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願いで手に入れた伴侶が最強  作者: うぉすれや
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幾千年前1

昔話です。

一人の男の子が森で木を相手に戦っている。

一心不乱に突き、蹴り、殴り、そしてまた突く。

それを繰り返し、日が暮れると近くに置いてあった魚や動物の入った籠を持ってどこかに消えていく。


そして次の日、同じように一心不乱に突き、蹴り、殴り、突く。何度も何度も。

私はそれを遠くから見ている。その男の子は人で言えば11歳12歳くらいの子供だ。

毎日毎日飽きもせず同じことを繰り返す。


ある日、それを見ていた私に声をかけてくる。


「こんにちは」


私がいつも見ていることに気づいていたという。

私は男の子に何をしているのかを聞いてみる。

聞けば彼は最近戦争で父を失ったそうだ。それで残された母親と弟達、妹達のために狩りをして食いつないでいるんだとか。

戦争か・・・そう言えば大きなのがあったわね。

彼が言うには母親も遅くまで働いているから兄妹のために狩りをして時間が来れば家に帰り世話をしているという。

飯の支度くらいは材料があれば皆で分担してできるから自分は狩りに専念して、取れれば今のように武術の訓練をしているそうだ。


「皆を守るのが俺の仕事だからな!!」


そう言って走って戻り、木を一心不乱に攻撃し続けた。

それを私も飽きもせずずっと見ている。そんな日々がずっと続いた。


そして月日は経ち、男の子は青年になった。

その頃には力も付き、この辺一帯の木々は全て突きや蹴りで倒されてなくなっていた。

彼は少しづつではあるが確実に強くなっていた。

たまに出会う強力な魔物とも素手で勝てるほどに成長していた。

それでも彼はずっと同じことを繰り返し自分を高め続けた。


ある日、私を見つけて彼はまた声をかけてきた。


「こんにちは!!どうですか??僕は変わりましたか??強くなっていますか??ずっと見ていたあなたから見でどうですか?」


彼は私にウソのない本当のことを言ってくれと言っていた。


「そうね、初めてあった時とは比べ物にならないほど強くなっているわ。」


私の気持ちにウソはない。彼は確実にこのへんにいる大人たちよりずっと強いだろう。


「そうですか・・・。でも、最近、自分には武の才がないなとつくづく感じています。ホントならこれほどの年月を掛ければきっとこの世界でも強い方に入っていたはずですから・・・。」


彼は肩を落としてそう話していた。


「ほうほう、あなたは武の才がないと嘆いているんですか?」


私の後ろから不躾に彼に話しかける男が現れる。

急に現れたので彼は身構えるが殺気のないのに気づき構えをとく。


「あなたが熱心にこの辺りの管理に行くから何事かと思えば・・・そういうことですか??面白いものを観察していたんですね?」


失礼な奴が現れたものだ。観察??彼を観察していたと??違うな・・・。これは・・・この男に言っても理解できないか・・・。


「あなたに武の才がないのは私にもわかりますよ。あなたの武の才は正直に言ってしまえば並以下だ。」


失礼なやつだ。相手はまだ年端も行かない青年だぞ。そんな青年に向かって言う言葉ではない。


「おやおや、怪訝な顔をしないでください。非常に恐ろしく感じてしまいます。彼は武の才は全く平凡です。ですが彼には・・・魔力がある。非常に素晴らしい物を持っている。そちらを鍛えたほうが身になるのでは?という私の意見です。」


この男はこの男なりに彼を思って言っているのか??


「僕に魔力??そっちに長けていると?」


青年が男に聞くと男は頷く。


「しかし僕にはそれを学ぶお金がありません。魔法は勝手に覚えられるほど自分で身につけられるほど容易なものじゃないですよ。」


たしかにそうだろう。私もそうだ。魔法がからっきしなのだ。ほぼ・・・使えない。昔その力を落としてしまったからだ。


「おや、おや、これほどの努力家がお金がない!程度で諦めてしまうんですか?面白くないな〜。では!!これはどうでしょう??」


男は青年の額に手を当て、何やら念じている。


「ふぅ、私のできることはこれくらいかな??魔法はいいですよ〜。」


笑いながら男は後ろを向き、消えていった。


「え、え、えっと、何だったんでしょう??」


「ふふふ、私にもわからないわ。」


私は日の方を指し、もう日が暮れて暗くなっていると青年に伝える。

青年はそれに気づきあわてて下山していった。


「あなたが彼に熱心な理由は何ですか??」


後ろからまた男が私に声をかけてくる。

私は


「言ってわかるもんじゃないでしょ?」


そうとだけ告げてその場から離れた。



ちょっと続きます。

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