皇帝としての仕事2
上級召使は全員、解雇という形となる。
理由は簡単、仕事をしていなかったからだ。
召使全員に聞き取りをするとひどい有様だった。
下級に任せてずっと遊んでいたらいい。
全員解雇の上、財産を没収して放り出した。当たり前だよね?その財産、仕事せずに手にしたでしょ?
相当抵抗していたものも結構いたが1人俺自ら素手で打首にしたら黙って言うことを聞いた。
俺は自分の責務を果たそうとしないものが大嫌いだから死刑にしたこともどうも思わない。
上級召使がもし、もう一度真面目に働きたいと思うのであれば面接を受けろとだけ言っておいた。
「クロエ、君を召使の長として任命する。皆の教育とここの管理を任せる。あと、上級とか下級とかも撤廃するね。」
肩を叩くと気持ちのいい返事が返ってきた。大抜擢にヤル気満々の顔をしている。
さて、俺は色々方の整備とかやりたいんだけど、その辺のことは俺達は疎すぎる。
マリスタンが言っていたように全部丸投げになりそうな感じだな。
「マギーにお願いがあるんだけどさ。法律に詳しい専門の人を何人か呼び出してよ。」
俺の命令を聞くと、走ってどこかに消えていった。あんたまで走らなくていいよ。どう考えてもそんなに若くないでしょ?
数分後、3人連れて帰ってくる。案の定、汗だくで、息を切らせて『はぁはぁ』言いながら。
「新しい法律を色々作っていきたいからよろしく。まずは・・・」
魔族との同盟を組んだことを説明して、彼らに嫌な思いをさせないような法をすぐに整備しろという。
それに取り掛かり、あっという間に草案を出してきた。俺の署名で出来上がり。
それからもこの国を良くするために色々やっていきたいが思いつかない。
やっちゃんやハウンにも話すがちんぷんかんぷんな顔をする。
「海の管理は魔物で十分では??」
レイが言う。魔物に守らせれば軍事費用が浮くとか・・・。
たしかにそうだけど・・・
「ラウルはそれできる??」
「声を掛けてみます。海の皆の返事次第だと思います。」
俺と共に港に出るラウル。重装備の護衛が慌てて俺に付いて来る。別に要らないんだけどね。
ラウルがなにか海に向かっていっている。毎回なにか言っているというのは聞こえないんだよね。全く。
俺から見れば口をパクパクさせているだけ。そうすると必ず魔物が出てくるからなにか発しているんだろうけど・・・。
巨大な魔物が数百と出てきた。多いだろ・・・。
それを見て港にいる民が腰を抜かしている。
「これは皇帝陛下のお連れの方の能力です。慌てないでください。」
護衛が大きな声で言って回る。あんたたちも脚が震えているよ。そのへんをしっかりしないと安心感がないんだけどね。
まぁ説明して回らないとパニックになるからね。
「お前たち。我が主が・・・」
ここまでは俺のわかる言葉だが、途中でわからない言葉で話し始める。魔物を前にラウルが話をしている。魔物たちはラウルを見て頷いたり腕を組んだり、ラウルに指差されて項垂れたり・・・。色んな仕草を見せてくれる。多分、人と変わらないリアクションと思われるがなぜ項垂れたのかが非常に気になる。
「ラウル、項垂れた魔物は何でなの?」
「言うことを聞かないと言ったので『今すぐ貴様の末裔まで食い殺しにいくから覚えておけ』と言いました。」
「脅しはダメだよ!ちゃんと話して解決して。そういう脅しはダメ!!」
俺の言葉を聞いて魔物に話をしている。
「我が王の主殿・・・あなたは我が王の我々への脅しをよく思っていないという。あなたはなぜ我々を恐怖で支配しない?強者が全て。それが我らの掟。」
「魔物にとって強者が全てっていうのはわかるけど、それで嫌な気持ち抱えたまま仕事していい仕事できるの??イヤイヤやるくらいならしないほうがいいって。」
俺が少し話をして魔物たちが頷いて聞いている。
「それでは我らがやることは海から攻めてくる海の王の主の国を敵を滅ぼすこと。貿易船や客船を守ることでいいのだな?」
「あぁ、俺が認めた船以外で俺の決めたルールを守っていない船は食ってもらっていい。それを君たちの目や鼻でわかるような目印を考えるよ。」
「私の血で書いた書類を作ればこの者達にはわかります。私の匂いがするので。」
怖いことを言うが確実ならそれがいい。
この世界の海洋すべてを掌握すれば俺達の国の力も増すだろう。空輸能力のないこの世界なら。
色んな話をしてその後、魔物たちは海に散っていった。
「これで海は我らのものです。ほかの帝国は海からの戦争はできません。」
ラウルが嬉しそうに言う。
「ラウルは海軍に属することになるけどいい?」
「もちろん!!恵様の役に立つなら何でもしますわ。」
可愛い笑顔で答えてくれた。
俺達はメグミ邸に帰る。もうあそこはマリスタン邸ではない。俺の家なんだな。
俺は帰ってすぐ、魔物っ子を通称虫かごから全員出す。
ここなら普通に生活できるからね。魔物であっても俺の従魔だから他のものには文句言わせない。
「君らにはこの屋敷で普通に生活してもらう。ただ、人を食っちゃダメ。わかった??食っていい時は俺が声をかける。破った場合は放逐か俺が自ら始末する。わかった?」
俺の言葉に全員が震えた。脅してるつもりはないけど、それくらいきつめに言わないと食っちゃうでしょ?
「「「「「はい!」」」」」
俺は魔物っ娘達それぞれに部屋を与える。ラウルはもちろん卵をそこに置く。根っこは中の子に話をすると簡単に取れた。根っこは自由自在に動かせるようだ。時間はかかるが地味に移動もできる。
移動できることに関してはラウルも知らなかったみたいで驚いていた。
レイ、やっちゃん、ハウン、メイリーンにも部屋を与える。好きに選ばせたら俺の寝室の横を取り合って大変なことになった。
あみだくじで決めてもらいハウンがお隣さんになりそれ以外は死んだ目で選んでいた。
リユは俺にそれほど関心がないので残ったところを使うようになったようだ。
あまり存在感ないけど大丈夫?
ミシュラの部屋も用意してもらった。大きな部屋で客人をもてなすための凄い作りの部屋だ。
ミシュラも気に入ったみたいだが俺の部屋との距離があるのが少し不満のようだ。
客人の部屋だからね。皇帝の寝室と近いといろいろ問題があるだろうし。
俺が皇帝になったことを他の諸外国に通達が行われる。
後日談だが
色んな国から使者が来たりして面倒な日々を数ヶ月送る羽目になる。すごい嫌な日々だったな・・・。
その辺りは面白くもないし思い出したくもないから割愛。
あと、ラウルの血を使って書いた書類をこの帝国の真面目な商業船にもたせる。これがないと沈められる可能性が高いからね。漁師は食うなと言っているので大丈夫なはず・・・。
この帝国の戦艦にも持たせてある。沈められると色々金がかかるからね。
他の国々にも対等に貿易のしたい国にだけ発行している段階。あまり派手に航海すると大きな魔物にほぼ追い回される。後に取引するようになった商人に聞いた話では相当恐ろしいと涙ながらに言っていた。
俺の帝国は今、借金を返すために色々やっている。
カジノも国営にしてやろうかと思ったが、やめておいたほうがいいと大臣達に言われる。
負けた人の恨みを買うかららしい。そういうのは裏の社会のやつにやらせて税金を巻き上げるに限るだって。大人の世界は恐ろしい。