幾千年前2
次の日、青年がまた同じように山にいる。
今日はいつもと違い木々を相手に格闘していない。
「あ!おはようございます。今日は早いんですね。」
それは私のセリフだ。いつもは昼過ぎに来るのに今は早朝。
「昨日の男の人がしてくれたことの意味がわかりました。」
手を前に突き出し、何かを唱えると
ごぉぉぉっぉ!!
炎が出てきた。しかも飛び切り大きな火の塊。
それが当たった岩がグツグツ煮だって溶けてしまう。
これほどとは・・・。
私の感心した顔を見て青年は誇らしげに言う。
「あの人は僕に魔法を使えるようにしてくれたんですね!!」
嬉しさのあまり、はしゃぐ青年。可愛いと感じてしまう。
そこら中に魔法を放つ。魔法切れも起こさずかなりの数の魔法を放つ。
「全てとかしてしまいそうな勢いね。これからはそっちの練習をしていくの?」
私の問いかけに『はい!!』と元気良く答える青年。
そうして彼はこれからかなりの年月、魔法の訓練をここでし続けるのであった。
それからどれくらいの月日が経っただろう・・・。
彼は青年から大人になり、私の前に現れる。
「俺の魔法は強化されましたが俺も今日、成人となりました。母に代わり、労働力として光の門にいくことになりました。今まで、見守ってくださってありがとうございます。」
そう言って深々と頭を下げる。そうか・・・成人したのか・・・。
彼の国は大戦に負け、成人すれば光の門と呼ばれる神々の天上への通路を修復する労働にいく義務がある。
それが明日からだという。
「寂しくなるわね・・・。また、元気にここにいらっしゃい。そうすれば私もまた楽しく見守ることができるわ。」
彼のことを可愛い息子のように感じ始めていた。だが彼はもう大人になってここから巣立とうとしている。
「それでは・・・。」
大きく手を振り彼は私の前から消えてしまった。
もう少し続きます。