キューリュにて
魔界の大都市に到着した俺。
風呂に入りたいんだな。
ただ、風呂という単語が魔物に通じない。
俺を連れて歩く女。
それを奇異の目で見る街に住む魔物たち。
「お前たちって魔物だよね。何で街作ってすんでるの?」
俺の質問に
「我々の種族は戦闘以外何も出来ないんだよ。だからそれ以外のことができる種族を守ってこの街を維持している。ここには色んな種族がいる。どの種族が偉いとかもなく、皆平等。そして皆自分の役割をしっかり守って働いている。」
俺を見る目が凄く痛い。全員が敵意の目で見ている。
「私達の種族の長に会わせる。間違っても戦闘になるなよ。恐ろしく強いから・・・。」
「俺より?」
「私程度なら瞬殺するような強さだ。お前より強いに決まっているだろう?」
ふ〜〜んと気の抜けた声を出すとムカつくと言われる。
「ギラン種族長、イーライです。」
敬礼のような格好をして、大きなテントに入る。
「入って来い!!」
呼ばれていない俺は外で待っているとイーライと名乗った魔物が俺の腕をつかんでテントに引き入れる。
ギランと呼ばれる種族長がテントの真ん中に座っているのだが・・・俺より強い??マジ?
そんな雰囲気を全く出さない男が1人座っている。
「何者だ?貴様は・・・。この辺、一体にいたゴミの清掃をしているようだが。」
その辺にいた魔物をゴミ呼ばわりしている。そういや、俺もゴミって言われてたな・・・。ひっど!!
「あの・・・。あんた強いの??」
俺の一言に回りにいた護衛であろう魔物が
「貴様!!長に失礼だぞ!!」
武器を手に取り、俺に跳びかかって来そうになるがそれを手をあげて収める長。
「俺がお前より弱いと?」
「あんたは弱くはない。でも、ここにいるイーライだったっけ?よりは弱い。」
俺は先ほどイーライと名乗った魔物を指さして言う。
それを聞いて長が笑い始める。
「ははははは!!こいつは面白い!!まさかこんなに早く見破られるなんてな!!」
俺が頭を傾げていると長と呼ばれていた男の後ろから女が出てきた。
「私はギランの娘でこの種族最強の戦士、シレン。よろしく。」
笑顔を見せて手を前に出して握手を求めてきた。
握手しないまま俺が立っていると
「あれ?情報では人は手を前に出すと必ず握り返してくると聞いていたのですが・・・間違いでしたか?」
「シレン、こいつは人なのか?外の人はもっと脆弱だぞ。」
ギランがシレンに聞く。
「えぇ、父上。この人は人族です。多分、変異個体でしょう。」
変異個体って・・・。褒めているのか?貶されているのか?
「あのさ、俺は風呂に入りたいんだけど・・・。湖があるって聞いて付いて来たんだけど。」
俺の話を聞いた瞬間、顔をしかめる二人。
「思ったより好戦的ですね。父上、この男を始末しますか?」
「それがいいだろう。湖を汚しに来た馬鹿には死を持って償わせよう。」
俺はなぜここまで言われるの?湖の話はイーライが教えてくれた情報なんだけど・・・。
あ!俺・・・嵌められたのか??
「戦闘か・・・。じゃ、外で待ってるわ。」
俺がテントを出ると周りをイーライの種族が囲っている。
「逃げるのが少し遅かったわね。もう包囲済みよ。ご愁傷さま。」
笑顔で言うシレン。
「こいつらが囲ったからって俺をどうにかできるの?」
俺は身体強化後、回りにいるものをすべてなぎ倒す。それを見て他種族が一目散に散っていった。
「な!!貴様・・・本気ではなかったのか??」
イーライが驚くがこれでもまだ本気ではないよ。
「俺の本気見たいの??この街を更地にしてもいいなら見せるけどね・・・。」
そのセリフを言うとシレンが武器を持ってかかってくる。
ギラン、イーライも武器を持ち3対1になる。
「ふざけるな!!我々3人に勝てるわけなかろう!!」
美しい連携をしながら斬りかかってくる。
俺はギランを殴り、イーライを蹴って沈める。その瞬間に俺の胸を貫くシレンの槍。
「ははははは!!取った!!貴様の負けだ!!」
人なら致命傷。そう確信したシレンは槍から手を放す。抜けば死ぬからだろう。
「死ぬ前に話を聞いてやる。」
「死ぬ?俺が??この程度で??なんで??」
俺の反応に戸惑うシレン。
「貴様、頭がおかしいのか??どう見ても致命傷だろう?心臓を突き切っているぞ?なぜそんなに平然としている??」
俺が自分で槍を胸から抜く。
「貴様!!そうすればすぐに死んでしまうんだぞ?気でも触れ・・・」
そう話をし終わる前に俺の胸の傷が塞がり、治る。
「ば、化物・・・」
震えだすシレン。震えるシレンを余所にギランが俺の左腕を無駄に切り落とす。
大したものだ・・・俺を傷つけるだけでも凄い。強い種族というだけあるな。
俺が全く動じないのは反応できていないと取ったイーライが俺の首に剣を突き立てる。
「心臓はきっとうまく避けただけであろう!!だがこれなら生きられるわけがない!!」
そのまま横に剣を振り俺の首が半分繋がった状態になる。
すぐに俺は右手で元の位置に戻す。
俺の腕が生えてくる。そして首もすぐに繋がり始める。
「化物だ・・・。」
3人共がへたり込んだ。
周りの兵士たちが震え上がっている。
俺の超回復を見て全員が心が折れる。
この程度で折れてたら・・・外じゃ生きていけないよ?