人体改造3
向こうの世界で目を覚ます。
ここは・・・。
ミューアスだ。
この街にあの男の伝説がある。だが今はもうどうでもいい。
俺は街をさっさと出ようと思う。
ここにも追手がいるかもしれない。
街を出て、港に着き、船に乗る手配をする。
そうして船に乗って日本が拠点にしている帝国、シュローデヒルム帝国に行く。
理由は簡単。行くのに容易だし、今は我らの国A国とも裏のほうで仲が悪い。表向きは仲がいいように見せているけどな。
あの男に引っ掻き回されてから仲が悪くなりつつある。それはあの男のせいだと言える。
だが、今はそのおかげで逃げれば追手がきにくい。
数日船で移動して港町につく。
「ミューアスで開かれるはずだったテイマーの大会が中止になったそうだ。何でも出資者が資金を出すのを嫌がっているとか。何があったんだろうな。レジェンドが何かしたのか?」
「もしかしたら出資者の嫁さんでも誑かしたんじゃないか??」
「ありうるな!ははははははは」
笑い声が聞こえる。レジェンドとはあの男のことだよな?
あの大会の出資者は確か貴族だったはず・・・。
まぁそんなことはどうでもいいか・・・。
俺は帝国に着くとすぐ北に向かいダンジョンに潜る。
「ここで強くなってあの国に復讐する。それが今の俺の第一目標だ。」
そう思い、潜る準備をして俺は魔物と戦い続ける。
そうこうしているうちに1ヶ月が経った。
俺は強くなった。かなり潜ってレベルが上がる。
だが・・・。腕が・・・。人のものではなくなった。
鱗が所々にある。爬虫類のような鱗。ただ、まだ長袖を着ていると見えないので助かる。
鱗のせいか防御力も飛躍的に上がっている。
ドラゴンのブレスで腕に大火傷を負ったのがいけなかったんだろう。おかげだろうか?
街に入ろうとすると門番に呼び止められる。
「お前、犯罪者ではないがギルドに探し人として手配されているぞ?顔を見せに行け!」
俺は指名手配されているみたいだ。A国のせいか?
門番がそう言う以上行かないわけには行かない。行かないと選択すればこの街には入れなくなる。
不安を抱えながらギルドの前に立つ。
「俺を誰かが探していると聞いたんだが・・・。」
手配書を持って俺がカウンターに立つ。
「少々お待ちを・・・。」
受付嬢が通信機でどこかに連絡している。
「メリッサ様があなたをお探しです。見つかったと連絡いたしました。この街に数日滞在してください。こちらに向かうそうです。」
数日後。メリッサが俺のもとに来る。
「サミュエル!!探したぞ!!奥さんと子供達は元気にしている。安心してくれ!!」
そう。彼女が俺が一緒に旅していた仲間、ミューアスで知り合い行動を共にした信頼できる仲間だ。
「無理を言ってすまない。助かった。ありがとう・・・。」
俺が涙を流して礼を言うと
「ニュースで見たよ。君は国を裏切ったんだね。君のような忠義を持つ男が国を裏切るんだ、なにかすごい理由があるんだろう・・・。」
俺はすべてを話す。化け物のように強い旅人がいること。殺されかけたこと。人体実験されたこと。大統領が公認の人体強化を行っていること。実験後に殺されそうになったこと。妻と子供を軍人が殺すところに出くわしたこと。それを助けて逃げたことなど。
そうして実験の結果、体が変異し始めていること・・・。
「まさか・・・自由を重んじる自国でそんなことが・・・。」
驚愕の事実に顔を歪めるメリッサ。
顔色も悪い。
「実験するか?ときかれても絶対断るんだぞ?」
俺は笑いながら忠告する。
「何で笑っているんだ??笑えないだろ??奥さんや子供達にどう話すんだ?」
俺は何も言わないと言って笑ってやる。
「それならば私もそうしよう。」
「その体、元に戻らないのか?」
わからないと首を横に振ると
「私の大学からの友人に変な日本語を使う女がいる。そいつを通して日本に保護してもらうといい。」
「日本に??なぜ?俺はあの国のせいでこうなったと感じる部分もあるんだぞ?」
俺を狂わせたのは日本のA国領事館にいたせいだ。旅人を管理していなければあの男にも知りあうことはなかった。
「日本か・・・。あそこには化物がいて俺を殺そうとするからな・・・。」
「話してもわかってくれないのか?」
「俺のことを凄く嫌っているんだよ。」
メリッサは肩を落とす。
「一緒に行動してうまく行くように何とかやっていこう。」
そう言って俺の肩を抱き、元気づけてくれる。
異性とは言え、友人とはいいものだ。
俺は少し心が救われる。
ずっと心の中にあったどす黒い何かが薄まったように感じた。