ラウルの友達
しばらく何もなく進む俺達。
ラウルもどんどん進んでいく。
「ラウルってさ、海で泳ぐのしんどいとかないの?」
俺達は陸での移動がしんどい。歩いても、走ってもいつかは疲れてしんどくなってくる。
「海の生き物は移動しないと死ぬものも居ます。そう言う体ですから移動で辛いとか疲れたはないですね。ただ、異常にお腹が減るので何かしらつまみ食いしながら移動します。さっきまで襲ってきた魔物たちはすべて私が食べて移動のエネルギーになっています。」
あぁ、戦闘していないんじゃなくて見えないだけなんだ・・・。海面下では死闘があるんですね・・・。
「食べるところを見られなくて残念ですか??」
「見られたくないものを見せろとは言わないよ。」
俺の答えに笑っている。
「人にとって私の食事はあまり気分がいいものではないと思いますので・・・。ジルさんも腰を抜かしていましたし・・・」
落ち込まないで!!食べ方は生き物それぞれだもん、仕方ないよ。
クリオネだってあの可愛い姿から想像できない食事方法だしね!!気にしちゃダメ!!
そんな雑談をしていると
「恵様、近づいてきます。気を付けて・・・。」
その声とほぼ同時にでっかい海面の膨らみが現れる。デカイ魔物が出るときの合図かな?
水しぶきとともに今のラウルと変わらない大きさの・・・
あれ??ラウル??
「やぁ、お姉様、生きてたんですね??バカやりすぎてどこかの勇者に始末されたのかと・・・。」
ラウルそっくりの魔物が目の前にいる。
その横に海面の盛り上がりが現れ、もう1体大きな魔物が現れる。
「私の旦那よ。お姉様がこの海洋を離れてから一緒になったの。別にいいわよね。」
ラウルの知り合い??人型の部分がないからあまり親近感がわかない。外見はサメ3匹横にくっつけて背中に人面貼り付けてカニの足が生えたみたいなちょっと気持ち悪い外見・・・。
「ペシュローナにディゴン、お久しぶりです。お元気ですか??」
「お姉様??どうしたの?その話し方・・・。頭でも打ったの??」
困惑するどっちだろうね・・・ペシュローナ?ディゴン??
「恵様、紹介しいます。妹のペシュローナ。そして隣に居るのがこの海域を一緒に管理していたディゴンです。ディゴンは私の下で働く男でしたがいまは妹の旦那だそうです。」
2人を俺に紹介してくれる。
「二人共おめでとうございます。あと、通してください。」
端的にそう伝えるとペシュローナが青筋を浮かべて怒り始める。
「あなたはいつもそう!!自分の言いたいことだけ言って私を邪魔者扱いする!!あなたのお気に入りのディゴンを奪って悔しがる姿を見てやろうと思ったのに!!」
これはあれか??仲悪いもしくはなにかしらの確執で彼氏を奪ってやったって言いたい奴か?
性格ゆがんでいるのか??
「悔しがる??なんで??私にとってディゴンは大事な部下であっても大事な異性ではないですよ。認める男が妹の旦那になったのですから喜ぶのは当たり前です。」
至極真っ当なことを言っているラウル。
ハウンとレイはちょっとイライラした態度を見せている。妹の感じがムカつくみたい。
「ラウル様、お久しぶりです。今、海洋はあなたが不在というだけで王座争奪戦になってしまっています。できれば還っていただき王座に座っていただきたい。そうすれば他のバカどもも静かになると思います。」
見た目のグロさからは考えられないほど綺麗な通る声で冷静に話すな。
「ディゴ〜〜ン?お姉様なんか必要ないでしょ?私とあなたで海を支配するのよ!何馬鹿なことを言っているの??」
「ペシュローナ・・・海が荒れればお前のお腹の子たちもつらい思いをするんだぞ?」
「お腹に子供が??それはおめでとう!!」
「そうそう、おめでとうついでに私があなたが座っていた王座をいただくわ。それでいいでしょ??」
「えぇ、構わないわよ。そこに未練はないから。それよりお腹に子供が居るなら体を労った方がいいんじゃない?ディゴンも心配しているわ。」
姉らしい優しい言葉だな。
「く〜〜〜〜〜!!本当にムカつくわ・・・。何で全て上からなの??私はあなたより優れている。それなのに・・・」
凄い殺気を放ち始める。姉妹だろ??仲良くしろよ。
「ペシュローナ・・・今すぐ殺気を抑えなさい。さもなくば殺すわよ・・・。」
じわじわ体が大きくなり始めるラウル・・・。それを見てペシュローナを抑えこもうとするディゴン。
「ディゴン、どちらの味方をするの??私??妹??どっちつかずはないわよね・・・。」
ディゴンを脅すラウル。ディゴンが震えている。
「ラウル様・・・。今は私はペシュローナの夫です。あなたの強さは知っていますがここで妻を放って貴女につくことはありません。どうせなら・・・妻とともに死にましょう。」
こいつ・・・漢だ。かっこ良すぎる。
「ラウル。妹を殺すとか言わない。俺にも妹が居るがダメなことをした時にはちゃんと言い聞かせる。それが年長者の仕事だよ。」
それを聞いて
「恵様がそう言っているから私はあなたに手出しできません。あなたが手を出さない限り。ですが攻撃してきた時は必ず・・・」
凄い殺気を放つ。そのさっきに当てられてペシュローナが我に返る。
「ふふふふふ、やっといつものお姉様ですわ。人に仕えているの??ありえないことですね。海の王が人に指図されるな!!」
俺にイカの足が跳んでくる。ハウンが光線で撃ち落とし足が燃え尽きる。
ハウンの光線スッゲ〜。
「グッ!!貴様ナニモノ!!?」
「お初にお目にかかります。私は最古の神々の1柱。光のハウン。今あなたは我々の禁忌に振れました。殺処分いたします。」
台詞を言い終わると同時に光線を複数照射。ペシュローナに当たり悲鳴を上げながら海に沈んでいく。
「逃がしません。恵様に手をあげたことを後悔しながら死になさい。」
「ちょちょちょ!!ちょっと待て!!殺さなくていい。あの攻撃程度なら俺は避けている。だから待て!!」
「おい!!ペシュローナ、死にたくないなら姿を見せろ!!」
俺がそう言うとラウルがペシュローナを足で捕まえ引き上げる。
「恵様がああ言っているのですからちゃんと姿を見せなさい。そうしないと私が殺しますよ。」
触手で締め上げながらラウルが怒っている。重傷を負い、引きつった顔のペシュローナ。
「何もしない。そのままだと死んでしまうだろ?レイ!!回復してやってくれ。俺もやるから。」
ペシュローナに回復魔法をかけまくる。体中に空いた光線の穴を塞いでいく。焼け焦げて全く血が出ていない。超高温で焼かれたんだろう予想が着く。
俺達の回復でなんとか体を維持できるまでになった。
「ありがとうございます。」
ディゴンが俺達に御礼を言う。
はぁ・・・いきなりおっ始めるんだもん。どうなるかと思ったわ・・・。