借金させて
マリスタン皇帝に呼び出された俺。
理由はなんとなく見当がついているけど・・・。
今、俺とレイは皇帝陛下の前にいる。
「あのさ〜。恵くん。君いくら持ってる?」
「ん?イクラ?何の話??」
「いやいや、いくらと言ってお金以外思い浮かぶ人はそんなにいないよ。」
「そうなの??持ち金?10Pかな?」
俺が無造作にポケットから10枚の白金貨を出す。
「10P??マジで??」
「はい・・・。これでも持ち過ぎかと。」
「フィナさんは?」
「今はレイです。私も10Pかな??」
胸の谷間から10枚の白金貨を出す。
そこに入れてるんだ・・・。
「いやいや、そんなわけ無いでしょ??俺は知ってるよ。君たちはあの貴族を嵌めようと画策してたって。」
「どこ情報??」
「そんなの決まってるじゃない!!秘密〜。」
うわ!!緩いのが余計腹立つ。
マリスタン皇帝は非常に話し方が緩い。というより皇帝やりたくないから偉そうでもない。
緩い話し方なんだが非常にムカつく!!レイリーとは違うムカつく緩さだ。
「俺はね、別に怒っているんじゃないんだよ。今ね、ぶっちゃけると・・・」
皇帝の話ではこうだ。
今、この帝国は破綻しかかっているそうだ。なぜなら、今月支払うお金がないとか。
どこに払っているかというといろいろあるんだって。買い物したところとか、買い物したところとか・・・。まぁ、国として買い物をして月末に支払うんだそうだが今、この国には金貨が全くない。その理由は、あのバカ貴族の暴走。
あのバカがなぜこんなに金を持っていたか・・・。カラクリを聞いてびっくりした。
この世界は銀行という概念がある。俺達の知っている銀行とは少し感じが違うけど。
国の中で信用がある地位の人は変な言い方だが無限にお金を引き出せるらしい。
引き出しても利子が付いてどエライことにいなるから無限に引き出すバカはいないんだが・・・。
金は秘密の魔法で引き出すらしく、引き出すのにはそれを知っている本人か、その代理人が行う。
貴族の代理人が武闘大会の時に換金所にいたらしい。
そいつがバカみたいに賭け金を持ってくる奴らから金を毟り取ろうと笑顔で賭けを成立させ続けたらしい。
負けても負けても気にせず・・・。
まぁ、1回でも相手が外せば全部自分のところに金が入ってくるんだから受けるわね。
そのため、考えもせずに換金し続けたら魔法で出し入れするお金が・・・枯渇したんだって。
枯渇して慌てていると、決勝になる。賭け金がまた手に入り潤ったように見える。全く足りないというのに気づかないんだな・・・。だけど最後の試合が不成立。集めっていたお金を返金したら、やっぱり枯渇していました!!だって。バカでしょ?
「あの・・・そのバカ代理人は??」
「逃げた・・・。」
そりゃそうか・・・。責任追及される前に逃げるわね。
「じゃぁ、バカ貴族は?」
「厳密にはバカ貴族ではない。バカ貴族達だ。」
あぁ、複数形なのね・・・。金に目が眩んでバカして全員逃げたんだ。
「バカ貴族たちは全員今、財産差し押さえ中だ。あいつらは家族もろとも奴隷にでもなって金を作らねばならない。だが!!それではまだ足りないんだな。どう考えても金額がでかすぎる。」
逃げられず捕まってたんだ・・・。可哀相・・・。
「で、賭けで無茶苦茶やらかしてた俺を呼んだと?」
「そうそう、どう考えても君たちの仲間だろ??記録媒体にしっかり残っているぞ。同じ奴が何度も賭けをして勝ち続けているところを。勝ち続ける時点で賭けじゃないからね。賭けは負けるから賭けなんだよ。」
どこかで聞いたことあるような台詞を言いながらニコリと皇帝陛下が笑う。
「で、お願いがある!!お金貸して!!」
皇帝が手を合わせて俺達にお願いし始める。俺達は仕方なく有り金の20P差し出す。
「話し聞いてた??20Pって!!?それならここのもの売って作るよ!!違うでしょ??いっぱい持ってるでしょ?もしかして・・・。」
椅子の近くにある綺麗な台をバンバン叩きながら怒っている。
「もしかしてだよ。もう分配して手元にないの??どんな人数でやったの?その人達、みんなここに連れてきて!!」
脚をバタバタさせながら皇帝陛下が駄々をこね始めた。いい年こいたおっさんの姿ではないな・・・。
「見苦しい・・・」
マリスタン一世が来た。
「フィナ殿・・・申し訳ない。今は本当にこの帝国が傾いている。このままでは破綻をしてしまい、大陸すべての国が路頭に迷うのだ。軍備もままならなくなりヘタをすると大戦に流れる可能性もある。どうか・・・手にした金を貸してくれまいか?」
お金の話は俺が疎いせいでレイは散財しまくることが多々あった。なんせ金使いの粗さが半端ない。
「お金に強い人呼んでもらっていい??田村弥生とハウン姉妹なんだけど・・・。」
俺の呼び出しにすぐに兵士が宿屋に走っていく。
30分ほどでやっちゃんとハウンが来た。
「ちょっと!なによ!!走らせて。」
俺は別に急いでいない。忙したのはそこの兵士だ。
「急かしたつもりはないんだよ。ごめん。皇帝陛下とマリスタンの話を聞いてあげてよ。」
「田村弥生よ、ハウンよ、お前たちはいくら持っている?」
エ??そこから始まるの??話し長くなるでしょ?
二人共ポケットをゴソゴソして10Pずつ出す。
「何??話しあわせてるの??いつの間に??何で皆同じ額持ってるの??」
俺とレイが吹き出す。全然口裏を合わせていない。まさか同額とは・・・。
皇帝とマリスタンが2人に説明している。俺達は一度聞いている話だ。
「なんとなく話はわかったわ。財政破綻ね・・・。まぁ大変。」
やっちゃんの反応が凄い他人事で吹き出してしまった。
「私達には関係ないじゃない。」
ハウンも切って捨てる。
「恵殿!!何とかしてくれ!!」
マリスタンが何故か俺に泣きついてきた。
「期限は?利子は??」
「無利子無催促。」
その声に踵を返す俺達。
「ちょちょちょ!!うそ!!ウソで〜す!もちろん利子は払います。年利1%でどうですか?」
「年利1%ってちょっとね・・・。」
やっちゃんが渋る。交渉始める気か?
「でも金額が金額よ。1%でも凄い額になるわよ。」
「で、いくら要るの??」
俺が聞きたいのはそこだ。俺の持ち金で足りないならどうしようもない。
「80万P・・・」
「・・・」
全員が黙ってしまう。80万Pというのは俺達の世界で言う80兆円だ。
しかも俺の空間に閉じ込めている金額がそれに近い。
俺は今すごい金持ちなのだ。
これの1%って8000P・・・1年で8000億円の利息が発生するのだ。やばいなこれ・・・。
「8000Pもの利息払えるの??」
やっちゃんが聞くけど、当然だよね?利子だけで月々ですら凄い金額だよ?
「・・・」「無理・・・」
「そんなに何で要るの??80万Pっておかしいでしょ?」
そりゃそうだ。月々そんなに浪費していたらあっという間に国が傾く。
「魔法で引き出した部分を埋めないと金が払えないんだよ。あそこの金貨が枯渇している状況は非常に不味い。そこにまず80万P入れて世界恐慌になるのを止めないと・・・。」
ゆるゆるの皇帝がちょっと半泣きになっている。自国のためではなく世界のためなんだ。
「恐慌になったらどうなるの??」
「まず、世界中の人が生活に不便する。国が財政難になり維持できなくなる。そうすると弱い国は滅びで力ある国は戦争して儲けようと動く。ヘタすると帝国同士の衝突も起きかねない。」
それは確かに不味いね。