出来た仲間、ルールーだ。色々教えてあげてほしい。」
「はい、かしこまりました。ルールーは人化できる?」
ルールーは首を横に振る。
それを見てラウルがやり方を伝授している。
数回の試みで一糸まとわぬ美しい女性の姿になったが・・・
「キャ!!」
勢い良く座り込むルールー。
「あの・・・立てないんですけど・・・。」
「え??立てない?なんで?」
ラウルが手を差し出して起こそうとする。立ち上がった瞬間にすぐに尻餅をつく。
何度か同じことをやって、立ったままの姿勢を保ってはいるがずっとゆらゆら揺れていつ倒れてもおかしくない状況だ。
「もしかして今まで大きな蜘蛛の体で足もいっぱいあったから2本足じゃバランス取れないんじゃない?」
やっちゃんが分析して、横でハウンが頷いている。俺もそう思う。
「ルールー頑張って!!」
子供達が応援しているが、なかなかうまく行かないようだ。
「まぁ、この辺りはルールに練習してもらうということで。別にこの屋敷内なら魔物の姿でも生活できるしね。」
そういいながら俺は椅子に座わる。
「すみません・・・。」
「ははは、気にしなくていいよ。人の姿のほうが何かと子供達との生活もしやすいかな?と思っただけだから。」
その言葉にルールーはホッとしたようだ。
「で、レイはルールーに何をさせたいの?」
「魔物の教育係です!」
どうやらまだ出来ても居ないモンスターファームの構想の一部に考えているようだ。