サプライズもほどほどに。
死の淵からの生還。
今の俺ではまだまだあの力を使えないようだ。
俺は目を覚ます。見覚えのない部屋。そして横に居るラウル。
ラウルは俺を見て泣き始める。
「目を覚ました!!目を覚ました!!」
可愛い声で俺に抱きつきずっと言っている。
頭を撫でながら
「心配かけたね。ごねんね。」
そう言いながらずっと頭を撫で続ける。
「やっとこっちの世界に戻ってきたわね。さて、冒険しましょ?」
やっちゃんが俺を見て言う。
レイがもじもじしている。
「あのさ、魔族領に行かない?お母様も心配しているから・・・。」
凄いモジモジしている。何で??
「レイは・・・」
何か言おうとしたやっちゃんの口を押さえてモガモガ言わせている。
魔族領か・・・。俺もお母様に謝らないとね。女の人に手をあげたんだし・・・。
「よっと!じゃぁ行きますか??」
お〜〜!!と言う俺のパーティー。
俺は装備を持とうとすると・・・なにこれ??
羽毛のように軽い。もしかしてアイテム袋空っぽ??いやいや、アイテム袋は中身で重さ変わりませ〜〜ん。一人ツッコミをしている。
宿を出ようとドアノブを握ると握りつぶしたというより一瞬で粉々になる。
「やっちゃん、抑制の腕輪壊れたみたい・・・」
「何言ってんの??壊れるわけないじゃない。」
俺の腕を見ると確かにある。
「ほら、でもこれ見て?」
「おかしいわね・・・。」
「もうひとつ着けてみようか?」
俺はもうひとつ着けてもらう。それでやっと機能が発揮される。今、両手に抑制の腕輪中。
「レイは一つでイケているでしょ?」
「うん、大丈夫だよ。これってある種の呪じゃん。皆に効くおもしろ呪い。」
あ、そうなんだ。呪いなんだ。しかも状態異常にならないやっちゃんでもかかる。
「で、どうやって行くの??レイリーに頼む??」
「お母様に連絡したわ。そろそろ扉が出てくるはずなんだけど・・・。」
「きこえる??レイリーだけど・・・。姉さん?聞こえる??」
レイの持つ腕輪型の受話装置からレイリーの声がする。
「そこの街、結界あるからいけないんだけど〜。外に出てくれる〜??」
緩いな・・・。
俺達は外に出る・・・。ここはジルバームか・・・。
俺達は町の外に出てしばし待つ・・・
待つ・・・。
扉が現れる。
そうして扉から出てくるフェブとマイカ。
「恵様、お迎えにあがりました。」
「あ、ありがとう・・・」
恵様??なにそれ??
俺達が扉を通り一本道をまっすぐ突き当たって扉から出る。
魔族領へようこそ!!ってな感じでは・・・ないね。
「準備はできているよ、姉さん。」
何の準備??
「あれ??兄さんは知らないの??あれ??」
レイリーが言葉を濁す。
「さぁ、メグミ、こっちですよ〜〜」
俺の手を引っ張って俺を誘導するレイ。
「まさか、姉さん、黙って連れてきたのか??」
走るレイと引っ張られる俺。大きな扉の向こうには・・・。
結婚式場〜。誰の??
奥の席で泣きまくるお父様とニコニコ顔のお母様。
もしかして・・・。
「メグミと私の結婚式だよ。」
マジですか??
「いや??」
え??いいよ。
俺の一言で狂喜乱舞のレイ。
「その前にさ・・・」
俺はお母様の前に行く。
頭を下げて謝罪する。
「お母様に暴力を振るって申し訳ございませんでした!!」
俺は全力で謝る。頭も下げる。
「あらあら、いいのよ〜。あんな面白い戦い二度と出来ないわ〜。あの人にもそれくらいの気概があれば夫婦げんかも楽しいのにね〜。」
そのセリフに泣きまくっていたお父様がだらだら変な汗をかきはじめる。
「お父様。お母様。挨拶が遅れましたが娘さんを必ず幸せにします。結婚を許して下さい。」
レイが後ろで泣きまくっている。お父様も泣きまくっている。
「みなさん、聞いて!!彼は私と互角に殴りあった男の中の男よ。私に傷を付けたものはこの世に彼以外存在しないわ。だから認めます!!レイとの結婚を!!みなさんも祝福してくださいね!!」
その一言で会場がわく。凄い歓声だ。
「あなたは素晴らしい方ですわ。レイに飽きたら私に元に来なさい。毎日どつきあいましょう。」
それは嫌です!!きっぱり断ると悲しそうな顔をするお母様。この人こわいです。
「レイ、俺と結婚していいんだな?俺はいつでもいいからね!!今でも後でも。」
「そうよ〜結婚したらまず子作りからよね。できるまでどこにも行かせないから〜」
あれ??どういうこと?俺達まだ高校生だよ。むこうでの話だけど・・・。
「ちょっと!!お母様!!??メグミは向こうでまだ未成年なんですよ。子供作ったら人生が破綻します!!」
「じゃぁ結婚できないじゃない??ここまで進めたのに〜。」
まぁ怒るわね。幾らかかってんのこれ??
「ざっと白金貨10枚です・・・。」
心を読んだかのように後ろからぼそっと言うやっちゃん・・・。マジか!??俺達の世界で言う10億??
「子作りなら私も混ぜてもらわないとね〜。」
「魔物との間でも作れますよ。」
「元だが神々との間でもできるぞ。現にここにつくっ・・・」
凄い殺気を放っているお母様が居る。ハウンを睨むお母様。ガクブルしているハウン。
あんたあの大喧嘩の時、善戦してたじゃない??なぜそこまで怖がる??
「ハ・ウ・ン〜〜〜?もしかしてね、もしかしてよね・・・。おめでたい席で大暴れ??まさかね・・・」
凄い脅しが・・・。お父様が顔面蒼白で変な汗をかき続けている。もうビチョビチョだ。
「子作りはまだ早いので結婚イコールそれとなると今は結婚出来ません。申し訳ございません!」
俺が頭を下げる。
「ごめんなさい。まさかこんな話になるなんて・・・。私もこんなことならまだ出来ないと思う。」
結婚イコール妊娠出産では俺達にはまだ早い。
「あなた、そうらしいわよ。もっと喜んだら??」
お父様は顔面蒼白のまま元気のないバンザイをしている。
凄い小声でバンザ〜イバンザ〜イと言っている。いや、言わされている。
お客様全員に頭を下げに回る俺とレイ。皆笑ってくださっていた。
ガランとした結婚式会場。
俺とレイだけがその場にいる。
「ウェディングドレス・・・袖通したかったな〜」
ものすごく残念そうに言うレイに着てみたらというと怒られた。乙女心のわからん朴念仁と罵られた・・・。
「ごめんね。こんな立派な式場を台無しにして。」
俺が謝ると
「勝手に進めてごめんなさい。目覚めたらどうしてもそうしたいと思って。」
レイは何千年でも待つ気でいたらしい。そんなに生きられないけどね・・・。
俺はアイテム袋から指輪を出す。ずっと以前に偶然ドロップした指輪。
やっちゃんが言うには激レアらしい。それがここに2つ。
「レイ・・・手を出して」
俺はレイをまっすぐ見つめる。