職業選択の自由はどこに売られているんですか?
職業不明からの脱出
ギルドの変な空気に耐えられず逃げるように出て行った。
ふぅ、さて、目の前にある建物に職を決めることができるところがあると聞いたのだが・・・。
キョロキョロする間もなくあった!!
『職安』
これ、あれだよね。うちのじいさんが言ってたところだよね。
ハローワークの前進、職安。ここにもあるんだ。
中に入ると3つのカウンターにそれぞれ綺麗どころが座っている。
いちいち見た目を紹介したところで一度キリの登場であろうからそのまま。
職を決めるのは最初だけだと思っていたのに結構人がいるな。
そう思いながら真ん中のカウンターの女性に声をかける。
スーツをパリッと決めた赤い眼鏡の気がキツそうな目つき。
髪はショートで見るからにバリバリ働きますよ!と言うオーラを出している。
紹介しないでおこうと思ったけどやっぱり重要だね。
「あの、職を決めにきたのですが?」
「初めてですか??」
「はい。」
そう俺が答えると
「ノートを提出してください。」
と言われたので素直にカウンターに置いた。
するとそれを開いて
「職を決めにきたといっていましたがもう決まっている様ですよ。
冷やかしですか??ヨシナガ様。」
え?決まってんの??俺の職。
「な、何になっているんですか?」
「テイマーです。」
そう言うと回りからクスクス笑う声が聞こえる。
「あの、テイマーって何ですか??トリマーみたいな職ですか?」
そういうと、横のカウンターの女性がお腹を抑えて笑いをこらえている。
どういうこと??
「テイマーというのは魔物などを使役して戦う職業です。
我々の世界では基本誰も選びません。
理由はですね・・・ふふふふふ」
何か笑いをこらえきれずにフルフル振るえながら笑いはじめた。
「あはははははは、ごめんなさい。我慢できません。何でテイマー選ぶんですか??
アホなんですか??すみません。言わずにいられません。最初にこの職を選ぶなんて
アホ以外ないんです。何で選んだのか説明してください。もう笑いこらえるのに
皆さん困っているではないですか!!」
回りがドッと笑いはじめた。
何かよく分からないがテイマーはダメらしい。
「何でダメ何ですか?ダメな理由は??」
あまりに回りが笑っているので恥ずかしいなと思いながら聞くと
「そうですね。選ばない理由は弱いからです。
テイマーの出来ることはさっき言ったように魔物を使役して戦うことだけです。
使役できる魔物は基本的に自分より弱い魔物です。
自分が弱いのに自分より弱い魔物を使役してどうやって戦うんですか?
しかも魔物を使役して戦うから自分も強くなりません。
レベルが上がってもパラメーターの上がりが半端無く悪いんです。
普通の下級職と言われる戦士やシーフなどに比べてももうどうにもならないくらい。
たまには強い人もいますよ。歴史に名を残すテイマーもいますがそれってただ運がよかっただけですからね。
すごい強い魔物を小さいときに拾ったとか?もう砂浜から砂金を見つけるくらいの確立ですよ。
次のジョブチェンジのときにパラメータの数値不足で転職できないなんてこともあるんですよ。
私たちを笑わせるために自分の人生犠牲にしないでください。」
カウンターの女性は笑いながら雑に俺に向かってノートを投げてきた。
その女性がふと横に立っていたレイを見て椅子ごと後ろにぶっ倒れた。
え?っとなって俺も横にいるレイを見るとレイの人化の秘術が目の部分だけ解けている。
真っ黒な目、縦に割れる金色の瞳孔。相当怒っているのか背中から触手が出始めている。
「ちょっと、何??魔物??こんなもの連れて歩いてたの??さっきまで人だったのに!
危険過ぎるわ!!すぐに対処を!!」
起き上がってカウンターの下にあったのか変なボタンを取り出して押し込んだ。
それと同時に透明な膜がカウンターと俺たちの間に出来上がる。膜には見たこともない模様が徐々に円を描きなにかしらの図を描きはじめる。
?魔法陣??
そう思っていると、膜の向こうでカウンターで先ほどまで笑っていた女性達が
「暴れても無駄です。物理魔法両方を無功にする結界が完成しました。
あなたたち、これはテロ行為です。強力な魔物を街の中に入れることは禁止されています。
もうすぐ警備兵が来て駆除されるでしょう。それまでおとなしくし」
言い終わる前にレイが触手を刃物に変えて結界に切りつける。
パシュッ、パリン
すると物理魔法両方を無功にすると豪語していた結界が簡単に切り裂かれ割れる。
それを見ていた女性達、回りの人たちの顔を青ざめる。
「な、なんで?」
カウンターの向こうでへたり込んで震え始める女性達。
「デュラン!!」
「呼んだか??」
煙とともにランプから出てくるデュラン。
「今すぐ時間を止めて俺とレイとミドラだけ動けるようにしてくれ。
そしてここにいるものたちの記憶を1時間ほど前の状態に戻してくれ!!
もし記憶媒体などがあるならそれも全部痕跡残さず今までの状況を消してくれ!!」
「あぁこの状況ならそれが賢明だな。願いはもちろん聞き入れた。」
「その願い叶えてやろう!!」
俺はレイの腕をとり、ミドラの腕を掴んで建物を飛び出した。
どこをどう走ったか分からないほど必死に走って人のいない場所に行った。
「レイ!!レイ!!レイ!!レイ!!!」
俺はレイの名前を何回も叫んだ。
レイは虚ろな目で突っ立っているだけだった。