出産
俺達は跡取り問題も解決し、呆けている。
今の俺は・・・なぁぁぁぁんもやることがない!!
平和そのもの!!
「恵様!!恵様!!大変です!!」
なんだ〜??暴動??戦争??もしかして・・・破綻か??
「ん〜〜?どうしたの??クロエ・・・。ヤバイの??」
のんきな俺の反応にクロエがメガネがずれたまま走ってくる。
「恵様!!ミシュラ様が!!」
なんと!!ミシュラが産気づいたらしい。いきなりだな!!
「産婆さんとか居るの?この世界ではどんなふうにするの??え??え??」
最近全くなかった臨場感。焦る俺。考えられない俺。オロオロする俺。
レイもオロオロしている。こういう時に二人でオロオロしてどうする?
「ちょっと!!二人共落ち着きなさいよ。あなた達が慌てても仕方ないでしょ?」
めちゃくちゃ落ち着いているやっちゃん。それとは対照的に横でオロオロしているハウン。
「マギー、クロエ!!出産準備だ!!この世界ではどうやって出産するんだ??俺はあっちの出産も知らないからどうにもできない。誰かわかるやつ集めてくれ!!俺はミシュラのもとに!!」
俺がミシュラの部屋に走っていく。その後を追うようにレイ、やっちゃん、ハウンが走ってくる。
「ミシュラ??大丈夫か??」
「恵さん・・・生まれそうです・・・。」
お腹を押さえて顔をしかめるミシュラ。世界最強の戦士も出産の痛みには敵わないようだ。
「恵さん・・・」
俺がミシュラの横に行き手を握る。ミシュラも握ってくる。これは・・・
「メグミ!!手が潰れてるよ!!」
そう、ミシュラの握力で手が潰れた・・・。血がボタボタ流れている。
「ゴメンなさい・・・。」
ミシュラが謝って慌てて手を話すが、手のことなんかどうでもいい。すぐ生えてくるし・・・。
「早く出産準備を!!」
俺の命令に屋敷の人間すべてが走り回る。
魔族領から複数の女性が派遣される。
俺達は出産準備が整うと同時に部屋から叩き出される。
男や、出産経験のない女性は現場では邪魔なだけだって・・・。たしかにそうだ。オロオロするだけだもんね。
数時間・・・子供が生まれるまでこんなに長いんだ・・・。俺にとって地獄のような時間だった。
何が何やらわからない。しかも部屋の中からすごい音が聞こえたりもする。気になって心配で仕方ない。
「ミシュラ・・・頑張って!!」
俺が祈っていると
「大丈夫だって!お母様は最強だもん。」
レイがよくわからない励ましをくれる。よくわからないが納得してちょっと落ち着く。
「オッギャァァァ!!」
大きな声が聞こえる。
「ムギャァァァ!!」
??声が2つ?どう聞いても鳴き声が一つではない。
俺は扉を慌てて開き
「ミシュラ??」
俺の顔を見てミシュラが微笑む。
「恵さん・・・双子でした。」
双子・・・。一気に二人??
「男の子??女の子??」
俺の変な質問に
「両方よ。」
微笑むミシュラ。
どうやら男の子と女の子が生まれたようだ。
回復魔法をかけまくる魔族の女性が数名。そのおかげでミシュラがどんどん元気になる。
俺の子供が今・・・目の前に寝ている。
男の子と女の子。
かわいい・・・。
抱っこしたい・・・でも怖い・・・。ウ〜〜〜ん、抱っこしたい・・・。でも・・・怖い。
俺がウロウロしているとレイが横から赤ちゃんを覗きこんできた。
「この子たちは私の妹??弟??甥?姪??」
そこか・・・。以前もそれで悩んでたね・・・。
「レイ・・・。レイリーやお父様には生まれたことを知らせた??」
ギョッとするレイ。忘れてやがったな・・・。
俺を残してどこかに走っていくレイ。
俺は赤ちゃんの顔を覗きこんでにっこり笑う。
「はじめまして。お父さんです。これからもよろしくおねがいします。」
そっとオデコに触れる。口がムニュムニュ動く。本当にかわいい。
この子たちが平和に暮らせる国にしなければなと心の底から思う。
俺は頬を突いたり唇を突いたり・・・。何をしていいのかわからずずっとどこかを突いている。
「抱っこすればいいんですよ。」
ミシュラが笑いながら俺に言う。俺もそうしたい。だが・・・小さな赤ちゃんを抱くなんて・・・美久以来か??
恐る恐る頭を抱え首が後ろにくねっと行ってしまわないようにする。そっと抱き寄せると・・・なんか凄く幸せな気分になる。
「ふふふ。」
勝手に口から笑い声が出た。
これはヤバイ。何だこの高揚感・・・。俺は今すごく幸せな気分になっている。最近なかったものが溢れてくる。
あぁ、俺は今すごく幸せだ。これがいつまでも続くように願う。
「メグミ・・・レイリーが話があるって・・・。」
レイが俺の横に来て小声で話す。なんかいきなり俺の幸せタイムをぶち壊しに来た感じがするんだけど・・・。もちろんレイのせいではない。なんかすごい嫌な感じがする。