欲望に飲まれて
俺は??ここは??
俺はどこかをさまよっている。
ここはどこだ??
俺は何をしている??
俺はナニモノ??
真っ白な空間を歩く俺。
「たしか俺は凄い強敵に出会って仲間を守るため無茶をしたと思うんだけどな・・・」
でも何と戦っていたのかも誰を守ろうとしていたのかも思い出せない。
俺は何でここにいる?
「・・・」
??
何かの声がする。
「・・・」
声のする方へ向かう。
「・・・」
??誰を呼んでいる??
「お前だろ?」
後ろを振り向くと真っ黒い影がいる。
「さっきからお前を呼んでいるんだよ。」
「あんたが??」
「いやいや、俺じゃないわ。何で俺がお前を呼ぶんだよ。」
「じゃぁ誰が?」
「なんだ??お前?自分がやった罪も知らずにここにいるのか??」
「?なに??何の罪??」
「これはびっくりだな。自分の罪も知らずにこの世界にノコノコやってくるとは。」
「お前はナニモノ?」
「おぉ!!やっとまともな質問だな。」
「俺はお前が抱えた闇だ。」
「俺の抱えた闇?」
「ああ、そうだ。お前は沢山の人を殺め、絶望させ、自分の欲望のために幸せを奪った。」
「それが罪と?」
「おぉ!!さすが俺を宿らせるだけのことはある。これだけのことをしてまだ反省しないと?」
「反省??なぜ??」
「これは凄い!!さすがだな!!俺を宿したものの中で一番すごい。」
「お前のやったことは人へ配分されるべき幸運をすべて自分のものにした。」
「何が悪い??」
「おぉぉぉぉ!!さすが!!ここまで言っても気づかないのか??阿呆なのか?ふははははははははは!」
「お前は凄い。強いな。普通なら心が潰れる。その瞬間が俺の楽しみなのに・・・。潰せそうにない。」
「俺の欲望?それは??」
「お前が欲するものをすべて手にした。それだよ!!他のものはそんなこと出来ない。それをやすやすと手に入れ続けた。」
「だから??」
「ふはははははははははは!!だからと来たか!!」
「俺はお前の闇でお前の魂を食いつぶしに来た。そうして俺は今まで生きながらえてきた。」
「お前のことはどうでもいい。」
「そうだな。お前には俺がどうこう関係ない。さすがだな。」
「ここから出たい。」
「出たい??出れば死ぬだけだ。もうお前は壊れている。ここから出ればバラバラになって死ぬだけだ。いやいや、死ではないな。消滅だ。」
「最後に手にしたものはすごかったな!あんな欲深いものを手にしてまだ精神が残っている。さすがだ。」
「最後に?」
「あぁ覚えていないのか??お前が手にした力が凄まじかった。世界を滅ぼす力。それを手にしてどうだった?」
「何を言っている?」
「おや??本当に覚えていないのか??ほら!!最後の願いだ!!」
「最後の願い??力??」
「そう!!そうだ!!お前が望んだ世界最強の力!!」
「俺はそんなチンケなもの望んでいない。俺は彼女たちの幸せを望んだんだ!!」
思い出した。俺はお母様を殺そうとお母様の力と同等のものを手に入れたんだ。そして不死身に体。
それを使ってお母様を倒そうとした。
倒せたのか??
俺がここにいるということは倒されたのか??
「おいおい、記憶が戻ったのか??ならば罪の重さで狂い死ぬが良い!!」
「何を言っている??愛する女性の幸せを願うのが罪??お前馬鹿だろ??」
俺は無造作に影を叩き潰す。
「な!こんな力が??」
影が消える。だが俺はここからの脱出方法をまだ知らない。
「・・・」
俺を呼んでいる。
「・・・」
また呼んでいる。心地よい声・・・。
「メグミ!!」
目を開ける。そこには覗きこむレイがいる。
「レイ??」
「メグミ!!??」
「メグミが目を覚ました!!誰か!!メグミが目を覚ました!!」
レイが慌ててどこかに走っていく。
その後ぞろぞろ俺の家族がやってくる。皆泣きながら・・・。
「ここは??」
俺は原因不明の昏睡状態でこの病院に入院すること1ヶ月。
何度も生死をさまよっていたらしい。
色々話をされるがいまいち実感もない。
美久が凄い泣いている。
ははは、凄い鼻水。
やっちゃんたちが来た。ハウンも一緒だ。
やっちゃんは泣きながら俺に飛びついてきた。
話を聞く。俺はお母様を何とか撃破。お母様はそのまま魔族領に帰っていったそうだ。
俺が死にかけてまで与えたダメージはほぼ・・・ないだって。
俺は向こうでも昏睡しているらしい。ずっと眠っているのを夜になってもラウルが看病しているんだとか。
俺の体は・・・普通だね。これと言って変な違和感とかもない。
レイもやっちゃんも心配している。
それから数日、俺はむこうの世界に行かない。行けないのかも・・・。
そして退院。
レイと美久、両親が迎えに来てくれる。
そして2日後に学校に行く。皆心配してくれていたようだ。
変な病気ならこないでねとかも言われたけど皆笑っていたからナイス冗談だろう。
俺の部屋で
「あのさ・・・。あんな無茶しないでね?死ぬかと思ったから。体が光の粒子になり始めたんだよ?復活しなかったんだよ?おかしいでしょ??もう二度としないでね!!」
俺に泣きながら抱きつくレイ。頷くしか出来なかった。
これはあれだな。まだあの方法ではダメだってことだ・・・。
「もう寝ようか?」
そう言ってキスをする俺。泣くレイ。
久しぶりの家でゆったりしたひととき。