決着
「じゃぁ俺も怒り狂っちゃお!」
「美久のこと許さないからね・・・。」
俺が思い出すのはあの時、あの時俺は美久を傷つけた。
「俺も気合入れて相手するね。」
腕がすぐ生えてくる。回復力も最高の域へ・・・。ミシュラ相手にした時みたいには行かないけど・・・。
レイが動く。ジュディ老師のおかげでレイの動きがわかるし読める。
俺は回避しつつボディブロを放つ。だがこっちの攻撃も当たらない。
「メグミのバ〜〜カ!当たりませ〜〜ん!」
なんかすっごいカチンと来るな。
「レイの攻撃も当たらないし〜〜」
舌を出しながら俺が言うと
「舌切り落としてやる!!」
ははは、挑発乗ってきた!!
単調な動きで俺に切りかかってくる。
俺は大剣を受け流し、ボディブロを放つ。ヒット3発。
「グゥフッ」
脇腹を押さえてヨロめくレイ。
レイに近づき渾身の蹴りをお見舞いする
つもりだったけど・・・
「かかった!」
蹴りに合わせて剣を振るレイ。俺の右脚が飛んでいく。
よろめいた瞬間に右肩から左横腹に向けて剣が抜ける・・・。
「勝った!!」
レイは勝利確定の気持ちで気を緩める。
俺は気を抜いたレイの腹に倒れ込みながら渾身の一撃をお見舞いする。
それがレイの腹に当たりレイが吹っ飛んでいく。
俺はすぐに回復魔法を自分にかけて体がずれてしまわないようにする。
すでにレイは向こうで起き上がっている。腹がえぐれて血を吐いている。
俺の脚が生え、胴体も繋がった。
レイはまだ大ダメージでヨロヨロしている。
「俺の勝ちだね。レイはもう動けない。」
「ふざけないで。参った言わないとあなたは私と仲直りしないんでしょ?」
「そうだね・・・。レイが負けを認めないと仕方ないけど・・・死んでもらうことになるよ。」
俺が身体強化を何度もかけ続けて体がミシミシ音を立てている。
俺も限界だが次の攻撃で多分レイは倒れるだろう。
レイはジリジリ近づく俺との距離を取ろうと後退りするが動きが遅い。
『主殿、レイ殿、そこまでだ。それ以上やりあえば二人とも無事では済まない。夫婦で喧嘩するのはいいが殺し合いにまでなると残ってしまうぞ。』
二人の心に聞こえるデュランの声。
「そうだ・・・」
その瞬間に俺を切り捨てたレイ。
「気を抜くな!!私はまだ生きている。」
俺が両断され地面に転がる。
「メグミ・・・降参して」
「そうだねっていう瞬間に斬るか・・・普通。」
俺は転がったまま上を見上げる。
「降参はしない。言っただろ?許さないって。だからこのまま切り刻み続けて殺してくれ。」
俺が目をつぶり再生を止める。
血が流れ始め意識が薄れていく。
「ちょっと!!やめて!!死んじゃうわ!!待って!!」
俺を抱きかかえているレイ。
「もういがみ合って生きていけるほど俺は強くないからさ。このまま死ぬよ。」
体が崩れ始める。
「デュラン!!すぐにメグミを元に戻して!!」
『できない。ロックがかかっている。メグミの願いが最優先だ。』
「やだ!!待って!!待って!!」
回復魔法をかけるが俺には効かない。もうすぐ死ぬ。
「死んでも復活するのよね??」
『それもしない。』
「やばいって!!なんで??何で??」
「バカな姉さんがバカをやらかすからだよ。」
突然レイリーが現れる。救護班と蘇生班を連れて。
「すぐに兄さんの回復と蘇生を!死なせるなよ。」
「「「「「「は!」」」」」」
俺は真っ白い世界にいる。
やっと死んだみたいだな。
俺は美久にひどいことをした時からそうしようと思っていたんだ。
俺は絶対にしてはいけないことをした。だからコレでいい。
皆を救うことができないのが心残りだけど・・・。
俺がいなくなることでもしかしたらあの結末が回避できるかもしれない。
「それでいいんですか?」
俺の目の前に俺が創った管理者が立っている。
「いいんじゃないかな?」
俺が管理者である彼女の頭にて乗せて撫でながら言う。少し嬉しそうな顔をする管理者。
「皆はあなたの死を望んでいませんよ。」
泣きそうな顔をする管理者。
「俺がそれを望んでいる。強くてもやっていいことと悪いことがあるんだよ。あのままでは俺は誰も許せない。だから憎しみが大きくなり過ぎる前にこうなってよかったと思っている。」
「・・・」
「ダメみたいですね・・・。あなたを死なせないために皆が懸命に動いています。そろそろ時間です。あなたはもう一度やり直せばいいんです。何度でもやり直してきたじゃないですか?今度こそ・・・皆さんを救えるかもしれませんよ・・・。」
俺の体が消え始める。死ぬこと叶わず、向こうに戻されるようだ。
「もう一度やり直せか・・・。何度目のリセットかな?」
俺はまた魔族領で目を覚ます。
皆が涙を流しながら俺を見ている。
「・・・何で生き返らせるの?」
俺の一言にミシュラの正拳突きが飛んできた。俺はベッドを壊し、壁を突き抜けて3つほど向こうの部屋の壁にめり込む。
「あなたが死んだら何人の女性が生きていけないと思っているのですか?」
涙を流すミシュラ。
「ゴメン。」
俺が謝ると笑い声が漏れる。